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ガンッ!!

細い刀身の太刀が立てる音では無かった。もっとずっと重く、低い音が場内に響いた。

ザワっ、と先程とはまるで違うざわめきが起こる。

「中々良い初撃ね。」

「お手本になる人が傍にいるからね。」

すっかり翠の瞳に戻ったルカが笑う。そんな二人の目がピタリと合った時それは起きた。

ぶつかって交差していた二つの刀身が消えたのだ。

「き、消えた!?」

「これが、ムーラ・マーサが込めた念か。」

消えた刀身、しかしそこには確実に刀の感触がある。しばらく透明の刃で打ち合っていたが、互いに動き、リーチが手に取るようにわかる為二人とも傷一つ負っていなかった。

「こ、これは素晴らしいっ!素晴らしすぎる!この一対の太刀はこの二人にこそ相応しい、皆さんそうは思いませんか!?見えない刀身、しかしそこにはこの二人の揺らぐこと無い想いが見える!」

などと歯の浮く様な事をいう司会者に苦笑いしながら、ルカとフェイタンは打ち合いを終えた。

するとどうだろう、消えていた刀身がスゥッと現れて、何事もなかった様に元通りになった。

「さすがルカとフェイタンだね。」
シズクが言うとシャルナークも感心せざるを得なかった。

「いや、ホント、マジでこの二人、殴りたい程相思相愛。もう笑うしかない。」

とほほ、とため息をつくシャルナークの後ろ、腕時計をしている男を見てルカは思い出す。

「シャル!仕事!もう12時だよ。」

「あっ、やばっ!!よし、行こう。」

肝心なことを忘れていた。

「すみません、私達これから仕事なので、あ、これ、ありがとうございました。置いておきますね。フェイタン、シズク、一緒に行こう?」

ルカは紅鶴をその場に置こうとすると代わりにフェイタンが受け取り、司会者に言う。
「これ、いいな?」
貰っていいのか、ということだろう。

「あ、は、はい、紅鶴、碧鶴を手に入れたのはお二人でした!」

さっさと退散して行く四人、中には太刀をよこせと言う声もあったが、誰かの
「刀は人を選ぶ」
と言う言葉に誰しもが納得せざるを得なかった。



仕事に戻った二人はなんだかんだで参加になったフェイタンとシズクに仕事内容を説明して無事に警備員になりすましていた。
とは言っても二人だけだ。

「じゃ、ルカとシズクはここで待てるよ。」

「はーい。」

「あっ、フェイタン、シャルナーク怒らないであげてね?」

ルカが言うとフェイタンはニヤリと笑った。
「ま、善処するね。」

さっさと奥へ消える二人を見て不安気に見ていると

「大丈夫だよ。なんだかんだで二人仲良いもん。」

シズクがそう言って慰めてくれた。
「そうだよね、いくらフェイタンでもシャルを……」

「殺したりはしないよ。五臓六腑痛めつけられる位だよ。」

「やめてよー!それもヤダよ!」

「ふふ、冗談。」

シズクはたまに真顔で笑えない冗談を言うからドキリとする。
不安は拭えなかったが、昔馴染みだ何も無いだろうと信じて二人を待った。


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