キルアとお仕事

ククルーマウンテン麓。

「リダさん!」

世話になった鍛冶屋の中から今日もトンカンと火を打つ音が聞こえていた。

ルカは今日は久しぶりにパドキア共和国までやって来たのだ。

「あら、ルカちゃん。待ってたわよ!」

火を打つ手を一度止めてルカに適当に座っておくように促す。ルカは背負っていた棍を立てかけるとテーブルにつく。

「少し待っててね、キリの良いところまでやっちゃうから。……その間に今回の相棒も来ると思うわ。」

リダには仕事を頼みたい、と言われてやって来たのだが相棒がいるとは聞いていなかった。
しかしリダの人選なら何も心配は無いだろう。

しばらく待っていると重たい木のドアが開いた。

「リダー、仕事って……って、ルカさん!?」

「あれっ!?キルア!?それじゃあ今回の相棒って、キルア?」

「そうよ。」

リダは作った剣の柄に石をはめるとようやく一仕事終わり2人に向き直る。

「ほら、キルア君も座って。」

リダに促されキルアも大人しく席に着く。

「それで、仕事ってなんだよ?ちゃんとハンターらしい仕事なんだろうな?」

キルアはどうやらそれを条件に引き受けたらしい。

「もちろんよ。今回2人にお願いしたいのはベンズナイフの捜索及び奪還よ。」

「ベンズナイフの奪還?」

リダが説明をはじめる。それによると、リダが研ぎを頼まれていたベンズナイフが一昨日の晩から見当たらないというのだ。リダは客からの預かり物はそう簡単に盗めるようにはしておらず、しかも一昨日の夜は一晩中起きて刀を打っていた。
それにも関わらず隣の部屋の金庫に入れてあったベンズナイフは盗まれたのだという。

「金庫破りって事ですか?」

「いえ、それが、金庫は開いていなかったのよ。中身も他にも入っていたのだけど、盗まれたのはベンズナイフだけよ。」

リダの考えではおそらく空間転移系の能力のある人間の仕業なのではないか、との事だ。

「盗み、といやぁ盗賊だけど……」

チラ、とキルアがルカを見る。

「えっ!?ち、違うよー!クモじゃ無いよ!そんな能力の人いないし、それに多分皆だったら盗るだけじゃなくてリダさんの事を殺してると思うし!」

「……そりゃ、そうだな。んー、とりあえずその金庫みてみるか?」

「そうだね!ちなみにリダさん、そのベンズナイフって誰からの預かり物なんですか?」

「シルバ=ゾルディック。キルアのお父さんよ。」

「お、親父!?うへぇ……まじかよ。」

「ええ。もちろんシルバさんには報告してある。そしたらキルア君ご指名だった、というわけよ。ルカちゃんを呼んだのはルカちゃんなら表も裏も知り合いが多いからよ。」

「それじゃ、リダさんは今回の盗みが表の人間の可能性も考えてるって事ですね?」

「一応ね。何か理由があるのかも知れないし。」

リダは隣室の鍵を開けながら2人にそう語った。

部屋に入るとすぐに巨大な黒い金庫が目に入った。
「預かり物は皆これに入れてあるのよ。」
リダは素早くロックを外して行く。

しかしそのロックは何重にもかけられていて、更に最後はリダ本人の念にしか反応しない神字の封印がされていた。

「確かにこれで盗めるとは思えねぇな。」

「でしょ。だから空間転移を考えたのよ。けど、そんな念能力者私の知り合いにはいない。ね、お願い!?やってくれる?」

「もちろんです!」

「俺も乗ったぜ!」

こうして2人は共同戦線を張る事になった。


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