気になるあの子
「犬ちゃんってさ、看守長さんのこと好きでしょ」
「あ、ムサシも気づいてたんだ〜」
「なんか空気的に伝わるんだよね、大会の時にピンと来たー」
「犬先輩わかりやすいもんね〜」
間延びした私たちの会話を聞いて「なっ…!」と顔を真っ赤にさせている犬先輩はついに壁を殴ってしまった。犬先輩、そろそろ壁が可哀想です。
「犬ちゃんまた壁殴ったの!?何発目よ!?」
「照れ隠しはもうちょっと穏便にお願いしますよ〜」
ボコボコの壁もかわいそうだけど、それ以上に「ぐぬぬ…」と言い返せないでいる犬先輩がすごくかわいい。もっといじめたい…って違うか。
「犬ちゃん知ってる?今って『草食系男子』ってのが女性に人気らしいぜ?」
「そ、そうしょくけい?」
「あー、いるよねそう言う人。」
「草食系男子目指してみたら?」というムサシに、犬先輩の「野菜のみを食べればいいのか?」という天然万歳発言に私は悶え死んだ。天然かわいすぎる。
流行の恋愛を記述してあるであろう恋愛雑誌をまじまじと読む犬先輩。そんな彼を私は無音カメラで撮影するのだ。そしてロック付きのフォルダへ即移動。今や300枚以上のかわいすぎる犬先輩が私の癒しフォルダに詰め込まれている。
「犬先輩モテるのにね〜」と本人に聞こえないようにムサシと内緒話をする。鉄格子越し?そんなのあってないようなもんよ。
「(△▽もかなり人気あるんだけど…)△▽はいないの?好きな人。」
「え?」
うーんと考える振りをしてふふっと笑い、ムサシのあったかい唇に人差し指を当てた。
「なーいしょっ」
△後日▽
「△▽ちゃぁぁぁん!!待ってたよぉぉぉお!」
「ウノ君!今日はお招きいただきありがとうっ」
「△▽っ」「△▽さん」
「久しぶり!みんな元気ー?」
あっという間に出来た名物△▽の輪。
こういう場所で彼女は常にと言っていいほど人の輪の中心にいる。そう、彼女はモテるのだ。
「猿、随分と楽しくなさそうね」
「ほっとけ」
そんな彼も、彼女に射止められた人物の一人。
でもそんな彼女を射止めたのは………
「よぉ!シロ!マジでデリバリー始めたんだな!」
「っシロさん! 」
輪の中をスルリと抜け出し嬉々とした満面の笑みをシロ向ける。
「お久しぶりです!私の事を覚えていますか?」
そう言うとこくこくと首を上下に振る姿を見て、さらに上機嫌になる。
「…△▽の好きな人って…………」
「「「シロ!?!?」」」
気になるあの子を射止めたのは…
やけにゴツい料理人