ナルト 裏 | ナノ




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for マミヤ様



『はじめまして、日向ネジくん』


誰にでも好かれそうな笑顔を向けて、ごく自然に伸ばされた手を無意識に掴んだあの出会いから、もうどれだけの年月が経っただろうか。


「ネジくん、今日も任務よろしくね」
「……よろしくお願いします」


完璧とも取れる笑顔を作る彼女の任務は、お世辞にも綺麗と言えるようなものではなかった。


『っん、あぁ…あっ、!』
『ックク、良いなお前は…どうだ、俺の色女にならんか?』
『ふふ…その言葉、他の何人に言いっ、ぃ、んあっ、!』
『お前だけだよ、**』


はぁ、と甘い息を漏らす**さん。うっとり、というように溶けたような視線でターゲットを見つめていた。

心の中で舌打ちをした。
いくら任務だからといえ、他人の性行為を覗き見のように見なければならないなんて。この時ばかりは、自身の血継限界を呪う。


『罪な人、ですね…』
『なぁに、金ならある。小遣い稼ぎに副業を始めたからな』
『なぁに?っぁ、…怖い、コト…?っん、』


**という女は、まさに悪魔のような女だった。
ひとたび色任務を与えれば、その成功回数は数えるなんて到底できない。純情そうな顔をして、中身は男を手玉にとって情報をとれるだけ引き出す小悪魔にも程遠い魔女。

今も、そんな彼女の仕草や言葉、表情、全てに魅せられた哀れな男が機密事項をペラペラと喋り出している。

依存性のある薬を民衆に売りさばき、非道にも人身売買をしている汚い大名。どれほど外を調べてもなんの情報もなかったが、**さんが出向けばそれすら赤子の手を捻るよりも簡単にことが進む。


あらかた喋った男が、**さんの首にねっとりと舌を這わせた。接合部からは、じゅぶ、じゅぶ、と粘膜が絡み合う音が聞こえるようで。

醜く、穢らわしい。


『大丈夫なの、?そんなことして…ぁ、ンっ、うぁ、…』
『心配いらない。腕利きの忍を雇っているからな』
『忍…強いの、?』
『いいや?金さえ出せばなんでもやるような男たちだ』
『やだ、怖い…』


甘えたように怯える声に、嘘つけ、と心の中で思った。何が怖い、だ。俺からすれば、あなたの存在の方が怖いのに。

芋づる式にズルズルと情報を引き出す**さん。もう十分すぎる情報を得られたから、あとはその情報を持ち帰るだけ。


『あっ、も、“イク”っ、!』
『っはぁ…本当にお前は堪らないな、!』


あぁ、合図だ。

妖艶に笑った**さんと目が合う。いや、俺の姿なんて見えないはずなのに、なぜかいつも、**さんは俺の視線を見つける。
本当に、怖い女だ。

**さんが男の口元に手を当て、その上から**さんがキスをした。その一瞬で、チャクラが部屋全体に広がる。
男の目が光をなくしたのを確認し、俺は部屋に入っていった。


「外の忍さんはもうやっつけてくれた?」
「…はい」
「ふふ、ありがとう」


大名が言っていた忍に関しては、もうすでに**さんが、情報を持っていた。

**さんの人を見抜く目は驚くほど正確だ。特に黒幕を見抜く力は里の誰よりも備わっているとさえ感じる。視線を操る彼女の前では、どんな演技も素人俳優のように映るらしい。

大名の隣にいる人、忍だね。

その言葉をつぶやいた日の夜にはすでに忍の心は**さんの手の中。たった一言二言言葉を交わしただけなのに、気づけば忍の視線は**さんにしか向いていなかった。

本当に、どんな麻薬を使ったのか。


「ネジくん、服、持ってない?」
「…持ってません。我慢してください」
「えー、寒いなぁ、」


元着ていた服は布団の上で倒れている男が切り裂いてしまった。残骸ともとれる赤い着物の破片が辺りに散らばっている。
ハァ、と一つため息をついて自身の服を脱いだ。そうしたら、俺が脱ぐのをわかっていたはずなのに**さんはトボけたような表情をした。

いや、口元だけは微かに口角が上がっていた。


「いいの?」
「…待っていたでしょう」
「ふふ、そんなことないよ。ネジくんが風邪引いたら大変だもん」


でもありがとう。上半身だけ肌着になった俺から上着を受け取り、**さんがそれに華奢な腕を通す。

何も着ていない素肌には、さっきの男がつけたであろう赤い痕が点々と残っていた。それだけじゃない。昨日の忍がつけた痕も、いつつけられたかすら覚えていない噛み跡も、自身にかけていた幻術を解けばその実態が全て明らかになる。


「相変わらず、痕、消えませんね」
「消える前に、新しいのがついちゃうからね。それに、」


誰かさんが、全部の痕を上書きするからだよ。