フェイタンの手が動いたと思った時にはすでにネオンに一番近い場所にいた男の額に深々とククリナイフが突き刺さっていた。

投げたのだ。

ドアを封鎖する男達が驚愕している隙に、ルカが回し蹴りを放って二人同時にその場に倒れる。

「やっぱ10%じゃ蹴りでは殺せないねー。」

明らかにこいつらは強い、クモは確か全員高額の賞金首、そしてA級、本人もルカだと言っている、ってことはこっちが本当にルカ=リオーネ!という式が男達に出来上がったが時すでに遅く、ルカの二撃目が男達の背骨を順番に粉砕していた。


フェイタンの心配も杞憂に終わりそうだ。


「あれ?……あなた賞金首だよね?」

ルカは元々賞金首ハンターだったからわかったのだろう。

「ふ、ふん、なんのことだかな。」

「へぇ、背骨折られても結構喋れるもんなんだ。まぁ良いや賞金首なら殺しても。」

カラーコンタクトのせいで見て取ることは出来ないが口調から想像するに、現在ルカの目はグレーに濁っているだろう。

「ルカ、そいつ賞金首なのか?」
フェイタンからの問いに頷く。

「そう、確か賞金首の賞金首ハンターだったはず。ふふ、立場としては私と同じだね。」

口元は笑っているが、目が笑っていないルカを不気味に感じたのか、男達は押し黙る。

「ネオン様、あなたは外で待っていてくださいね。今、片付けますから。」

再度、片付ける、と言ってフェイタンを見る。

ネオンが外へと出て行くとフェイタンがこくり、と頷いて、男の額に刺さっているククリナイフを引き抜いた。すると、ブシュッと勢い良く血が噴き出る。

僅かに血が掛かってしまったのかフェイタンはチッと舌打ちをしたがすぐにルカが抑える男の1人の喉元を掻っ切る。

同じ様にルカもフェイタンからククリナイフを受け取ると命乞いを始めた男の叫びを無視して首にククリナイフを突き刺した。


「はい、終わり。」

ルカの言葉と同時に外から物音が聞こえた。

「!!」

二人が振り返るとそこにはまたネオンが女に囚われていた。

「ネオン様!」

駆け寄ろうとしたが、

「おっと動くんじゃないよ。この子の可愛い生首を見たくないならね。」

ネオンの首元には刀があてられていた。

「もう一人いたのか。」

フェイタンが睨みつける。

「ふふん、迂闊だったね。クモのお二人さん。そっちの男、あんたヨークシンの地下競売襲った奴だろ?それで、赤毛のお嬢ちゃん、あんたはリオーネだ。」

女はペラペラと勝手に喋り出す。
どうやらルカ=リオーネが青髪だと吹き込んだのはこの女らしい。そして、今しがたフェイタン達に殺された男達はいわば捨て駒。

「はは、やり方が中々ワタシ好みね。ま、ワタシは仲間を売たりしないけど。」

まだ余裕があるのかフェイタンの表情はいつもと変わらない。

ルカは内心ドキドキしていた。
この違いはネオンをどうでも良いと思っているかの違いである。
フェイタンに言わせればネオン自体はどうでも良いのだ。ただルカが助けたいから、奪い返す結論を出しただけだ。

ルカの様子を見るとやはり焦っているらしい。仕方が無い、とフェイタンが話を進める。

「で、お前の目的はワタシ達の首でいいか?」

「ふん、話が早いじゃないか。」

女のネオンの首を絞める腕に力が入る。

「うぅ、く、苦しい……」

「はぁ、全く面倒な女ね。」

フェイタンはククリナイフをその場に捨てる。
しかしルカは見逃さなかった。捨てる瞬間にフェイタンがナイフの先端を僅かに折ってその手に隠したことを。


[ 29/39 ]

[前へ] [次へ]




TOP