姫シリーズ | ナノ






「**に縁談だと!?」
「シーッ!マダラ、シーぞ!」
「ほっ、本当なのか…!?」


火影邸で、マダラと柱間はでかい図体をかがめて2人、コソコソと内緒話をしていた。


「あぁ。相手は、どこかの一族の長らしいぞ」
「なっ、なぜ柱間がそれを知って、!!」


初めてあった時から密かに**に想いを寄せているマダラにとって、この話は衝撃以外の何物でもなかった。
目を白黒させ、頭の中は**と誰かの挙式で頭がいっぱいになっている。無論、自分は式の端っこで手ぬぐいを噛み締めながら涙している。


「里の娘たちが話しておった。今まさに、**はデートらしいぞ、!」
「でぇと?なんだそれは」
「逢瀬ぞ。2人きりで」
「なっ、なななんだと!?!?」


ガーン、と顔を青ざめて固まってしまったマダラ。マダラの頭の中では**が謎の男を見て顔を赤らめている。
長年想ってきた**。そんな大切でかわいいかわいい**が何処の馬の骨かもわからんような奴に取られてしまう。それだけは阻止したかった。それは柱間も同じで。


「……柱間、なんとしてでも阻止するぞ」
「あぁ。…だが一体、どうやって阻止するか?」


うーむ、と頭を悩ます2人。里を納める2人が1人の女性のデートを阻止するために頭を使っているだなんて、里の者が聞いて呆れる。

その時、マダラには1つの考えが思い浮かぶ。


「ハッ!これだ!」
「??」



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「へぇ〜、他にはどんなことをしているんですか?」
「新しい術をずっと考えています。まぁ、扉間様にいつもくだらないと一蹴されてしまいますがね」
「あはは、扉間ったら厳しいもんね」
「あの若さであんなにいろんな術を考えつくだなんて、本当に尊敬しています」
「まぁ、兄とは違って頭いいもんね〜」


**は男性と2人仲睦まじく歩いていた。美形の2人は里の者から注目され、キャアキャアと2人の恋の噂が飛び交う。


「柱間様も尊敬しています!あんなに強くてかっこいい方はいません!マダラ様もです!」
「あー、あの2人馬鹿だか、「「ふんぬっ、!!」」


そんな俗に言う『いい雰囲気』の時、上半身裸の馬鹿2人が腕や腹筋に力を入れ、筋肉美を惜しげもなく披露していた。普通の道端で。


「やぁ、**。今日も清々しい朝ぞ」
「ハッハッハ、こんな時は筋肉を鍛えるに限るな!柱間!」
「………あ。あそこのお団子屋さん美味しいから行ってみますか?」
「あ、あの…お二人は、…」
「え?なんのこと?」


にっこり。そんないい笑顔で男性の腕を引っ張る**は2人を一切視界に入れずに早足で甘味処へと歩いて行った。


「…ダメではないか!マダラ!」
「チッ…力の強いアピールは失敗か…」
「次は俺の考えぞ!」


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「ここのお団子、ずっと好きなんです。」
「本当に美味しいですね。特にこのたっぷり餡のかかったみたらしなんて最高です!」
「!わかりますか!よかった、わかってくれる人なかなかいなくて…!」
「ふむふむ、マダラくん。この六道仙人の古代ハゴロモとホムラら秘術、うーん…なんて読むんぞ、ここ」
「…あ?知るかんなもん。ところで柱間よ、この忍術に使う忍平方の定理について議論しようではないか」
「ほほう、決定論と確率論のことかね?」
「かつてのメェーネラウスが作ったとされるあの伝説のか!」


大量の本を手に取り、普段かけもしないメガネをかけ、ふむふむなるほど、とお互い言いながら本を読む馬鹿2人。次の作戦は頭がいいアピールだった。2人は確実の馬鹿だが。

賢い風なトークをしているが、中身は全くもって意味不明。あまりに大きな声で言う者だから、**と男性は思わず手が止まる。


「……あの、**さん、あの2人は一体…」
「ここの甘味処ね、秋になったら限定メニューが出てそれもまた美味しいんですよ」
「えっと、…いいんですか?」
「ん?なにが?」


またまたにっこり。里一美しい**の笑顔はなにやら黒い靄で覆われていた。無理もない。戦友があまりに馬鹿すぎて苛立ち呆れているからだ。

会計を支払おうと**が財布を取り出した時、男性はそっと**の手を抑え、にこりと笑った。


「ここは俺に持たせてください」
「え?でも、」
「こう言う時でしか、格好つけれないので、」


恥ずかしそうにはにかみながらそう言う男性。**はそんな男性を見て、ふふ、と思わず笑った。そして、じゃあお願いしようかな、と微笑む。

そんな2人のやりとりを見て、マダラと柱間は石のように固まった。いつも、こう言う場は割り勘が当たり前で、気分がいい時はじゃんけん。もちろん**が負ければ全額**が払うが、あのように女性に奢ると言うことを2人はしたことがなかった。


「ありがとう、ごちそうさまです」
「いえ、では次どこに行きますか?」
「うーん、そうですね〜……っわ、!」
「っと、…大丈夫ですか?」


歩いていたら、思わず躓いてしまった**。しかしそれを、男性は抱きかかえるように**を支えた。もちろん、マダラと柱間も慌てて立ち上がり、支えに行こうとしたが、男性の行動にピタッと止まった。


「(…近い!近すぎる!!)」
「(あんなに密着しなくてもよかろう…!!)」
「すっ、すいません…ッ!」
「いえ、大丈夫ですよ。**さんに怪我はないですか?」
「はいっ、ないで、す、ッ」


突然顔をしかめる**。しかししかめたのは一瞬で、あとはにっこりと笑って怪我を隠そうとした。足を捻ってしまったのを隠そうとした。


「………」


そんな**を見た男性は、黙って**の膝裏に手を添え、そのまま姫抱きをした。


「っえ!?ちょ、え!?」
「**さん、怪我をしているのを隠さなくてもいいんですよ」
「〜〜なんでわかって、!?」


突然のことに慌てる**。しかし抱えられている以上、柱間やマダラでないため暴れて怪我をさせるわけにもいかず、そのまま男の腕で大人しくした。

男は先ほどの甘味処へと足を運び、店員に一声かけてから座らせてもらい、氷まで貰って**の目の前に跪いた。


「だっ、大丈夫です、自分で治せます…!」
「**さん、医療忍者なのに自己治癒は苦手ですよね?ここは俺に甘えて手当てされてください」
「〜〜ッ」


**が大人しく手当てをされている途中、マダラと柱間はわなわなと肩を震わせていた。自分よりも弱いであろう男に**が大人しく従っている。その事実が許せなかった。


するとその直後、ドンッ、と里に爆破音が響いた。


「「「!?」」」
「い、今のはなんの音で、…**さん!?」


駆け出した**。しかし脚がズキッと痛み、その場にしゃがみこんでしまう。そんな**を後から店を出たマダラが抱き抱えた。


「マダラ!?」
「柱間!先に行け!」
「おうぞ!」
「ったく、何してんだよ**」
「ごめん…」
「いけるか?」
「うん」
「待ってください!**さんは怪我を、」


**を抱えて走り出そうとするマダラを慌てて止めた男。怪我人に戦わせるつもりですか!?とマダラに訴えた。


「**さんは安全な場所に運んでまず治療を、「悪いな」

「俺は、…俺たちは、たとえこいつが怪我をしてても、こいつを1人放っておくなんてできねぇ」
「っ、ですが**さんは女性で、「戦場では男も女も関係ない。戦える奴が戦う。それだけよ」


あなたは逃げてください。そう言う**は、強い瞳を持っていた。男が**の言葉にたじろぐ。


「それにこいつ、強がっててもかなりの寂しがりだからな。1人にしたら間違いなくどんな状態でも俺たちを追って来ちまうんだよ。それなら、目に見えるところにいてくれた方がよっぽどマシだ」
「だって、私だけ仲間はずれって酷くない?」
「ったく、あんま無茶すんなよ?」
「はぁーい」
「行くか」
「うん。柱間が待ってる」


最後は男の方など見向きもせず、**とマダラは柱間の元へと走っていった。1人置き去りにされた男は、ただただその場に立ち尽くした。


「…はは、…敵わないや、」




:
:





「遅かったのう、2人とも。もう終わってしまったぞ」
「えー!置いといてよ!」
「来て損したわ」
「帰ろ、マダラ」
「そうだな」
「待て!置いて行くな!」


里で暴れていたのは巨大な蛇だったらしく、**とマダラがついた頃には柱間が追い払った後だった。拍子抜けした2人は柱間を置いて帰ろうとする。


「そう言えば**!あの男は誰ぞ!」
「え?あぁ、あの人?扉間の部下のことか」
「こっ、婚約するのか!?」


目を白黒させ、慌てた様子で問う2人にクスッと笑った**。なんとなく、**は2人の考えがわかってしまった。


「なんだ、2人とも寂しいの?」
「!さっ、寂しくなんかないぞ!」
「べべべ別に気になっただけだ!」
「あはは!」


告白されたのはされたけどね、から始まる**の言葉に衝撃を受けた2人。まさか、**があの男と結婚してしまうのでは。そう思うと涙すら浮かんでくる。


「断ったよ」
「「……へ?」」
「今日は、思い出作りにデートだけって約束」
「ななななんで断ったんだ!?」
「私には2人がいるから、今はそう言うこといらないかなって思ってさ」
「「!!」」


まさかの出来事にまさかの結果で2人は驚きとにやけが隠せない。マダラにとって、恋愛対象外と言われたようなものだが、何はともあれ**がどこの馬の骨かもわからんような男の元に行かなくて、ホッとしている。


「そうか!そうかそうか!結婚はせんのか!」
「あはは、そんなに嬉しい?」
「別に、また婚期が遅れたと思っただけだ」
「の、割には嬉しそうな顔だね」
「そんな顔しておらんわ!」


マダラに姫抱きされ、三人仲良く帰る姿を、里の者はにこやかに見た。やっぱり**様には2人がいないとね、と誰かがつぶやいた。





見上げたら、姫が飛んでいる
(**、ここは俺が払う)
(ほんと?ラッキー!柱間!扉間!イズナ!マダラの奢りだって!めちゃくちゃ食べよ!)
(ちょっと待て)



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白雪姫の夢御伽