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「ふーん…」

イルミがドサと依頼人を投げ捨てる。

ズイとルカに近付く。
ルカが驚いて一歩身を引くとイルミはその腕を掴んだ。

───イルミ!?

怖いからじゃない、イルミには世話になったし、やはり嫌いでは無いのだ、突き放せなくて言葉に詰まる。

イルミはルカに顔を近付けると
「俺ね、ルカの人形みたいな灰色の目、好きなんだ。」

イルミの顔が迫って来て目をギュッと瞑った。


チュ


「う…」

額に柔らかな感触があった。

それからフワッと風がふいて、イルミが離れた気配がした。

恐る恐る目を開けるとイルミはすでに投げ捨ててあった依頼人を肩に担ぎ直していた。

「でも、ルカは支配できそうにないや。だから今ので我慢するよ。じゃ、また一緒に仕事しようね。」

それだけ行ってイルミはあっという間にルカの視界からいなくなってしまった。

ルカは額に手を充て

───なに…今の……おでこにキスされたの?私…。

混乱したままフェイタンの家へ向かう。

───イルミは私の事好きなの?それとも支配出来なかったから?…わからない。







フェイタンはいつものように本を読んでいた。読みながら実はルカの帰りを今か今かと待っていた。


「ただいま…」

か細い声。

いつもなら超がつくほど元気に帰ってくるのに、もしや怪我でもしたか?と思って読んでいた本を閉じると足早に玄関へ向かう。

「どうかしたか?元気無いね。」

みたところ怪我はしていない。が、額に手を充てている。

「何ね?タンコブでも出来たか?」

ルカが首をフルフルと振る。

そのまま靴をポイポイと脱ぐと無言でフェイタンにひし、としがみ付く。

「ルカ?どうした?あのイルミとかいう奴に何かされたのか?」

フェイタンの言葉に小さく頷く。

そして
「帰り際に…おでこにキスされた。…ごめんなさい。」
ポツリ、謝罪の言葉を述べた。
フェイタンはルカには怒りは覚えない。ルカには隙がある。それは承知のうえで送り出したのだし、ルカが世話になったとする人間を拒めない事も知っているからだ。

「私を支配したいけど、フェイタンいるから支配出来そうにないからって。」

泣きそうな声だ。フェイタンはルカの頭をポンポンと撫でると額にキスをする。

「ま、それならもう心配無いね。けど、ルカは隙があり過ぎね。次あいつと仕事行く時はワタシも行くね。」

「うん。」

ルカにはとことん優しいフェイタン。

ルカはその腕の中で思った。


───フェイタンになら、支配されても良いな。




〜Fin〜



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