曇天ランチタイム



 よく晴れた平日のランチタイム。

 ん?女の子と両親の話はどうしたって?どうもしないさ。それでおしまい。ハッピーエンドだったろう?

 コホン。気を取り直して。
 よく晴れた平日のランチタイム。
 しかし、わたしの気持ちはこの晴れ空とは真逆。曇天のようにぐずっていた。
 何故なら一昨日…ああ、一昨日だ。
 仕事場から帰宅したわたしを待ちかまえていたのは、かわいい愛娘ではなく、あの料理が下手な妻でもなく、薄い紙切れが二枚。
 一枚は前々から妻がちらつかせていた「離婚届け」と書かれたお役所が発行している紙切れ。
 もう一枚はどうやら手紙らしく、可愛らしい花柄の入った便箋だった。娘の物だろう。
 内容は…プライバシー保護の観点から控えさせて頂くが、世の中のバツを背負った男性のほとんどが言われて居るであろう定番文句とだけ言っておこう。

 そんなわけで、先ほどその離婚届を提出してきたわたしの現在の心境は曇天を通り越して雷雨なわけだが…

 素敵なランチタイムをエンジョイしているアベックがどうしてこうも目に付くのだろうか。
 社内にいても社食は不味いし、気も重いまま。ならば気分転換にと、外で昼食を取ろうと思い立ったが運の尽き。目の毒どころかリア充今すぐ爆発四散しろ。

 わたしの怨念が届いたのか、それとも人が寄りつかない場所に来てしまったのか…静かな通りの奥に一軒の店を見つけた。
 なんとも趣のある店構え。つまり、古めかしいと言う意味だが…
「これは…流石に人を選ぶな」
 飲食店としてどうなのだろうか?と思わせるくらいのホコリをかぶった看板。入り口に鎮座する謎の置物。ここは本当にイギリスか?と疑いをもってしまう程個性的で且つ、保健所に通報されそうな飲食店であった。飲食店だよな?

 改めて看板を見てみると、そこには読める字と読めない字、見たことある程度の知識しかない文字が並んでいた。
 その複数の言語は――憶測でしかないが――すべて「いらっしゃいませ」と書かれているように感じた。実際読める字ではそう書いてある。
 店名が「いらっしゃいませ」なのか、それとも一番上に大きめに書かれているおおよそ言語とは形容しがたい子供の落書きのような物が店名なのか。そんな事はどうでもいい。わたしの興味はすでにこの店に向いていて、どのような料理が出るのか?それとも本当にここは飲食店なのだろうか?

 不思議な魅力に導かれるように、わたしは店の敷居をまたいだのだった。
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