花弁の呼吸を奪う


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デイダラ君へ

デイダラ君はなんでもお見通しだね。冬に、風邪をひいてしまって、家族にはすごく迷惑をかけてしまいました。毎年わかっているんだけど、どうしても気づいたら風邪をひいてしまうの。ダメだね、わたし。

どうだろう、わたしも時間が作れたらデイダラ君に一目だけでも会いたいな。三年ぶりだもんね。

目立ったところでは会えないかもしれないけど、ほんのちょっとだけでも、ね?

今、岩隠れでは桜が咲いてるよ。


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「〜〜っ!!」


『会いたい』だって、うん。**が、オイラに、『会いたい』っつってる、うん。


「今日ハ一段ト気持チ悪イ」
「なんかいいことあったの?」
「…うん、うん、」


ブワッとなる心臓。頭の中はお花畑。たった一言でこんなにもテンションが上がるなんて、**はまるで魔法使いだと思った。
なんどもなんども『会いたい』の文字を読み返す。なんだ、**もオイラに会いたかったんだ。
前送った手紙で、素直に書いときゃよかった。


「いつもの手紙か?」
「おう!」
「女に現抜かすのはどうでもいいが、任務はちゃんとしろよ」
「任せろって、旦那!」


親指を立てて突き出した。呆れたように笑う旦那は置いといて、またいつものように両手で手紙を握って部屋に行く。

部屋に向かう途中に角都に蔑むような目で見られたけど気にしない。今は何をされても笑って過ごせる気がする。


「おい、ストーカー」
「ストーカーってなんだよ飛段!!うん!!!」


前言撤回。怒るときは怒る。


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**へ

おれは**のことだったらなんでもお見通しだ。**はがんばりすぎるとこあるから、むりしないようにな。

できたらでいいから、会おう。人がいても変装するし、**に迷惑はかけないから。

再来月か、その次くらいに行く。何日いるかはわかんねーけど、会える時間があったら、できる限り会いたい


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そこまで書いて、やっぱり止めた。もし書いたら、もう**のことで頭がいっぱいいっぱいになって、それこそ旦那の言うように任務ができなくなるかもしれない。

会いたいの気持ちが爆発して、抑えきれなくなる。


「……情けねーな、うん」


書いた文字を消しゴムで消した。いつも筆圧が強いから、目を凝らしたら文字が見えたけど、そこまで読んでないだろ。そう思ってそのままにした。



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**へ

おれは**のことだったらなんでもお見通しだ。**はがんばりすぎるとこあるから、むりしないようにな。

できたらでいいから、会おう。人がいても変装だってするし、**に迷惑はかけないから。

再来月か、その次くらいに行く。何日いるかはわかんねー。また連絡する

おれたちが会うときは、もう夏かもしれないな。


デイダラ


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いつもみたいに封筒を偽装して頑丈にテープを貼って封を閉じた。岩隠れはそう言う偽装とか厳しくないからできる。

いつもみたいに、**の宛名と適当な旅館の名前を書いて、切手を貼った。なんども見た目と中身をチェックして、意気揚々と部屋の外に出た。


「散歩行ってくる、うん」
「手紙出しに行くの間違いじゃないの?」
「今更ナニヲ隠ス」
「ストーカーはほどほどにしろよ」
「うるさいな!うん!」


べーっと舌を出してアジトを出た。ストーカーじゃない、断じて違う。ただの友達だ、うん。
**もそう思ってくれてる、きっと。

ぎゅっと握った手紙は少し皺が寄った。本当は未練垂れている自分に気づいてるけど。



花弁の呼吸を奪う
『会いたい』
(消された文字か、こころに響く。)