「あ、シャル、私帰るね、えっとまた何かあったら手伝うから!」
スタスタと去るフェイタンを慌てて追いかける。
「はーい、……まぁ、フェイタンの目が怖いから無いかもしれないけど。」
というシャルナークのつぶやきはシズクにしか聞こえなかった。
「フェイタンがそんな理由で太刀捨てて行ったのは意外。元々犯罪者だし逃げも隠れもしないとか言うと思ったわ。」
シズクが言うとシャルナークは笑って
「ルカを巻き込みたくないんだろ。不要な戦いにさ。」
と言った。
「あ、そっか!そうだよね。」
そんな会話がしばらく続いた。
「フェイタン、ごめんね?」
シャルナークと手を繋いでしまった事を素直に謝る。
「はは、別に。ルカどうせ断れないね。シャルの性格もわかてるしな。」
「うぅ……よくお分かりで。」
「ま、誰が何したって無駄ね。ルカは離さないよ。」
その言葉に顔が熱くなる。
「うーーー、やっぱりフェイタンといると心臓が煩いよ。私おかしいよー。」
ポカポカとしてくる頬を抑える。きっと今のルカは布団があったら潜りたいと思っているだろう。
「そんなに好きか?」
「す、好きって、もう、そんなんじゃ言い表せない!」
「そうか、それを聞いて安心したね。」
「やっぱり、怒ってる?」
「いや、怒てはいないね。けど、少し、不安ではあたね。」
予想だにしない言葉だった。嫉妬でもなく、憤怒でもなく、不安だと言った。
「ルカ、シャルと仲良いし、同じハンターライセンス保有者だしな、あいつフェミニストだし。」
ルカが絶対に揺らがない事はわかっているが、それでも不安になる時はあるのだ、とフェイタンは言った。
ルカも同じ様に考える。確かに今日フェイタンがシズクと二人で会場に来た時、僅かに不安が過った。しかしルカもフェイタンが揺らがない事はわかっている。
二人、沈黙してしまう。
しかししばらくして
どちらともなく手を握る。
「フェイタン、不安にさせてごめんね。」
「別に、いいね。その位の方がルカらしくて。」
「ありがとう。」
再び沈黙が流れる。
今度話し始めたのはフェイタンだ。
「それにしても、太刀は残念だたね。」
「そうだね、置いて来ちゃって良かったの?」
「まあ、別に犯罪者のあぶり出しに使われたところで返り討ちにするだけだけど、今はルカがいるからな。不要な戦いは無しね。」
フェイタンが言うとルカは
「私なら大丈夫だよ?一緒に返り討ちにするよ。」
と答えた。
するとフェイタンが立ち止まる。ルカも同じ様に立ち止まって見つめ合う。フェイタンは伸びてきたルカの髪を撫でると
「ワタシは血が好きだけど、ルカの血は見たく無いね。それに折角伸ばしたこの髪をまた切られたくないね。」
愛おしそうにルカを見つめ、クイとアゴを持ち上げると口付けた。
目を閉じてその感触を身に刻む。
何度交わしても慣れない感触にやはりフェイタンは特別なのだと再度確信した。
口付けを交わした後はまた寄り添って、帰路につく。
夕焼けに映る二人の影はこれからも続くであろう二人の関係の様に、長く長く伸びていた。
後日、何処かのカメラマンによって撮影されたルカとシャルナークのツーショットにフェイタンが今度は嫉妬した、というのはルカしか知らない。
〜Fin〜[ 23/39 ][前へ] [次へ]
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