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額から噴水のように血が噴き出ていた。フェイタンが先ほど握りこんだククリナイフの切っ先がその脳天を貫いていたのだ。

ただ、単純に、人差し指で切っ先を弾いただけ。それでも彼の念に耐えうる力は女になかった。

「たく、人のこと散々足蹴にしやがて。」

ネオンの腕を乱暴に引っ張ってルカに渡すとすでに死に絶えている女を蹴り飛ばすとルカを振り返る。

「フェイタン!大丈夫!?」
駆け寄ってくるルカ。フェイタンの両手は血に塗れていた。そう、先程ルカに刺された時手を使ったのだ。両手を重ねて胸の前に充て、ルカの攻撃はフェイタンの心臓を貫かず手を貫いただけなのだ。

「問題ないね。」

そう言うがルカはすぐに手当をせねばとフェイタンに向かって翠の夜想曲を使おうとした。しかし
「待つね。先にそいつ送り届けるよ。」
と言われてしまい、確かにフェイタンの手は痛々しい傷はあるが念で覆われていて、今はもう血は出ていない。

「わかった。ネオン様、大丈夫でしたか?」

ネオンに手を差し伸べるとネオンは笑って
「あー、怖かったぁ!!ありがとう!ルカ、フェイタン!」
と言った。流石肝が据わっているとルカは改めてネオンに感心した。そしてフェイタンも、下手したらこの娘は一時期ヨークシンのマフィア界で幅を利かせていた父親よりも余程マフィアとしての素質があるのではないか、と考えていた。

その後ルカとフェイタンはネオンを酒場まで送り届けると、ルカの自宅へと戻って行ったのである。

ライト=ノストラードの心から嬉しそうな顔を見るとなんだかルカも嬉しくなってしまいご機嫌だった。そしてそのご機嫌なルカを見ていたからフェイタンもご機嫌だった。

家に着くとすぐに
「フェイタン、今治すね。」
とルカが治療をはじめる。
「1割くらいでいいね。」

「だめ。全部治す。」

珍しく意思が固い様で有無を言わせない雰囲気がフェイタンに伝わる。

「なぜね?」

一応聞いてみるとフェイタンの予想しなかった可愛らしい答えが返って来たのだ。

「だって、フェイタンの手が痛かったら私を抱きしめてくれる力が弱くなっちゃうかもしれないもん。」

ルカはそう言ったのだ。

「ぷ、何ねそれ。わかたよ、じゃ、8割ね。どちにしてもルカが痛み背負うからそしたらワタシあまり強く抱きしめないよ。だから8割ね。」

「あっ!そうか……フェイタン優しいもんね。うーん、またそこまで考えてなかった。やっぱりフェイタンはすごいなぁ!」

笑いながらルカは念を練って翠の弾を作っていく。

「8割、8割……これ位かな?」

ポイとフェイタンの傷口に向かって投げると同時に刺さる様な痛みが襲って来た。

「いたた……どう?」

「ああ、ちょうど良いね。」

ほぼ治った手でルカの頭を撫でてやるとルカはニッコリと嬉しそうにして、その手を掴むとそのままフェイタンにちゅ、とキスをした。


「ふふ、私からしちゃった!」

「不意打ちね。」

「いつも不意打ちされるから、お返し。」

それから二人はベッドにゴロンと横になると返り血を少し浴びてしまったフェイタンの服を新調する約束なんかをして眠りについた。


───ま、酒場の手伝いも悪いことばかりじゃないね。


フェイタンはそんな風に思った。



〜Fin〜


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