絵画に目を奪われて

 おかしなエントランスだとは思ったが、まさか店内もおかしな造りだとは思いもしなかった。
 板張りのフローリングが続く廊下の途中にはいくつもの絵画。見たことあるような物から、へんてこな物まで。サイズも様々だが、皆絵のどこかに植物が描かれていた。
 絵画を眺め見ていると、その一カ所には小さな小窓にカウンターがあり、どうやらそこで会計をするのだろう、窓の奥に古めかしいレジスターが見えた。

 しかし、店に入ってすぐ、こんなに長い廊下があるものだろうか?
 訝しく思う気持ちと、好奇心を天秤にかけたわたしは、そのまま進む事にした。好奇心が勝ってしまったわけだ。どう転んでも、この店なら良い記事のネタにもなり得るだろう。

 そしてさらに奥に進むと左右にわかれる道があり、さて、どちらに行くべきか。
 分かれ道の真ん中に飾られている写実絵画は緑生い茂る庭園。緑が引き立てる薔薇のアーチが美しい見事なイングリッシュガーデンと言った所だろう。
「金持ちが好きそうな庭園だな」
 一つ率直な感想を呟くと、左右を見渡し思案する。どちらに向かっても同じ店内だ。どこかでは繋がっているだろう。
 わたしは右利きと言う理由から右に身体を向けて、最後にこの絵をもう一度見ておこうと首を絵画へ傾けた。
 そのまま道なりに進むはずだった身体は、不意に止まる。

「アイリン…?」
 アイリンだ。そこにいたのは紛れも無くアイリン。
 わたしの愛しい娘だった。

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