姫シリーズ | ナノ






「火影様!マダラ様!**様!扉間様とイズナ様が…!!」



扉間とイズナが、血だらけで帰ってきた。


「扉間、イズナっ…!?」
「何があったぞ!?」
「おい!しっかりしろ!!」


返り血じゃなく、確実に彼らの血液。すぐに手を当てて治療を始めた**。しかしかなりの深手になかなか止まらない血液。すぐに**はマダラに他の医療忍者も呼ぶように伝えた。


「扉間とイズナはどうだ、**…」
「…かなりの深手だけど、なんとかしてみせる」
「頼む…!」


扉間とイズナはある任務についていた。里外で、不審な活動をしている輩がいるとの報告を受け、幾度となく上忍を派遣したが、血だらけで帰ってきたり、帰らぬ者もいた。

そこで腰を上げたのが扉間とイズナだった。里長や一族の長が出るまでもない、と2人は笑って出て行ったのが2日前。


「クソ…俺が行けば…!!」
「扉間とイズナぞ?この2人がやられるなんて…」


一族の長である2人には敵わなくとも、一族ではお互いナンバーツーの存在だ。その2人がこんなにも怪我を負って帰るなんて今までなかった。


「ぅ…あ、にじゃ…」
「!!扉間か!何があったぞ!!」
「この、ま、まじゃ…」


扉間、喋っちゃダメ、と**が呟いた瞬間、今まで明るかった空が途端に闇に包まれた。


「「「!!」」」
「だ、めだ、…にいさ、…」


3人で外を見た。闇の中現れた、強い光。その中心には人がいた。


「…あいつか」


**の言葉に全員の目が鋭くなる。ゆっくりとその中心の人物はこちら側に近づいてくる。


「…おぉ、妾の息子たちよ…!」
「息子たち…?柱間とマダラが、か…?」
「お前は誰ぞ」
「我が名は大筒木カグヤ、お前たちのその力、妾に返してもらうぞ」
「!お前その目…!」


ゆっくりと目を開けたカグヤ。**はその両の目を見たとたん、拳に力が入った。まさか、日向の者なのか、と。


「なぜお前が白眼を持っている!」
「何を言うか、この目は元は妾のものだ」
「なんだと…!?」
「!額のその目…!」


とにかく目の前のことで頭がパンクしそうになる**。白眼を持っていたり、額には写輪眼のような模様が入った目。

**とマダラは同時に目にチャクラを込めた。


「無駄じゃ、お主らの瞳術では妾には敵わぬ」
「何が目的ぞ!!」
「妾は自分の力を取り戻すだけじゃ」
「自分の力…?」
「……」
「っ!?」


カグヤと目が合った瞬間、突然胸を押さえ出した**。彼女の脳内には、自分の声が響いていた。『全て殺せ』と。


「ぐっ、う、…!」
「どうした**!!」
「**に何をしたぞ、!!」
「…ほう、自力で解くか」
「ッハァっ、げほっ、!」


息を荒くし、胸を押さえたままぺたりと座り込む**。ぎり、とカグヤを睨みつけた。


「ハァ…ハァ、ッ、なめんなっ!」
「何があった、**」
「わからない…、操られるところだった、ハァ、ハァ…でも幻術じゃない」
「厄介だな…」


**に息も落ち着いてきた頃、柱間は一気にチャクラを練り上げ、木龍の術でカグヤを捕らえようとした。しかしこれをカグヤは片手一本で術を吸収し、さも何事もなかったかのように振る舞う。


「!術を吸収するのか…!?」
「『須佐能乎』!」
「…輪廻写輪眼はまだ開眼しておらんのか…」
「なんだと…?」
「!マダラ!来るよ!!」


**が叫んだ瞬間、マダラを襲う氷の塊。間一髪、それを切り刻んだマダラだったが、その影から襲う無数の氷の刃。


「『空遁・アツヒメ』!」


業風とともに吹っ飛ばされた氷。ニヤリと笑う**とマダラ。柱間が**とマダラの隣に立つ。


「よくわからんやつぞ」
「ふふ、だね」
「3人で一気に片付けるか」
「2人とも行けるか?」
「余裕」
「大丈夫」
「待て兄者!一度立て直した方が良い!」
「そうだよ兄さん、!こいつの力はこんなもんじゃ、」
「大丈夫」


慌てるような扉間とイズナの声に、3人はいつものように笑った。


「だって私たち、」
「「「3人でだったらなんでもできるからぞ/からな/からね」」」


今から遊ぶような、そんな声色。たとえ3人でもできないことだってある。そう言おうと思っても、扉間とイズナは何も言えなかった。
2人も心のどこかで、そう信じていたから。


「おーし、2人とも、私についてこい」
「なにリーダーぶってんだよ」
「里長は俺ぞ。俺がリーダーぞ」
「はぁ!?そんなの関係ない!!」
「俺がリーダーだ」
「マダラは顔が不審だから無し」
「……」
「お前ら!敵が目の前にいるんだぞ!真面目にせい!!」
「ひひっ」


「さぁ、行くよ!」**は笑って言った。普段なら、「あぁ」と帰ってくる返事。しかし今回は、何も返ってこなかった。代わりに聞こえてくるのは、2人が倒れる音。


「っ…マダラ、…柱間…?」


慌てて頚動脈に手を触れた**。しかし2人の脈はいつもと大差代わりない。深く深く眠る2人。**はカグヤを睨みつけた。


「2人に何をした…!!」
「…誰かが精神世界に連れ込んだのか…」
「なに…!?」


柱間とマダラのような実力者を一瞬で精神世界に連れ込む輩なんてこの世にいたのか。戸惑いを隠せない**。その隙を狙って、カグヤが術を発動させた。


「!!」
「娘、妾の息子を返せ」


すぐさま柱間とマダラを掴んで飛び上がった。**たちが先ほどいた場所は謎の液体によって溶けていた。

**は2人を部屋の隅にやり、せめてもの結界で囲おうとした時、がら、とゆっくり開いた扉。イズナと扉間だった。


「っ兄者!!」
「兄さん…!!」
「心配ない、寝てるだけ」


そう言った**はマダラと柱間を掴み、イズナたちの元へ移動した。


「2人をお願い」
「待て、俺も戦う」
「**1人でどうにかなる相手じゃない」
「2人ともまだ怪我治ってないでしょ」
「そんなのどうとでも、!」
「動けない奴はいらない、邪魔だ」
「っ、…」


ギロ、と睨んで2人を黙らせる。2人とも**に言われて言い返せなかった。


「あんたたちの大事な兄を守れるのは、2人しかいない」
「しかし、」
「お願い、2人を守ってください」


**は片膝をついてこうべを垂れた。その**の行動に目を見開くイズナと扉間。今は、できることを最大限にしなければならない。だから、2人に闘うという選択肢はハナからなかった。


「…死なないでね」
「…ふふ」


そう言って、2人の頭にポン、と手を置き、振り向いた**。自分たちよりはるかに小さい背中は、逞しく、それでいて大きく、ひどく寂しそうだった。





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Vega is a person who gets lonely easily.