姫シリーズ | ナノ







「おーい!2人とも〜!」
「ん?おぉ!**ぞ!」
「どうした、そんなに急いで」
「へへ、2人がいたからつい走っちゃった!」


うちは一族の長マダラと、千手一族の長にして木の葉隠れの里の長柱間、そして白眼の使い手にして医療忍者の最高峰と言われる、**。後に忍の三神と呼ばれる3人は、生粋の親友だった。


「2人してどこ行く予定?」
「今から、軽く組手をする予定ぞ」
「え!私も混ざる!」
「…**も混ざるのか…」
「なに?マダラ、私じゃ力不足っていうの?」
「力が有り余っているから嫌なんだよ」


里ができてすぐは、**の評判を聞いた者全てが嘘だと笑った。しかし、柱間と**の組手を見て、それが間違いだと知り青ざめる。


「この前は大熊を仕留めたらしいな」
「そうそう、里に入ってきそうだったから止めておいたよ」
「手間をかけさせてすまんぞ…」
「一発だったから全然手間なんてかかってないよ?」
「そう言う意味ではない」


**の武器は、純粋な力。それも馬鹿力。たった一発、拳を打ち付けるだけでクレーターができる、そんなもはや笑えてしまう力が**にはあった。本気を出せば、津波も作れる、と言う噂は嘘か真かは2人だけが知ること。


「柱間様だ」
「マダラ様もいるぞ」
「**様今日もかわいい」


3人揃って出歩けば注目の的。中でもひときわ目立つのが**。小柄で華奢で、里で1番の美女。そう噂される**。


「**様、今日も美しいです」
「そんなことないよ。でもありがとう」
「**様、これ!お花!**様みたいに綺麗なの!」
「わ、ほんと綺麗なお花だね!ありがとう、嬉しい」


立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花。溢れる優しさに虜になる老若男女。そんな彼女がみんな大好きだった。それは2人も例外でなく。


「今日も人気者だな、**」
「さすがは**ぞ」
「やだな、2人して口が上手いんだから」


物事はハッキリ言い、芯が通っている。それでいて引き際はわきまえている。自分の役回りを理解し、常に最善を考えていた。


「ねぇ、今日はなにで勝負する?」
「そうだな、競争とかはどうだ」
「良いな、誰が一番早くあの場所に着くか、勝負ぞ」
「よしきた!」


そうと決まればすぐさま準備をする3人。里のトップ3人がなにやらやる気満々の空気を出し、なんだなんだと野次馬と化した住民たち。
彼らを掻き分け、焦るように割り込んできたのは、柱間の弟、扉間だった。そんな彼を無視し、**は石をポーンと投げる。


「よし、負けないよー!」
「今日は俺が勝つ」
「今日も、俺が勝つぞ!」
「待て兄者!まだ職務が、」


扉間が言い切る前に、トン、と地面に落ちた石ころ。その瞬間、さっきまで3人がいた場所には誰もおらず、代わりに砂埃を乗せた風だけが舞った。


「〜〜っあいつら…!!」
「あれ、扉間、どうしたの?」
「兄者とマダラと**がまたバカをしているのだ!」
「あー…あの人たちはいつもそうじゃない?」


怒りを露わにする扉間をイズナがまぁまぁとなだめる。そう、こんなこと、彼らの日常茶飯事だ。



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:




「やったぞー!」
「クソ…あの時落ち葉を踏まなければ…!」
「なんであの木折れたのよー!」


結果は、一位柱間、二位マダラ、三位は**。**はこの手の競争で勝ったことがなかった。


「もう競争嫌いー!」
「はっはっは、忍には速さも重要ぞ」
「まぁ、**も遅いわけではないがな」


項垂れる**のそばに腰を下ろすマダラ。そして彼女の足首をそっと掴み、撫でるように触った。


「っ、マダ、ラ…?」
「捻っただろう?木が折れた時」
「こんなの、大したことないよ、」
「**はいつも強がってばっかぞ」
「だって、折れた木から落ちて足を捻ったとか、ダサくて言えないし、」
「確かにダサいな」
「ぞ」
「一発かましたろか」


医療忍者なのに自分の治癒は下手くそな**。そんな**をいつも甘やかすのは、2人。どこからかマダラが包帯を取り出し、柱間は自分の木遁で一枚の板を作る。それを**の足にまいた。


「ほら、帰ってから治すぞ」
「…ありがと」
「もうすぐ扉間が来るだろうからな、運んでもらうといいぞ!」
「もういる」
「うおっ、いつの間に!」
「俺もいるよ」
「イズナか」
「みんな来ちゃったね」


少し賑やかになる崖の上。優しい風がふわりと5人に吹いた。木々の匂いに里の賑やかな声。思わず笑顔になる**をマダラと柱間は見逃さなかった。


「いい音がするね」
「そうだな」
「これからもっと良くなるぞ」


3人で夢見た幸せが、目の前にある。


『ここに集落を作ろう!』
『集落?』
『なにそれ、おもしろそう!』
『子供が戦わなくてもいい世界だ。色んな一族が皆手を取り合い、仲間になるんだ!』
『そんなことできるのか?』
『できるよ』
『本気かよ、**〜』
『私たち、3人だったら、きっとできる!』


そう言って手を取り合った3人。きっとできると願い、実行させ、叶った夢。**は振り返り、笑ってこう言った。


「みんながいたら、なんだってできる。」
「…変な自信だな」
「そう?私は、いつか国も手を取り合うと思ってるよ」
「良いな、その**の考えは」
「でしょ?」
「そう簡単にできるか?」
「私たち、3人だったら、きっとできる!」


あの時と同じセリフを言った**に、思わず2人も笑顔になる。**が言うならできるかもしれない、と。そう思えて来るほど**の言葉は強く、美しかった。


「いつか、もっと平和になったら、またここで一望しよう」
「あぁ」
「約束ぞ」
「まずは、職務をせんとな、兄者」
「兄さんも子供に怖がられないようにしないとね」
「…前途多難だな」
「ははっ、壁は大きくなくちゃ!」




暴君シンデレラ
(それはそうと**は“また”怪我をしたのか)
(ダサいね、本当)
(**は鈍臭いからのぉ)
(自己治癒もできないなど医療忍者が聞いて呆れる)
(よぉーし、ちょっと頭貸しな、1人ずつ頭蓋骨割って言ってあげるよ)


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暴君シンデレラ