空の窓がとおい


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拝啓、デイダラ君。

秋風が心地よい季節になってきましたね。お久しぶりです。お元気ですか?

デイダラ君が里を出て、3年が経ちました。少し騒がしくなったけど、今はもう平穏っていう感じです。いつも通りです。

いきなりですが、一昨年、私は結婚しました。お見合い結婚です。うちよりも高位な家柄の人で、うちは支援してもらったりとお世話になることが多く、素敵な方です。
なかなかうまくいかないことが多いけど、自分なりに頑張ってます。デイダラ君も頑張ってるのかな?

また、時間があれば、お返事ください。

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**へ

**の手紙は堅っ苦しいな。そういうのはなしだ。敬語もやめろ。
おれは元気だ。**は元気か?
もう三年か、早いな。おれは修行とか色々してたけど、**は三年間なにしてた?
また聞かせてくれ

結婚おめでとう。頑張ってるんだな。
いい奴ならそれでいい。幸せにしてもらえよ。
今度、里に行くかもしれない

デイダラ



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デイダラ君へ

里では雪が積もったよ。とても綺麗です。
デイダラ君が元気でよかった。私も元気だよ。
うーん、私の三年間はほとんど花嫁修行かな。お料理のお勉強をしたり、生け花を習ったり、忙しい三年間だったと思います。

ありがとう、頑張るね。

いつ、里に来るかな?なにかしにくるのかな?細かい日にちとか、わかったらいいんだけど。。

お返事待ってます。

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「おっ、**からだ、うん」
「意外にマメだよな、お前」
「意外って一言余計だ旦那、うん」


カサカサと小さな紙を開いて文を読む。短い手紙のやり取りでも、繋がってるって事実が嬉しかった。


「お返事待ってます、だってさ、うん」
「ニヤケ顔が気持ち悪ぃ」
「辛辣すぎだぜ旦那、うん」


四角におられた紙を丁寧に折り返し、いつも持ってるポーチの中にしまった。ニヤケてしまうのは仕方がない。なんたって好きな奴。もう二度と連絡すら取れないって思ってたのに、まさかこんな風に手紙のやり取りができるなんて。


「きもい」
「気色悪ぃ顔」
「ニヤケ顔気持チ悪イ」
「嬉しそうで何よりだね」
「お前ら……ッ」


そもそもこんなみんながいるところで読んだのが間違いだった。カッと熱くなる頭を抑えてその場に背中を向ける。


「部屋に戻る!うん!!」
「怒った怒った」
「サッサト帰レ」
「〜〜っ」


最後の最後までぐちぐちと言ってくるゼツに苛立ちを覚えつつ、その場を早足に去った。オイラは**に返事を書かなきゃならない。

灯りもない廊下をずんずん進む。さっきバカにしてきた旦那も飛段もゼツも、ムカついて仕方ないけど、頭の中は着々と**のことでいっぱいいっぱいになっていった。

正直、結婚したことも、他の男の前で幸せそうなことも、チクチクと胸が痛くなったけど、オイラと**が選んだ道だから、なんとも言えなかった。


「…**、オイラに会ってくれるのかな、うん、」


過去に告白してきた男なんて気持ち悪いかもしれない。今の旦那がいるから、会いたくないって言われるかもしれない。

ばたん、と扉を閉めた。
違う、きっと**は会ってくれる。男としてじゃなくても、友達として会ってくれる。きっとそうだ。

そう自分を奮い立たせて、再び筆を握った。


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**へ

雪が降ったのか、もうそんな季節か。体に気をつけろよ、**は冬になると風邪ひきやすいから。

こっちの用事で、何日かそこに行く。
多分まだまだ先のことだから細かい日付はわかんねーけど、決まったらまた連絡する。
久しぶりに**に会いた


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「ダメだダメだ何書いてんだオイラ、うん、!」


相手は人妻だ!いくら友達だからってこれはダメだ!!

書いていた紙をくしゃくしゃに丸めた。
本当は会いたくて仕方がないけど、どうやってそれを手紙で伝えればいいかわからない。

ヨレヨレになった紙をもう一度開いた。…友達だったら、会いたいくらい、普通か?いや、でも、仮にも昔告白した相手だし、うん………。


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**へ

雪が降ったのか、もうそんな季節か。体に気をつけろよ、**は冬になると風邪ひきやすいから。

こっちの用事で、何日かそこに行く。
多分まだまだ先のことだから細かい日付はわかんねーけど、決まったらまた連絡する。
三年ぶりに会うか?おれは時間作れるから、暇な時間とかあったら、連絡くれ。
深い意味はない。友達として、一目みれたらいい。


デイダラ



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空の窓がとおい
(友達として、か……)
会いたいの一言が聞きたかった、そう言ったら、困るかな。