明らかに空気が変わった。
兵士が警戒した様に槍を構える。
「た、たった3人で6人の兵士相手に何ができる!?ヒソカ、裏切るのか?」
「くっくっくっくっ…裏切るも何も、ボクは初めからどこにも属して居ないつもりなんだけどねぇ。より面白そうな方を選ぶだけさ。」
言うなり手にしたトランプをピッと兵士に投げつけた。
トランプは鎧の裂け目から深々と首に刺さり兵士は絶命する。
それとほぼ同時にマチも兵士を糸で槍ごと巻くとギュッと引いた。
槍は即座にマチの念糸で切れ、その首には糸が食い込む。
そして、ルカ。
背負っていた棍を取り出すと、間髪入れずに柄についているボタン押すと、刃を両側出す。
そして2人の兵士の首に同時に引っ掛けると、ボタンを押した。
刃は勢いよく元の場所に収まった。
兵士の首を刈り取りながら。
この攻撃方法はシャルナークが教えたものだ。
「やるねぇ。」
ヒソカがもう1人殺し、マチがもう1人殺す。これでもう兵士はいない。
王は腰を抜かしてだらしなくずりずりと後ずさりをした。
「お、お前ら、何が目的なんだ!大臣側につく気か?目的は何だ!」
王の言葉に冷たく答えたのはマチ。
「目的は金。あんたあたしとの契約書、こいつに改竄させたでしょ。金出さないなら用はないんだよ。金出しそうな方にあんたの首でも献上しておいてやるよ。」
シュルシュルッと糸を巻いた。
しかし念糸だ、普通の人間には見えない糸に王はもがいたが全くの無意味。マチが糸を引く。兵士の時と違って、その糸は王の首が千切れるまで締め付けた。
王の首が転がるとその首を鷲掴みにして
「ルカ、行くよ。」
何事もなかったかの様にスタスタと城を出て行った。
ヒソカも勿論ついていく。
そうして向かったのは大臣側の基地。
まず王と違ったのは、大臣自ら鎧を身につけていた。更に負傷した兵士達の治療を甲斐甲斐しく行っていた。
───なるほど、そりゃ大臣につきたくなる気持もわかるよ。
ルカ達が大臣をみているとその視線に気がついたのか顔を上げる。
「だ、誰だ?」
と聞いてからマチの手にある生首をみて驚いた様に目を見開く。
「土産だよ。」
ポイと大臣の眼前に王の首を投げた。
「こ、こいつは…!まさか、君達がやってくれたのか?」
1番聞きやすそうだったからなのかルカに聞いた。ルカは笑って
「はい、元々王様に依頼を受けて来たんですけど、約束、破ったので始末しました。」
と、答えた。
大臣は王の首を見つめて、ため息をついた。
「この男の為に一体何人の兵が死んだのだろうか…」
ルカはその呟きに疑問を持つ。それから瞳を濁らせたのだ。
感情のない、客観的事実を述べるために。
「謀反起こさなければ誰も死んでないと思うけど。少なくとも、兵士は。でも、戦争なら仕方ない。貴方が気にする事じゃない。大事な者を守るため、人は、死ねるから。」
この言葉はルカ自身がよくわかっている。
フェイタンの為にならフェイタンがダメだと言っても死ねる。
無駄死にじゃない、自分を殺す死ではない。大切な者を生かす死。
そしてフェイタンもそう思っている。
マチもきっとパクノダの様にクロロを生かす為に死を選べる。
ふっ、と翠の瞳に戻すと、またニッコリ笑ったのだ。
こうして、この国の内紛は意外な程あっけなく終わりを迎えた。
ルカとマチは大臣から謝礼金として1億ジェニーを貰った。金額があまり多くないのは、元々負け戦だった大臣側、兵士の治療や、武具の調達で金はあまりなかったのだ。
その代わり大臣が大事にしていた、国を象徴する獅子の紋章が入ったペンダントを貰った。売ればそれにも1億以上の値がつく、とのことだった。
「じゃ、半分ずつね。ペンダントはあたしが売っておくからそしたらまた半分渡すよ。」
マチが言ったがルカは元々そんなに金を欲していない。
「えっ!いいよ!悪いよ。私は全部で2000万位でいいから。」
「まじ?」
「まじ、まじ。そんなお金あっても使わないし、ね?」
「そう?わかった。じゃ、これね。」
と即金でポンと金を手渡した。
「ありがとう!」
───ふふ。これでフェイタンに美味しいご飯でも作ろうっと。
どれだけ高級品を作るつもりなのかは知らないがなにやら嬉しそうなルカを見てマチも嬉しそうにしていた。
「いやぁ、楽しかったよ。じゃ、ボクは行くから。」
「ああ、勝手にとっととどっか行きな。」
「ヒソカ、またねー!」
と女子二人の冷たい言葉を背に受けながらヒソカは去った。
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