小一時間で例の内紛が起きているという国の側までやってきた。

「内紛の理由ってなんなの?」

「さぁ、詳しくは知らないけど、この国にはトップが2人いるらしいんだよ。王と大臣。大臣の方が役職的には下だけど、王の横暴さに嫌気がさした大臣側の兵士と、国に忠誠を誓う王側の兵士の内紛だ、って話。ま、迷惑してるのは国民だけどね。」

絶対王制によくある内部分裂というやつらしい。更にマチは衝撃的な事実を伝える。

それによるとルカと深く関わりのあったリオーネが絡んでいるのだという。

まさか今更になってその名前が出るとは思っていなかったルカが詳しく話を聞くと、なんでも、この国の大臣側に武器を提供する為にマフィアンコミュニティーを仲介していたのがリオーネだったらしいのだ。

「で、今はその仲介役がいないわけだから、戦況的には大臣側が負けそうみたいよ。」

「…そう、なんだ、でもさ、実際国民としてはどっちが良いんだろうね?それに私達が治すのは大臣側?王様側?」

ルカの質問に順番に答える。

「国民は圧倒的に大臣側の支持者が多い。あたし達は王様側の怪我人を治せば良い。」

マチの言葉にルカはやはり素直に受け入れられなかった。要は独裁者の味方をするのだ。

「マチは、どう思う?」

「そう来ると思った。ま、あたしらは金で動くだけだからね。もちろん王側があたしらに何かしてこようとしたら寝返るけどね。」

クモらしい解答にルカはうつむいたが、フルフルと首を振ると
「そうだね!とにかく私達は与えられた仕事をしよう。」
と笑ったのだ。

───強くなったもんだね。

マチも嬉しくなって銃弾を掻い潜りながら負傷兵が集まっているという施設まで向かった。




───うわ、思ったより凄惨。これ治すのかぁ…耐えられるかな。

「ルカは擦り傷程度の奴だけでいいから。死にかけの奴なんかやったらあんたが死ぬだろ。」

ちなみにクモが指す擦り傷程度、と言うのは銃弾2発受けている、位だ。

「わかった。」

マチとルカは施設長に歩み寄ると
「怪我人の治療依頼を受けた者だ。」
と紹介状を手渡した。

「待っていた。それでは1人につき50万ジェニーで頼んだぞ。」

ピク、とマチの目が光る。

「待ちな、約束の額と違うよ。1人1000万で契約したはずだ。」

ところが施設長にしれっとした顔で、
「契約書には書いていない。」
とマチの目の前に契約書を突きつける。

確かに、そこには1人50万と、書いてあった。しかしその文字からは僅かにオーラが漏れていた。

───改竄しやがったな。念で。くそ、やられた。

「…マチ、どうするの?」
「仕方ないね。念の改竄なんて、本人じゃなきゃどうにも出来ないからね。やるしかない。改竄した奴見つけたらただじゃおかないよ。」


嫌々作業に取り掛かったのでルカもその隣で唸っている兵士に近寄った。


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