次の授業は調理実習ということもありゆいが友人と連れ立って調理室へと向かっていたところにゆいの姿を見つけたリュウジが嬉しそうな表情を浮かべながら駆け寄ってきた。リュウジはゆいの一つ下の後輩であり、ゆいによくなついていた。どうやらリュウジも移動教室だったらしく、抱えられた教科書類を見るには二時間ほど続けざまにあったことが容易に伺えた。



「ゆいちゃんも移動教室なの?」
「うん」
「なにするの?」
「調理実習」
「調理実習!?」



調理実習、と告げると目をきらきらと輝かせながら少し興奮気味に聞き直すリュウジにそうだよ、と笑えば、リュウジはなに作るの?とゆいの手中のレシピを覗きこんだ。



「でもただのカップケーキだよ」
「カップケーキか、美味しそうだね」
「そう?お菓子の類ってあんまり作ったことないからこんなのしか作れないんだけどね」
「みんなカップケーキ作るの?」
「いや、二時間続きだから作りなれてる子とかはもっと豪勢なものを作るみたいだよ、この子とか」
「え?あたし?」



ゆいからの突然の振りに戸惑いつつも苦笑いを返すゆいの友人。それでも作れるんだから凄いよ!ニコニコと笑うリュウジとつられて微笑むゆいに友人は苦笑いが零れていた。



「みんな必死だよー?」
「どうして?」
「思い思いの人に受け取ってもらえるようにと頑張ってるからねえ」
「例えば?」
「ある程度予想できると思うけど、ヒロトとかかな?」
「ヒロト、か」
「うん、私たちの学年にもヒロトのことが好きって子、結構いるみたいだしね」



リュウジはふうん、と言うやいなや押し黙った。かと思うとねえ、と口にする。



「なに?」
「ゆいちゃんもさあ、誰かにあげるつもりなの?……例えばヒロト、とかさ」
「え?ヒロト?なんで?」
「いや、なんとなくだけどさ。ヒロト人気だ、ってゆいちゃんが言ったからてっきり」
「今のところ誰にもあげるような予定はないけど」



じゃあさ!リュウジの声のトーンが突然高くなった。俺、欲しい!ちょうだい!明るくねだるリュウジにゆいは美味しくないと思うしお腹壊しても知らないよと念を押すもののリュウジは気にしないよと引こうとしない。ゆいは押し負けていいよと口にした。本当に?何度も確認するリュウジにゆいの表情も和らぐ。



「でも私に貰わなくても他の子から貰えると思うけど」
「他の子?」
「私のクラスにもリュウジくんにあげようかな、なんて言ってる子、いたしね」
「でもね!俺ね、今ね、無性にカップケーキが食べたい気分なんだ」
「そう?なんだか嬉しいな、ありがとう」
「……ねえ、緑川くん」



約束を取り付けた二人の間に割って入ったのはゆいの友人だった。黙って二人のやり取りを見ていて思ったことを友人は口にする。



「カップケーキ、が欲しいんじゃなくてゆいが作ったものだから欲しいんでしょ」
「……!」
「ん?何?突然」
「前々から思ってたんだけど、緑川くんってゆいのこと好きでしょ」



ぼっと火が付いたようにリュウジの顔は一瞬にして赤に染まる。え?戸惑いを隠せていないゆいもリュウジ程とまではいかないものの赤みがさした。いや、あの、その、もじもじするリュウジより先に言葉を発したのはゆいだった。なるべくまともに作れるよう頑張ってみるから、ゆいは柔らかな笑みを浮かべた。楽しみにしてるね!リュウジもまた同じように笑った。





おひとつどうぞ





「ゆい、顔、赤いよ」
「うん、わかってる。あついもん」
「あんたら二人なんだか可愛いね」
「はあ?」
「緑川くんのこと好き?」
「わかんない、考えたこともなかった。けど」
「けど?」
「……さっきはなんかドキドキした」





!!!!!
とりあえず緑川可愛い。可愛い可愛い可愛い。





「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -