依頼完了を依頼人に報告すると依頼人がイルミに報酬を手渡す。

イルミがそれを受け取った瞬間、ガコンと音がしてイルミが立っている床が抜けた。

「イルミ!」

暗闇に落下して行くイルミ。さほど驚いた様子もなく猫の様な目を光らせたまま、とりあえず落ちて行く。

「あなた…なんの真似!?」

ルカが依頼人に詰め寄る。依頼人はフンと鼻を鳴らして
「生かしておくわけ無いだろう?女1人か、十分だ。」
と言って銃を構えた。ルカはこの依頼人の身勝手さに怒る。

───紅の狂詩曲!

ブワァッと紅い霧が舞い上がる。
「うっ!!」
くるん、と目が反転する。
───なんて奴なの!簡単に裏切って!

ルカは棍棒を握り締める。
───どうする?殺すか…?
なんて事を考えていると、
「ルカ、待って。」
と落ちたはずのイルミが抜けた穴に手をかけてルカを見ていた。
「イルミ!大丈夫だったの?」
死なないまでも驚くほど早く登ってきた。さすがゾルディックと言わざるを得ない。

ルカは手を貸してイルミを引き上げる。

「うん、平気。結構よくあるから、こういうの。」
今回の事も予測していたのだろう。平然と服を数回パタパタとはたいただけだ。

「あの、ごめん、ムカついて気絶させちゃった。」
「いいよ。てか好都合かも。ルカのそれ、致死性無いんだね。」

何が好都合なのかはしらないがイルミは嬉しそうに気絶している依頼人の髪を引っ張りあげる。

「ちょうどもう少しマインドコントロール力高めたいんだよね。こいつ、連れて帰ろっと。」


イルミは依頼人を肩に担ぐ。

しかしイルミのマインドコントロールという言葉にやはり思い出すのはキルアの事だった。

───キルアは、この人に苦しめられていたんだよね…私はイルミ好きだけど、キルアにとっては恐怖の対象だったんだ。

「イルミ、イルミて誰かを支配するのが好きなの?」

聞いてしまった。一歩間違えば地雷。

「支配…っていうか、俺はお人形さんみたいな人間が好きなんだ。自分の手の内で自分の通りに動いてくれる人間。でも、最近はうまくいかない。」

イルミの本質が見えた気がしてゾクッとした。

「ルカだって、彼に支配されてるだろ?」

イルミの思いがけない言葉。

「違うよ。私は支配なんてされてない。私がフェイタンにくっついて周ってるの。」

「けど彼だってキミの事支配したいってきっと思ってるよ。だって俺ですらそう思うんだから。」

イルミの突拍子もない言葉の羅列は続く。


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