姫シリーズ | ナノ






「(うちはと、千手…)」


つい先日、**の弟たちが2つの一族に別々で殺された。うちはと千手。日向の一族は攻められたらやり返すと言う戦法なため2つの一族がやりあっているのを傍観することが多かった。

それでも、戦場に出ないわけではなかった。


「(柱間とマダラの弟達に殺されるだなんてね)」


戦争では、死が当たり前かのように転がっている。**でさえ医療忍者でありながらもその戦闘力を買われ、戦場に最前線で出ていた。弟達も然り。

親友だった二人の弟に、最愛の弟を殺された。絶望が抜けないまま、彷徨うように森を歩いた。


「(…水の音がする)」


自然の音を求めて、水の音がする方に足を運ぶ**。

木々を抜けた先には穢れを知らぬ水が優雅に流れていた。
**はその川に近づき、冷えた水を手で掬った。溢れた水が腕を伝い肘先からポタポタと川へ戻った。


「…つめた」


パシャ、と水を川へ投げ捨て、その場に腰を下ろした。濡れた石が衣服を濡らす。


「…出て来たら?そこにいるのはわかってるよ」
「なんだ、バレてたのか」


ひしひしと伝わっていた視線を辿り、一本の木を睨みつけた**。その木から出てきたのは、弟を殺した張本人だった。


「うちは、イズナ…」
「日向の姫様だよね?名前は確か、日向**」
「何しにきた」
「森を適当に歩いていたらちょっとね」
「…失せたほうがいいよ、今お前を殺して弟の敵討ちをしたいって思っているから」
「族長の長女がここにいるんだから引けるわけないよね」


クス、と笑みをこぼすイズナ。そんなイズナを見ているだけで彼を殺したいと拳に力が入る。


「私に、殺されたいの?」
「俺が殺すかもしれないけどね」
「…あんたに私が、殺される?面白いこと言うね」
「じゃあ試してみる?」


イズナの目が写輪眼になったと同時に、**の目にもチャクラが集まり、白眼を発現させる。


「…そこにいるのは見えてるよ、千手扉間」
「チッ、白眼か」


腕を組みながら現れる扉間。蔑むようにみるのは癖なのだろうか。しかし扉間が現れたことで、**はふ、と口元を緩ませた。


「まさか、弟の敵討ちがこんなに直ぐに、それもいっぺんに出来るだなんて夢みたい」
「お前のような女に何ができる」


扉間がそう言った瞬間、**の姿が消えた。


「「!?」」
「男尊女卑?いい度胸ね」
「…!」


いきなり扉間の前に現れた**。その体勢はすでに拳を振るうそれで。『菊花衝』とつぶやきながら振り下ろされる拳を見て扉間はすぐさま飛雷神を発動させた。

不発に終わった一撃は木々を貫き、石を破壊した。割れた地面を見た扉間とイズナは、ニヤリと冷や汗をかきながら笑った。


「想像以上の馬鹿力だな」
「一撃でも当たったらタダじゃ済まないね」


拳の破壊力で、彼女の右に出るものはいない。忍界一の剛拳使いは噂以上だった。誰しもがその可憐な見た目に騙される。


「今はお前の相手をする余裕はないだろうのぅ」
「そうだね、まずは日向の姫様を倒さないと」
「二人掛かりできなよ。それくらいのハンデはあげないとね」
「…その発言、後悔するなよ」


扉間とイズナが同時に印を結んだ。赤と青が**を襲う。しかし**は再び『菊花衝』で地面を殴った。
割れた衝撃で飛び上がった地面が二人の術を相殺する。


「『火遁・豪龍火の術』」
「『天泣』」
「『回天』」


放たれる二人の技を最小限のチャクラで防ぐ**。「次男坊ってこんなもの?」と退屈だと言う顔で言った。そしてつまらない、とも。

その言葉を聞いた二人。イズナが万華鏡写輪眼を発動させ、扉間はクナイを構えた。しかし**はそんな二人を見て一直線に突っ込んできた。


「馬鹿め、なんの策もなしに」
「行くぞ、扉間。援護しろ」
「こっちのセリフだ」


扉間がクナイを投げ、イズナが刀を構えた。クナイが**を超えた瞬間、扉間はすかさずクナイに飛んだ。持っていた刀で扉間とイズナが切りかかった瞬間、目にも留まらぬ速さで2つの刀を素手で掴んだ**。

これには二人も驚いた。そして**はそのまま二人を引き寄せ、刀を手放し二本の指で腹の中心に強烈な一撃を加えた。


「ぐっ、…!」
「ゲホッ、」


二人を一箇所に引っ張り、それぞれ二人に回し蹴りをくらわせる。**の攻撃を受けた二人が地面に倒れた。


「…へぇ、意識を失わないだなんて流石だね」
「な、にを…!」
「…!チャクラが、」
「点穴、聞いたことくらいあるでしょ?今のあなた達にはチャクラを練ることはできない」
「く、そ…!」


同時に2人の首をつかんだ。苦しそうに呻き声をあげるイズナと扉間。じわじわと**の握る力が強くなる。呼吸が浅くなっていく2人に、**は問いかけた。


「…何が、楽しいんだ…」
「な、に…!」
「なんで、やめないのよ、…なんで、」


その瞬間、かなりの速さで飛んできた2つの石。**はその2つを蹴って弾き飛ばした。ポチャ、と水の中に落ちた2つの石。
白眼で見なくとも、**には投げた本人がわかった。


「…遅かったね」
「その手を離せ、**」
「……」
「動くな。動けばこの2人を殺す」


現れたのは、マダラと柱間。眉間にしわを寄せ、2人はいつでも戦えるように戦闘体勢でいた。
**はそんな2人の殺気を感じ、さらに首を絞める手をきつくする。呻き声をあげるイズナと扉間。


「ぐぁ…!!」
「なぜ2人を狙うのだ!**!!」
「なぜ…?そんなの、私の弟が2人に殺されたからに決まってるじゃない」


その言葉に、ぐっとおし黙る柱間。忍の世界じゃ仇討ちなんてザラにある。イズナと扉間だって、そんなの初めて人を殺した時点でわかっているはずだ。


「頼む、イズナには手を出すな、俺の最後の弟なんだ」
「扉間も同じぞ。殺すなら俺を殺してくれ」
「…平和な世界を作ろうって、約束したじゃん、」
「!」
「なのになんで、…なんで弟は死んだのよ!!」
「**、」
「なんでまだ戦争なんてしてるのよ!!マダラも柱間も一族の長なんでしょ!?なんでやめないの…なんで手を取り合わないの!?なんで夢とは正反対のことばっかしてるのよ!!」


叫ぶような声とともにぼたぼたと**から溢れ出た涙がイズナと扉間の頬を濡らす。涙を流す**を見て言葉を失うマダラと柱間。


「3人で、弟達を守ろうって…そう誓い合ったのは嘘だったの!?」
「嘘じゃない!俺は本気で、
「じゃあ行動に移しなさいよ!!いつまでくだらないプライドのために一族を犠牲にするつもり!?今一族も兄弟も危険にさらしているのは長である2人でしょ!?なんでそれがわからないのよ馬鹿!!」


**の悲痛な叫びはマダラと柱間の心を真っ直ぐ射抜いた。わかっていても激戦化していった戦争。止めれるとわかっていて止めることができなかったのは2人だった。ずるずると引きずっていた関係に終止符を打ったのは、まぎれもない**だった。


「…戦争を、終わりにしようぞ、マダラ」
「! あに、じゃ…、」
「……昔から、俺らの喧嘩を止めるのは、お前だったな、**」
「……ばか」
「…!傷が、」


スッとイズナと扉間を解放した**はそのまま2人の傷の治癒を始めた。指先から流れ出る**の温かいチャクラが2人の傷と心を暖かく包み込む。


「…いいのか、俺たちはお前の弟を…」
「弟を失う辛さは、私が一番わかってる」
「「!」」
「だから、…親友の2人には、そんな辛い思いをさせたくない」


声を荒げずにただ静かに涙を流す**を、イズナと扉間は場違いながらも美しいと思ってしまう。日向特有の白い眼は今にも消えそうな儚さを持っていた。


「私に申し訳ないと思うなら、私より死なないで。それが私への償いだと、そう思って」
「…わかった、約束する」
「ふふ、…イズナは、マダラとは違って素直だね」
「俺が素直だったら気持ち悪いだろう」
「それもそうね」


淡く笑う**を纏う空気に、イズナと扉間の緊張も緩んだ。もう涙は一滴も流れていなかった。


「噂以上だな、兄者の言っていた**という女は」
「あら、どんな悪口言ってたの?柱間」
「悪口など言っておらんぞ!」
「女と見くびっていたが、これほどまでとはな」
「日向は最強よ?あと、休止の点穴をついたから丸一日はチャクラをねれないけどごめんね」
「俺もまだまだだなぁ」
「**」


ふと呼ばれた声に振り返る**。そこには、優しい笑顔で手を差し伸べるマダラと柱間の姿が。
先ほどまで敵同士だった3人。それがまた、親友へと戻った。その姿が嬉しくて、**は一筋の涙を流した。そして笑顔になり、その手を取った。






ロンリー・ラプンツェル
(里の名前は何にする?)
(!**、頭に葉が乗ってるぞ)
(え?あ、本当だ。)
(葉、…葉っぱ…木の、葉…よし、里の名前は、『木の葉』ぞ!)


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ロンリー・ラプンツェル