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目が覚める。周りを見渡す。ゴミ袋がなくなっている。部屋が綺麗になっている。

「お、おはよう。」
遠慮がちにソファで本を読むフェイタンに声を掛けると、フェイタンはいつもと変わらない様子で返事をした。

「あの、ごめん。ゴミ。」

「別にいいね。ゴミの分別くらい流星街でよくやてたし。」

怒った様子も無く、却って申し訳なさが募る。
「か、代わりに朝ごはん、作る。」
とクウは言った。

以前マチにカレーライスの作り方を教わってからしばらくは毎日カレーばかりだったが、その後もちょくちょくマチに料理を教わり、今では色々とバリエーションも増え、目玉焼きが黒炭になる率も9割位から6割くらいには減った。ウインナーの皮の破裂音に驚いてフライパンの前で固まる事もなくなった。
料理に対する苦手意識も減ってきて、今では本を見ながら忠実に作れるように日々バイトをしながら努力をしているようだった。

「じゃ、お願いするね。」

「よ、よし、うん、任せて!」
いっちょまえにエプロンなんか着けてみて、キッチンに立っている姿だけはもう立派なものだ。

「うわわっ」
「あ、あれ?」
「……やば」

なんていう独り言が時折聞こえるが、しばらくして出来上がったものを見てみると、まあ、いたって普通の朝食が出来ていた。
目玉焼きに、ウインナー、トーストに、サラダ、それと野菜ジュースだ。

「別に失敗してないね。」
「えっ!?あ〜いや、それ。」

とクウがシンクを指差すと、黒炭が3つほど。
どうやら今日は目玉焼き2個作るのに、タマゴを5個使って内3個は黒炭になったらしい。

「はは、ま、上出来ね。」
ポンポンと頭を撫でてやると恥ずかしそうに俯いたが、その後クウは笑って
「次はもっと頑張る。」
と言った。そんな彼女の素直さが愛おしくて、サッと唇を奪ってから
「さ、腹減たね。」
と何も無かったような顔をしてフェイタンは席に着くのである。

朝食を食べ終わると、日課である互いの予定を話す。
とは言ってもクウはいつも通りバイトだ。
最近バイト先を変えたクウは大手の文具工場にバイトとして勤務していた。そこならばピンポイントで製作していた今までのバイト先と違い、様々な文具を製作しているため、一気に具現化できると考えたのだ。
とはいえ部署はある程度固定しており、現在のクウが働く部署は定規の部署だった。普通の定規はすでに具現化できるが、三角定規や分度器のような物から製図用の特殊な定規、洋裁用の特殊な定規など様々なものを作っているそうだ。

「フェイタンは?」
「ワタシは今日は暗殺依頼が1件入てるね。1人じゃ骨が折れそうだからフィンと行てくるね。」
との事だった。
今日中には帰れると思う、という話だった。




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