07


購買からパンを片手に出てくる緑川くんと立向居くんを発見した。おーいと手を振れば緑川くんは同じく手を振り返してくれた。

「今から中庭でリカと春菜ちゃんとお弁当なんだけど一緒にどう?」
「えっと、あなたは」
「自己紹介がまだだったね、私は名字名前。よろしく、立向居くん」
「どうして俺の名前……」
「1限目サッカーしてたでしょ?その時に吹雪くんが教えてくれたからね」

にっこりと笑えば立向居くんは、俺は立向居勇気ですと丁寧にお辞儀する。近くで見ると思った以上に可愛い子だった。緑川くんは1限のサッカーという単語にびくんと反応を示す。どうしたの?それヒロトも見てた?え、うん。緑川くんはどうしようと頭を抱えるがまあいいかとすぐに笑顔に戻りさっと私の手をとった。待たせるわけにはいかないよね、緑川くんはぐいぐいと私を引っ張っていく。立向居くんも行こう?立向居くんははい、と元気良く返事をした。

「遅い!どこ行っとったん?ってなんでそいつらがおんねん」
「いや偶然会ってさ、ご飯ってみんなで食べたほうが美味しいじゃん?」
「そうですよね」
「春菜ちゃん、よくわかってらっしゃる」
「まあええわ。はよ座りや」

円になって座り早速とお弁当の包みを開く。緑川くんと立向居くんはパンなんだけど。

「名前さんのお弁当美味しそうですね」
「せやろ立向居、自分で作ってるんやで」
「なんでリカさんが自慢してるんですか」
「ええやん春菜。細かいとこいちいち気にしよったらあかんで」
「へえ、これ全部自分で作ってるんだ」
「食べる?」
「え、いいの?」
「うん、お菓子もあるし」
「俺もいいですか?」
「あ、どうぞどうぞ」
「ありがとうございます」
「ウチもウチも!」
「リカは全部食べちゃうからダーメ」
「ケチ」

弁当箱を差し出せば緑川くんと立向居くんの腕がおずおずと伸びてくる。美味しい、美味しいです、とまずまずの反応をもらえてほくほくしているところへ更に2本ほどの腕が伸びてきた。

「いいご身分だな、レーゼ」
「バーン、ガゼル」
「……ん?レーゼ?どこかで聞いたことあるような」
「ガ、ガガガ、ガゼル!」
「お前はまあ、有名人だからな」

腕の主は南雲くんと涼野くんだった。レーゼという名前にひっかかりを覚えるが、緑川くんや南雲くんたち、苦笑いを浮かべるサッカー部の面々の反応から追求してはいけない気がした。
その間にもおかずはだんだんと減っていて、気がついたときには1つとして残ってはいなくて白い米だけがむなしく光っていて泣きたくなった。

「俺のパンあげましょうか」
「いいよいいよ、立向居くんが食べなよ。気持ちだけ受け取っておくから」
「結構うまかったぜ」
「南雲のやつが全部食べてすまない」
「てめーだって食ってただろうが!俺だけのせいにすんじゃねーよ」
「ふん」

そういえば2人はなにしてるの?と問いかければ涼野くんがにたにたと南雲くんを見るのに対して南雲くんの顔が不機嫌そうに歪む。

「南雲のやつが突然飛び出すからなにごとかと思えば、」
「てめーも似たようなもんだろ」
「私を貴様を同じにしないでもらいたいな」
「は、それはこっちのセリフだっての」
「やっぱり仲、」
「「よくない」」
「きっちりハモるのにね」
「そういえば、前言っていた本を持ってきたんだが、どうする?」
「本?」
「そ、約束してたんだ」
「教室にあるんだが」
「じゃあ取りに行くよ」

早く読みたいし、と立ち上がりC組に向かう。返すのはいつでもいいから、と差し出された本を受け取た。ついでに南雲くんが差し出す飴もありがたく受け取っておいた。




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