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キルアはパームやアルカ、ルカ、フェイタン、全員をひと気の無いところに連れて行く。

「アルカ、ナニカを呼んでくれ。」

キルアの言葉に驚いたのはルカだ。
「えっ!?キルア、良いの?私もフェイタンもいるけど……」

「ああ。ルカさんの事は信じてるし、フェイタンも多分アルカの能力には興味ないと思うぜ。」

「で、でもナニカちゃんを呼んだら居場所がばれるんじゃ……」

「いや、それも考えたんだけど、多分呼ぶだけなら大丈夫だ。ま、賭けだけどな。最悪ばれてもルカさんもいるし、フェイタンだって当然強いんだろ?パームも俺もそれなりにはやれる。アルカもナニカも守れば良いだけだ。」

キルアがそう言い切るのでルカは頷いた。まだ話の流れがわからないフェイタンとパームは疑問符を浮かべていたが、アルカが目を閉じて、次に目を開けた時にはそこに何か得体の知れないものが生まれ出た様な怖気が3人を襲った。

黒く塗りつぶされたような生気の感じられない目。ぽっかりと空いた口もまた闇しか映さない。

「……ナニカだ。アルカの中にいるナニカ。ナニカ、これからお前の事をこいつらに話すけど、良いな?お前は何も心配いらない。」

キルアが言うとナニカはにたぁ、と笑って
「あい。」
と頷いた。

そうして語り始めたアルカの話は次元を超えている、と言っても良いほどの話だった。

アルカのもう1人の人格、ナニカには念能力とは全く違う得体の知れない能力がある。
どこからきた能力なのか、それは解明されていない。
ナニカの能力があればほぼ全ての願いが叶うのだという。死人を生き返らせたことは無いがおそらくそれすら可能。当然制約なしに除念、は当たり前のように可能だという。

そしてアルカとナニカはその特異な能力のためずっと屋敷で隔離されていた。イルミの呪縛から逃れたキルアがその事を思い出し、アルカを連れ出しはしたものの、イルミはその力が手に入らないなら殺そうと画策し、シルバや他の家族はその力を強く欲した。

にわかには信じられない話だったが、確かにナニカが現れた瞬間漂った気配はこの世のものとは思えない絶望と希望が最高潮まで同時に達してしまったような妙な感覚だった。恐怖でもない、だが心臓がモヤモヤするような、そんな感覚。

「パーム、この話を信じるかはお前に任せる。けど、俺の家族は、こいつを、アルカと、ナニカを飼い殺しにする為に死に物狂いで探してる。だからこいつに能力を使わせたくない。けど、リダの依頼は受けた以上完遂させたい。」

言っていることは我儘だってわかってる、それでも俺はこいつを守りたいし、こいつを家族とも思わず道具としてしか見ていない家族に腹が立って仕方ねぇ!

キルアはそう怒った。その様子にパームも流石にうろたえ始める。自分のやったことは1人の子供の未来を大人の都合で潰す行為だったのではないか、と思い始めていた。

「で、でも私は先生の道具、道具は道具として……」

「てめぇの場合は自ら進んで道具になったんだろ!?アルカとナニカは違う!それにノヴだってお前がなんて言ってもお前の事を道具なんて思ってねぇよ。」

「でも先生は報酬を貰ってるし、私は弟子……」

2人の口論が始まってフェイタンが飽きれてため息を吐く。

「お前らバカか?」

「ちょっと、フェイタン……」

「事実ね。ワタシには理解できないね。キルアのそれは我儘と違うよ。お前にとてそのガキが大事なら守りたいなんて当たり前ね。リダの依頼を完遂したいのも当たり前ね。で、お前が弟子だから師匠の言うこと聞くのも当たり前ね。わかりきた事で何揉めてるか。」

歯に衣着せぬ物言いにキルアもパームも驚いてフェイタンを見る。それから

「だから困ってんだろ!?どっちも譲る気ねーんだ。」

「そうよ!」

「はぁ……わからない奴らね。ルカは分かるか?」

「うーん、フェイタンの言いたいことはわかるよ。あ、じゃあ代弁するね!」



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