リダの鍛冶屋を出た2人だったが、すぐにルカは店の前でポツンと立っている少女に気がつく。

「あれ?キルア、あの子知り合い?」

「ああ、俺の妹だ。」
「い、妹!?ゾルディっクって5人兄弟、じゃなかったの?女の子もいるんだー!」

と言いながらルカはカルトのことを思い出す。
よく考えればカルトも見た目は女の子だ。もしかしたらゾルディックでは暗殺一家なりのなにか決まりの様なもので兄弟としているだけで本当の性別など余りアテにはならないのかもしれない、と考えた。

そしてキルアが連れている、ということは少なくとも今キルアの目の前にいる少女はキルア側。ゾルディックから離れた、と考えられる。

そうか、リオーネの話が終わった時、キルアが家の事でもう一悶着ある、と言っていたのはきっとこの子の事なのだろう、とすぐにわかった。

「お兄ちゃん、話、終わったの?」

クリクリと愛らしい黒目がキルアを嬉しそうに見ている。

「ああ、あ、そんで、この人はルカさん。俺の恩人で、今回の仕事の相棒。アルカ、今回の仕事ではお兄ちゃんがお願いするまでナニカを呼ぶな。危険だからな。」

「うん!わかった!ナニカに伝えておくね。」

と2人でよくわからない話を進めている。

「ちょ、ちょっと、キルア、話についていけない……」

「あー、そうだな、簡単には話すけどここじゃ危ないんだ。とにかくパドキアから出ようぜ。」

歩き始めたキルアを見て思わずアルカ、と呼ばれた少女と顔を見合わせる。
少女は笑顔で

「えっと、ごめんなさい。私の事で……あ、私アルカって言います。兄がお世話になってます。」

と小さいながらも礼儀正しくお辞儀をした。

「あ、こちらこそ。ルカです。よろしくね。」

とやはり同じようにルカも笑った。その顔をポーッと見つめていたアルカは

「ルカお姉ちゃんの事は兄から聞いてます。まだお兄ちゃんが小さい頃に色々助けてくれたとか……でも、それがこんなに綺麗な人だとは思いませんでした。男の人だと思ってましたし。」

とルカに言った。

「確かに。ルカって名前は男性名だからね。でも私の方もキルアには色々世話になったから。それもここ最近で。」

女性同士、きゃっきゃと話しながらキルアについて行く。ルカの声を聞きながらキルアはやはりルカはクモらしくない、と考えていた。

「ねー、ルカさん!」

少し先を歩いていたキルアが振り返って呼んだ。

「何?アルカちゃん、行こう。」

アルカの手を取りキルアに追いつく。


「まだ、あいつ、フェイタンと仲良くしてんの?」

急に顔が真っ赤になるルカ。それだけでわかる
「あー、やっぱいいや。その顔見ればわかるし。」
と質問を撤回した。

「あはは……ごめんね。」
「別にー。」
ルカが謝ることではないが単純にルカの様な人物ならばいくらでも仕事はあるのに、言わば盗賊に『墜ちて』しまった事が勿体無いと感じただけだ。





それから数時間して3人はパドキア共和国を出ると別の街でお茶を飲みながら小声で話していた。

「リダの話を聞いてちょっと思い当たる理由がある。」

キルアの想像よりも遥かに核心に近い話が始まった。


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