2015/10/07 23:04 ちりん。澄んだ高い音と小さな何かがぶつかる軽い衝撃を感じた。 どうも考え事をしていた俺は、回りをちゃんと確認していなかったらしく、ぶつかったのが小柄な女性だって事に気付く。大変だ、倒れてる。 「悪い、大丈夫か?」 「…………」 返事が無い。しかし女性はせっせと服に着いた土埃を掃う。そして見上げて交差する視線。 なんて澄んだ色をしてるんだろう。瑠璃色とも翡翠色とも取れない神秘的な色の瞳が凛としていて綺麗だと思った。 俺は改めて謝罪を述べ、手を差し出す。そこに無言のまま置かれた手は華奢な身体と同じくらい小さな手で、しかしすっとした綺麗な手だった。 立ち上がる手助けにと力を込めて引っ張るが、女性の顔は苦痛に歪んで再び座り込んでしまった。どうやら足をくじいたのだろう。 申し訳なくて暫くそのままの彼女に今一度謝る。しかし返事は無い。代わりに首と手をを横に振り大丈夫だと言ってるようだった。 「どこに行くつもりだったんだ?」 「………」 「せめて病院まで連れていかせてくれないか?」 「………」 「…何か言ってくれても良いんじゃないか?」 相変わらず無言の女性に痺れを切らした俺は少し強い口調になってしまったらしい。びくり、と肩を揺らした女性は喉へと手を宛て、ぱくぱくとゆっくり口を開閉した。 「もしかして、喋れない…のか?」 彼女は頷き肯定した 誰で書くべきかなー?場合によってはシリーズにしたい喋れないネタ。タイトルは「セイレーンは沈黙した」で prev | next |