「リオーネ、お前、その男を殺すんだ。」
女が言う。
「な、何言ってるの!!そんな事、できるわけないじゃない!!」
「へぇ、じゃあこっちのお嬢ちゃんは終わりね。」
女の持つ刀の切っ先がネオンの首筋に薄っすらと赤い線を描く。
「ちょ、わ、わかったよ!」
ルカは慌ててフェイタンが地面に落としたククリナイフを手に取った。
しかし
───どうしよう……
手に持ったまま某然としていると
「ほら、早くしな!!」
と言って女が10から逆にカウントを取り始める。
フェイタンはコクと頷いた。やれ、と言うことだ。
───で、でも……でも……
「6、5、4……」
無情にもカウントは終わりに近付く。
「ルカ、良いからやるよ。」
意味深な目に何か策があるのはわかっているが、だからと言ってなぜ自ら大切なフェイタンを刺さなくてはならないのだ。しかしネオンも助けたい、ぐるぐるぐるぐる頭の中で考えている間に、
「2、いーち……」
最後のカウントが響く。
───やるしかない!!
ルカはダッと駆け出した。
そして
グサ……
フェイタンにククリナイフが突き刺さる。
フェイタンはその場にドサ、と倒れた。
「あ、あぁ……」
ルカは後ずさりしながら頭を抱える。
「あーーーっはっはっは!!あんた本当に刺したの?仲間を?あたしが約束を守ると思って?馬鹿なお嬢ちゃんね。」
女の刀がキラリと光る。そしてネオンの首元で横に一閃しようとしてふと止まる。
「その前にちゃんとそいつが死んでるか確認しないとだね。そのあとにお嬢ちゃんにも死んでもらわないといけないし。」
と、言いながらネオンを引きずったままフェイタンに歩み寄る。
「どれどれ?」
ツンツンと靴で蹴る。
落ち着いているのは自分だけだ。と、この女は思っている。しかし実際冷静だったのは、そこにいた全員だった。
ルカはフェイタンが死んでいないことは分かっている。ネオンはルカがこんな事で負けるわけが無い、自分は助かるに決まっている、と100%信じているから。そしてフェイタンは、殺された振りをしてカウンターを狙っているからだった。
つまり、女はむしろ感情的には四面楚歌状態だったのだ。
そんな事は露知らず足でうつぶせに倒れるフェイタンを仰向けに転がす。
次の瞬間、ドシュ!!!とライフルと間違うような音が響いた。
「っきゃ!」
と言ってネオンが後ろに倒れたのは女が倒れたからだった。
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