「クウ、マチには何もしなくて本当に良かたのか?」
帰りの道すがら、フェイタンが聞くと
「うん。マチには全然怒ってないから。馬鹿にもされたけど、料理、すっごく丁寧に教えてくれた。だから、怒ってない。」
「そうか。」
「フェイタン、カレー、美味しかった?」
「ああ、美味しかたよ。うまく出来るようになたな。」
ポンポン、とクウの頭を撫でるとクウは嬉しそうに目を細めた。
「でも、一つ、衝撃の事実があった。」
「なんね?」
嫌な予感しかない。
「私、掃除ができなかった。」
「は?」
フェイタンに事情を話すと、フェイタンも確かに、と納得した。
「じゃ、次は掃除の修行ね。」
「うん。でも、料理ももっと頑張る。だって、カレーとかだけじゃフェイタン飽きる?」
「そうだな。カレー以外も作れたらもといいけど、ワタシはクウの作たものなら食べるよ。」
確かに、最近はキッチンにたたせてもらえなかったが、思えば、フェイタンはクウの作った物に対して不満があったというより、クウが後始末できずに皿を何枚も割っていたからのように思える。皿がほぼなくなってきた為だった。
料理については得体の知れない黒い塊が出ようと、スープから魚の目玉が飛び出て来ようと文句は言わずに食べていた。
美味しいとも言わなかったが、まずいとも言わなかった。きっとものすごくまずかったはずなのに。何しろ作ったクウですら吐き気がするほどまずかったのだから。
「フェイタン、何でそんなに私に優しい?」
「なんでて、お前が必死なのがわかるからね。優しくしてるわけじゃないよ。食べ物残すのは作た奴と、食べ物に失礼ね。それにお前味覚は狂てないからワタシがわざわざ味について言わなくても少しずつ修正出来てたよ。」
なんて、悪人らしかぬ事を言っているのも、きっと自分を気遣っての事だと、クウには分かる。
「フェイタン、ありがとう。私、もっといろんな料理作れるようになる。自分のためにも、フェイタンの、為にも。」
「はは、そうか。ワタシの為に、か。それは十分伝わてるよ。」
とフェイタンは懐に入れてあった料理の本を取り出す。
「あっ、そ、それ見た?」
顔を真っ赤にするクウ。見られたことが恥ずかしいのかフェイタンから本をとろうとするもヒラ、とかわされる。
「か、返して。」
「ダメね。こんなお宝ワタシが手放すと思うか?」
「そんなの宝じゃない。」
「ワタシにとてはとても良い宝ね。」
カァっと更にクウの顔が赤くなる。
「けど、料理作る時は使うから返してよ?」
「ああ、いいね。その代わりその間は、こち、預かておくよ。」
フェイタンはグイとクウの手を引いて腰に手を回した。そのままクウの額にチュ、と口付けると
「ま、1番の宝はクウだから、こちがあれば、料理中は2番目の宝は我慢してやるね。」
と笑った。
フェイタンがクウの笑顔に弱いように、クウもフェイタンの笑顔には弱い。クウよりもずっと笑う事の少ないフェイタンの笑顔が本当にクウは好きで好きで仕方なかった。
だからその笑顔を少しでも沢山みたいから………
フェイタンの為に。
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