ルカに視線が集まる。

「2人ともさ、素直じゃ無いんだよ。キルアはパームさんにどうしてしほしいの?パームさんはパームさん個人としてどう思うの?その欲望に従えば答えは1つだと思うよ。それでも意地で答えを出さないなら殺りあうしかない。」

ルカの問いかけに先に言ったのはキルアだった。
自分が折れなければパームは口を割らないだろうしアルカもナニカも守れない、今優先すべきは自分のプライドなどではないのだ。

「頼む、パーム、……俺の為じゃ無い、アルカとナニカの為にナイフのありかを教えてくれ!お前に少しでもナニカを助けたいって気持ちがあるなら、頼む、手を貸してくれ!」

「キルア……あんた、そこまで……」
キルアが頭を下げたのが余程珍しいのだろう。パームは明らかに困惑していた。

「それで、パームさんはどうなの?」

ルカの厳しい目つきにパームは真剣に悩んでいた。確かに自分はノヴの弟子だが、報酬を貰ったのはノヴだけであり、自分では無い。

「先生は……私に言ったわ。お前なら、何が正しいことかわかる、と。」

その時パームの携帯が鳴り響く。

「先生からだわ!も、もしもし!?」

しばらくパームは何事か話していた。しばらくするとパームはキルア達の目の前に一本のナイフを出した。形状から見てもベンズナイフ。
「先生、報酬を受け取らなかったそうよ。だから、私も自分の考えを信じるわ。先生もそれを見越して私にナイフを預けたんだわ……。それに、まぁ、私もあんたの事は生意気だけど、仲間だと思ってる。」

パームは静かに立ち上がると
「と、とにかくそれでこの話は終わりよ。」
と捨て台詞の様に言ってそそくさと帰ってしまった。

「ったく……あいつも素直じゃねぇな。強化系のくせに俺以上の天邪鬼だよ。」

キルアはベンズナイフを懐にしまいながら呟く。そんな兄の姿をナニカは変わらぬ笑みで見ていた。

「ナニカちゃん、良かったね。これで守って貰えたね!」

ルカが声を掛けるとナニカはルカの方へ顔を向けて
「あい。」
と三日月型に目を細めた。

「ルカさん、あと一応フェイタンも、正直結構助かったぜ。ナニカの力使わせないで済んだし……俺、リダの所にナイフ届けてくっから。」

「着いて行こうか?」

「ワタシは嫌ね。パドキアなんて遠いよ。」

「良いって、ルカさん達そっちに用事なんてないだろ?俺一応実家あそこだし、まだ用事も終わってねぇからついでだ。」

「そう?じゃ、ここで解散だね。」

キルアはアルカに戻った妹の手を引いてルカ達の前から去った。

姿が見えなくなるまでアルカがルカに手を振っていたのが印象に残った。



「それじゃ、帰ろっか。」
「ワタシ何もしなかたね。」
「そんなことないよ。フェイタンの言葉で色んなきっかけが出来てたもん。なんかさ、こんな言い方失礼かもしれないけど、時にはフェイタンみたいに欲望を優先させる考え方って必要なんだと思う。でもほとんどの人はそこで相手の事を考えて思い止まってしまって、欲望を抑えてる。だからきっかけがないと結局我慢することになるんだよ。」


ルカ自身はどちらかと言うとその傾向がある。自分の欲を抑えて他人を優先する。

しかしフェイタンは、というか幻影旅団は常に欲望に忠実だ。やりたいようにやる。そのやり方は強引だが、その代わりに普通の人間が持つような葛藤に苛まれる事は少ない。


「はは、そうか。じゃ、帰たらもと欲望に忠実に行くね。」

にやぁ、と笑うフェイタン。

その言葉の意味がルカにはわかってしまって、顔を真っ赤に染め上げると

「もう!せっかく良い話してたのに!」

と怒った素振りを見せながらもフェイタンの手をしっかり握った。


「あ、シャルへのお礼どうしようか?」

「ああ……そうだな。適当に……」

フェイタンは近くの街路樹を見上げて答えた。

「もみじ饅頭とかでいいと思うね。」
「適当すぎるよ!」

頭上には真っ赤に秋の色をつけた紅葉がそよいでいた。





〜Fin〜



追記
「おい、シャル、この前ルカとフェイタンの仕事手伝ったらしいな?礼金たんまりせしめたんだろ?何か美味いもん奢れよ。」
「じゃ、これ。」
「あんだよこれ!もみじ饅頭?」
「礼にそれ貰った。」


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