あの人の為に!〜掃除〜

───えっと、燃えるゴミ、燃えないゴミ……サランラップは燃えないゴミかな?

朝日も昇る前からクウは部屋掃除、というものをしていた。

クウ1人で住んでいた時は家具も無かったし調理器具なんてものも一切無かった。

けれど今はそれなりに人らしい生活を送っている。
フェイタンがいるからだ。

フェイタンは料理もするし、本を読むのはソファに限ると言ってソファも置いた。

当然住む人数が増えればその分ある程度物も増える。
そこでクウは部屋掃除というものをしていたわけだが、クウはゴミ袋を広げたまま部屋の真ん中で止まっていた。


───どれが燃えないゴミなのかわからない。燃やそうと思えば全部燃えるから全部燃えるゴミ?あ、でも流石に缶とガラスは燃えないかな?

考えているばかりで手が動かない。

───そもそもこの部屋って、散らかってるの?別にゴミが落ちてたりは……しないけど。

───掃除ってなに?

最終的にたどり着いたのは掃除とは何か、という事だった。

助けを求めようと、眠っているフェイタンの方を見てみる。

───う〜ん、起こしてまで聞くのは悪いか。



結局クウが取った行動は

「やーめた。」

ポイ、とゴミ袋を投げ捨てて再び布団にもぐりこむ。

するとすぐにフェイタンの手が腰の当たりに伸びてきてぐい、と引き寄せられる。

この瞬間が幸せで仕方ないのだ。

───まあ、掃除はまた今度で良いか。



ちなみに、これでこの状況がかれこれ5回目である。

そして次に目覚めるのはフェイタンである。

フェイタンは良く眠るが、寝起きは悪くない。
パッと、目覚めて身体を起こすと辺りを見回す。
そして、今日もクウが掃除にチャレンジしたのだな、と判断する。

けれどやはり諦めたらしい。今は呑気に隣で寝息を立てている。
育った環境の影響もあるだろうが、それにしても掃除が出来ないとは驚いた。

かといって散らかすタイプでもないので目も当てられないような状況ではない。
それでも人が住んでいる以上チリは積もるし、ゴミも出る。

さて、とフェイタンは布団から出ると顔をサッと洗って、クウが放置したゴミ袋を手に取った。

───ああ、これは燃えるゴミと燃えないゴミの区別がつかなくて諦めたらしいね。

と、クウの心情まで察する辺りさすがフェイタンといわざるを得ない。
クウが断念したらしいゴミをポイポイと分別してゴミ袋にまとめると、アパートのすぐ側にあるゴミ捨て場へと窓から放った。


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