其の他 | ナノ

金星までランデブー



7/30
職場の先輩に明日飲みに行かないかと誘われた。二つ返事でOKした。
やったーただ飲み

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7/31
オネェな先輩に連れられた店はオネェバーだった。主張が激しすぎる見た目のマスターと先輩にグイグイ飲まされ、悪酔いした。

ベロベロに酔った帰り道、家の前で髪の長い女の人がぶっ倒れてたから酔った勢いで家に入れた。



「あのぉー、こんなとこで寝てたら熱中症で死にまーすよー」
「……」
「おーきーてーくーだーさー…やめた、めんどくさい」


玄関でぶっ倒れている女の人の腕を掴んでズルズルと家の中に入れた。何この人、めちゃくちゃ美人なんだけど。今時の美人は外でも寝るのか。

酔いに酔っ払って頭の機能が正常でない私は、そのまま玄関に引きずって鍵もかけずにその人を寝室まで引きずった。私の布団に寝かせてからその隣で寝た。女の人だし別にいいや。

私は酔っていた。




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8/1
二日酔いがひどくて頭が痛かった。
朝、何やらいい匂いがすると思ってキッチンに行ったら、知らない男の人が味噌汁を作っていた。
名前を聞いたら、桂小太郎だった。やべ、指名手配犯家に入れちゃった。



「あの、もっかい名前言ってください」
「桂小太郎だ」
「えー…あの、もしかして攘夷活動とかしちゃってますか?」
「むむ?俺を知っているのか?」


やば、指名手配犯入れちゃったよ。どうしよう、今指名手配犯とちゃぶ台囲んで朝ごはん食べてるよ。


「昨日は感謝する。どうも眠くて寝てしまったんでな」
「いや、あの、眠くなったから外で寝るってどうなんですか」
「ところでこの卵焼き、上手に巻けたと思わないか?」
「あ、はい、上手ですね。」
「そうだろう?おったまごー(おったまげー)なんつってハッハッハ」


どうしよう、指名手配犯じゃなくてもやばいよこの人。頭の中がやばいよ。会話についていけなくて意味わかんないよ。

とりあえず自分を落ち着かせるために味噌汁をすすった。少し熱めの汁が体の中をぽかぽかと温める。なんだか、懐かしく感じた。久しぶりに誰かのご飯を食べた気がする。


「あ、美味しい…」
「またいつでも作ってやろう。そなたの名はなんと申す?」
「…**、です」
「そうか**と言うのか。すまんが少しの間世話になる」




なんやかんやで桂さんの友達のエリザベスが迎えに来るまで一緒に住むことになった。エリザベスだなんてどこの女王様が迎えに来るのだろうか。

味噌汁は、涙が出るほど美味しかった。桂さんにバレないように私は涙を拭いた。

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8/2
仕事から帰ったら、水色のエプロン姿の桂さんがご飯を作っててくれた。



「おかえり、**。風呂にするか?飯にするか?それと「ご飯にします」


今日は一段と疲れた。色々失敗して先輩に迷惑をかけた。自己嫌悪に陥ってしまってため息が出る。

そしたら桂さんが私の頭をぽん、と撫でた。


「!」
「随分疲れたようだな。今日は腕によりをかけてオムライスにしたぞ。」
「、オムライス…」
「今日もよく頑張ったな、**」


桂さんの顔なんか見れなくて、私はただ何も言わずに頷いた。桂さんの手は大きかった。




今日のご飯はとろとろのオムレツだった。桂さん、料理名間違ってます。

ショックを受ける桂さんの顔が面白くて、散々笑った。明日は桂さんの服とかを買っといてあげようかな。

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8/3
桂さんが蕎麦がないと騒いでた。私うどん派なのって言ったら蕎麦について2時間も語られた。最後の方は夏のソナタについて語られていた。
人生で一番無駄な2時間だった。

最後に服とか下着とか渡しながら、蕎麦買っときますねって言ったらまた頭を撫でられた。



「蕎麦買ってなくてすいません。明日買ってきますね」
「頼んだぞ。蕎麦というのは古来から伝わるこの地球の「あの、これ、プレゼントというか、…」


また蕎麦の歴史について語ろうとしたから思わず遮った。
桂さんの顔色を伺いながら大きめの紙袋を渡す。キョトンとした顔の桂さん。なんだか少しかわいい。


「これは?」
「エリザベスさんがいつ来るかわかんないんですけど、…それまでのつなぎみたいに思ってくれれば、」
「こんなにたくさんの服を…いいのか?俺は、「お味噌汁、美味しかったから…」


あれ、なんだか恥ずかしい。私はただ、お味噌汁とオムレツのお礼がしたかっただけ。深い意味はない。

なんとなく視線を合わせることができなくて、下を向いた。そしたら、ふわっと頭を撫でられた。びっくりして肩に力が入る。

恐る恐る、桂さんの顔を見た。その瞬間、私の心臓は変に締め付けられた。




あんな優しい顔できるんだ。

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8/4
仕事が休みだったから桂さんと一緒に家の大掃除をした。重いもの持ってくれたり、手の届かないところは桂さんがやってくれた。

桂さんって、男の人だったんだなぁ。



「**は力が弱いなぁ、それでは鉄手腕アトムの小指にも敵わんぞ」
「アトムと戦う予定ないので大丈夫です」


大体片付けも終わってあとは本棚のみ。私は下の本を、桂さんは上側の本を同時にせっせと運んでいく。


「本を抜いたあとどうするのだ?」
「棚を拭いて、本も拭いて、それからまたなおします。」


桂さんは思いの外よく働いてくれる。こんな大掃除まで付き合ってくれるなんて思っていなかった。どうしてこんないい人が攘夷活動などしているのだろうか。


「む?これは何の本だ?」
「え?あ、それは確か…ヒロインの女の子が、闇社会で生きる犯罪者に恋をしてしまうお話ですね。とても面白い本でしたよ」
「ふーん。」
「聞いといてなんですかその態度は」


ブスッと脇腹を刺した。そしたら思いの外弱かったのだろう、「ぐぅふぉぉっ!!」と激しく反応した桂さんが本棚にぶつかった。

スローモーションのように倒れてくる本棚。中に入っていた本の何冊かがバラバラと落ちるのが目に入る。待って、これ直撃するや、つ…


「**!!」
「っ、」


これ絶対痛いやつ、と思って目を閉じた。自分の体が倒れているのがわかる。しかしいつまでたっても痛みなんてなくて、そっと目を開けた。

そこには、焦った様子の桂さんがドアップで映った。


「ッ!?」
「大丈夫か、**!」


彼に包み込まれるように抱きしめられている。頭と腰に回った腕、絡み合った足、彼の髪の毛が首元にかかってくすぐったい。

息なんかろくにできなくて、ただ目を逸らした。彼の体温が、生々しく私に移る。


「怪我はないか?どこか痛むところは、「大丈夫、です」
「それより、立ちましょうか」


本棚をぐっと押していたら、代わりに桂さんが本棚と私ごと起こしてくれた。

ポスポスと頭やら肩やら腕やらを触り、痛いとこはないか!?と私の体をくまなく触った。手がお尻に触れた瞬間、びっくりしてしまって思わず膝が出る。

ノックアウトされた桂さんは、怪我がないならいい、と本当に安心した表情で私に笑った。イケメンは、これだからずるい。




今日は、熱かったなぁ。

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8/5
割と夜中に桂さんがカーテンのシャーが気になるってうるさいからロフトに行ってきた。まったく、今日夜でも暑いのに。

帰ったら桂さんはクーラーをつけて寝ていた。ブチギレた私は寝起きの桂さんに腕挫十字固めをした。



「痛い痛い痛い痛いギブギブギブギブ!!!!」
「何一人でくつろいでるんですかァァァァァッッ!!!」
「ごめんなさいごめんなさいもうしません!!!!!」




有名な攘夷浪士は半泣きだった。ざまぁみろ。

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8/6
取引先がうっとおしくてイライラしてた私はやれビールやら焼酎やらチューハイやら日本酒やら大量に購入して家に帰った。

桂さんを呑もうと無理やり誘い、イライラをぶちまけながら呑みまくった。

途中からなんてボロボロ涙を流しながら呑んでた。きっとその時の私はどうかしてたと思う。

まさか桂さんを誘うだなんて思ってもいなかった。



「そら私なんて、色気のいの字もないれすけろね、」
「**、飲みすぎだぞ、もう飲むのはよさんか」
「なぁにまともなこと言ってんれすか、かつらさん!あならもっといつもふざけてるしゃないれすか!」
「ふざけてるとは何だ!俺はいつでも真面目だ!」
「もっと呑みますぅ〜」


悪酔いした私はタチが悪いといつも先輩に言われる。いいじゃないか、こんな時くらい。桂さんに悪口を言いつつコップになみなみと日本酒を注いだらその手を取られた。
なんでい、いいじゃない、私の勝手だ。


「溜まってんすよ!飲ませろーっ!」
「ダメだ、もう飲ません!」
「かつらさんのばぁぁぁあか!」
「馬鹿とはなんだ!」


お酒返して!と桂さんにのしかかった。ダメだと言い張る桂さん。酒瓶をそのまま口につけてゴクゴクと飲み干す桂さんに、あー!と叫ぶ私。空になった酒瓶を床に置く桂さん。

腹が立った私は何を思ったのか、私も呑む!と言って桂さんに口づけした。しかも指まで口に突っ込んで桂さんの口を無理やり開け、舌をねじ込む始末。

無我夢中でお酒が飲みたかった私は桂さんの口内で下を暴れさせた。


「んぐっ、!?なにを、ッ**…!?」
「ん、はぁ、ぁむっ、んふ…」


腕を回して頭を固定すれば抜け出せない桂さん。そりゃそうだ、床に押し倒されて顔も頭も固定され、女相手に手を出せるわけもない。桂さんは顔をしかめながら私が満足するのを待った。

一方の私は、わずかに残る桂さんの口内のお酒の匂いに酔ってしまい、本能のままに舌を動かした。

このとき、すぐにやめて寝たフリでもしとけばよかったのに、私は欲望に従って桂さんを求めた。


「んんっ、!?んぁ、ッ!」
「…ん、…」


スルリと着物の隙間から桂さんの手が侵入する。寝る前の服だから、肌着なんて何にもなくて、彼の手を拒むものなんてなにもなかった。

脇腹や、胸の横、谷間、首筋などをゆっくりなぞられ、ピクリと体が反応する。

いつしか、体を支えるのに必死で、キスなんてできなかった。


「っあ、!」
「どうした?その程度か?」


キュ、と桂さんが私の胸の頂を摘む。敏感なところを指で弄ばれながら今度は桂さんからキスをしてきた。いつの間にか桂さんは上体を上げ、私は着物を肩まで脱がされ、胸があらわになる。

両方の乳首を同時に弄られ、喘ぎ声が止まらない。桂さんとキスをしながらくぐもった声が部屋に響く。


「あぁっ、うあ、んふぅッ…あっ、」
「ん、…**…、」


彼の首に腕を回し、必死に彼の舌に応える。桂さんに触れられてると思うと、体がいつも以上に敏感に反応する。


「ふ、ぁ、…んんっ、…ッ、!」
「ッ…すまない、酔ってしまって制御が効かん、…嫌なら逃げてくれ、」
「か、つらさ、ッあ、…」
「ん?どうかしたか?」
「……もっと、」


その言葉を最後に、桂さんは私を押し倒した。激しい口付けと共に私は、彼に身を任せた。




これは家訓だ。酔っ払った桂さんを誘うべからず。体が壊れるかと思った。

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8/7
今日から仕事は夏休み。
朝起きたら桂さんが目の前で寝ていた。昨日は桂さんとやっちゃったんだっけ。頭がひどく痛かった。

桂さんに後ろから抱きしめられながら寝てたらしいけど水が飲みたくなったからもぞもぞと布団を出ようとしたら、桂さんの腕がさらに私に巻き付いた。



「…桂さん、私、お水が飲みたいんですが…」
「……」
「っひゃ、!」
「**は耳が弱いんだな」
「なっ、ちょ、舐めないでくだ…ッんぅ、!」


寝起きでいつも以上に頭のボケた桂さんが私の耳を堪能するようにべろりと舐める。穴に舌をねじ込まれたり、息を吹きかけられたりすると、桂さんの言う通り耳の弱い私はビクビクと体を強張らせてしまう。


「あッ…!や、待っ、〜〜ッ、」
「ココも、」
「ん、あっ、やぁ…ッ!」
「ココも、」
「〜〜っ、ふぁ、!あぁっ、!」
「全て敏感だな」


耳を舐められながら、乳首を弄られ、しかも陰核まで擦られる始末。すぐに濡れてしまう私の秘部は、瞬く間に淫らな水音を立てる。


「ック…う、!や、…!」
「**、」
「〜〜耳元は、だめぇッ…!」


心地よい彼の声も、今は体を高ぶらせるばかり。まだ覚醒しきっていない私の頭は声だけでドロドロに溶かされてしまう。


「**ッ、」


私に覆いかぶさった桂さんは、私の顎をつかみ、熱いキスをしてきた。この人には、敵わない。




本当に朝っぱらから私たちは何をやってるんだろう。桂さんの声は、心臓に悪い。

その日は1日のほとんどを桂さんと密着した。

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8/8
朝起きたら、桂さんはどこにもいなかった。

今日はどこかにお出かけにでも行ったのだろうか?
たまには私が料理を作って待ってみよう。桂さんの好きな、お蕎麦の料理。

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8/9
桂さんは昨日帰ってこなかった。仕方がないからお蕎麦は冷蔵庫に入れて、今日の朝食べることにした。
昨日は何か帰れない理由があったのかもしれない。

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8/10
桂さんの服を洗濯していたら、一枚の手紙が入ってた。
『世話になった、ありがとう。桂より』とだけ書かれた手紙。

私は愚かにも、その時初めて桂さんがもう帰らないことを悟った。

不思議と涙が出た。

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8/11
今思い返せば、桂さんと過ごした1週間は、今までの人生の中で一番濃かったと思う。何回思い返しても、涙が出てしまうのは、私の中で桂さんの存在が大きかったからだと思う。

最近、ずっと寝て過ごしている気がする。

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8/12
久しぶりに味噌汁とオムレツを作った。桂さんみたいに美味しくできなくて、食べながらとても苦しくなった。

桂さんに会いたい

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8/13
街で、真選組に声をかけられた。『桂小太郎を知らないか?』だってさ。知らないです、とだけ答えた。

たぶん、私がかくまっていたことを知ってるんだろう。夜逃げでもしようかなって思ってたけど、準備が終わった頃にドアを叩く音がした。

今絶賛無視中だけど、真選組らしい。あーあ、これで私もお縄頂戴か。

最後に、この日記を見た人へ。
私は罪を犯しました。指名手配犯を家に匿うだけじゃなく、恋までしてしまいました。なんて罪なことなんでしょう。

でも私は後悔していません。彼を好きになって、私は幸せです。最後に、桂さんに会いたかった。

それでは、行ってきます。生きて帰れたら、また日記でもつけようかな。



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8/20
1週間ぶりの日記です。私は今、船酔いを我慢しながら必死に書いてます。

この1週間、いろいろなことがありました。
真選組に尋問され、水をぶっかけられ、本当に彼らは容赦がない。

でも、桂さんが助けに来てくれました。
危険なはずなのに、見捨てても大丈夫なのに、桂さんは来てくれました。

そしてそのまま、私は桂さんの船に乗っています。
攘夷活動とかよくわからないから傍観者を貫くけど、桂さんをそばで見守りたいと思います。

私は今、幸せです。

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「また日記か?」
「あ、桂さん」
「顔色が悪いぞ。船酔いでもしたか?」
「まぁ少しだけ…桂さんは船酔いとかしないんですか?」
「船酔いなどとうの昔におえぇぇぇっ」
「何してんですかァァァッ!?!?」


私の日記を見て酔ってしまったんだろう、思いっきり吐いた桂さん。幸いにもゴミ箱にインしてくれたおかげで悪臭だけで済んだ。


「もう、ほんっとうに馬鹿ですね」
「馬鹿でない桂だ」
「そうじゃなくて…」


途端に黙った桂さん。どうしたの?と思い顔を除くと、苦しそうに眉間にしわを寄せていた。


「桂さ、「すまない」
「…え?」
「お前を危険な目に合わせてしまった。本当にすまない…」
「桂さん…」
「今度は、必ず俺が守る」
「ッ…」
「俺と、共に来てくれぬか?」


珍しく真剣な顔で、そんなことを言うもんだから、断ることなんかできなくて。お願いします、とぶっきらぼうに応えることしかできなかったけど、そんな私に桂さんは笑った。


「ところで**」
「はい?なんですか、桂さん」
「谷間見えてグフォォッ!!」







金星までランデブー
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拝啓、何処かの誰か様。
私は今、攘夷活動をしている桂小太郎の船に乗っています。いろいろ不安もあったけど、この人の近くにいれて、私は幸せです。

最近では、ジャーマンスープレックスが得意技になりました。いつかこの日記を読んでいるあなたにも、見せてあげたいです。

ps.エリザベスは女王様ではありませんでした。

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