※アツヤが生きてる
ゆいは士郎が好きなんだと思う。士郎も士郎でまんざらでもなさそうだし、クラスのヤツらがよく噂している。そろそろじゃない?耳をそばだてて話の内容を探る。今年中にはくっつくんじゃない?えー、私吹雪くんのこと好きだったのにぃ、ほらやっぱり士郎とゆいの話だ。俺のクラスでゆいと士郎の噂話は尽きることを知らない。もう付き合ってるんだって、結婚の約束までしてるんだって。……時たま有りもしない噂も耳にする。直接俺にきいてくるヤツらもいる。きいてきたやつらには一応説明してやってはいるが事実あいつらは仲がよすぎるゆえになかなか信じてもらえない。士郎も士郎でゆいちゃんとなら誤解されててもいいかな、なんて言い出すから余計にこんがらがる。あいつに直接きいてる女もいたが、士郎のヤツは空気を読まないのか、いやむしろあえて読まないのであろうがゆいちゃんは誰よりも大切な子なんだなんて言い出しやがったから次の日俺がどんな目にあったか。俺は一生忘れはしないだろう。あの質問攻めの一日を。女って怖い。
その日の夜士郎にきいてみた。平静を装って。なあ、ゆいのこと好きなの?返ってきたのはアツヤは恋愛感情としてゆいちゃんが好きなんだね。そ、そんなわけねえ!俺の反応に士郎はやっぱりね、なんて笑いをこらえてやがった。だ、だれがあんな女!
「アーツヤ!」
「なんだよ、」
「数学の教科書貸して」
噂をすればなんとやらだ。ゆいがやってきた。当たり前のように、後ろには士郎の姿がある。ほら、やっぱりね。こそこそしてもきこえてんだよ。士郎も士郎で気付いていやがってわざとらしくゆいの手をとりやがる。ゆいちゃん早く帰らないとチャイム鳴っちゃうよ。ほんとだ。……イライラする。投げるようにゆいに教科書を渡して机に突っ伏した。後ろらへんでまたこそこそ言う声がきこえて、耳を両手で塞いだ。ききたくねえよ。
休み時間、ゆいが教科書を返しにやってきた。俺は気分が優れないままゆいを見る。あれ、士郎がいない。俺の視線に気がついたのかゆいは士郎はトイレだって、と笑っていた。
「アツヤってなんか勘違いしてない?」
じっと俺を見つめていたゆいの口が開かれた。ゆいは俺の前のヤツの椅子に座る。私、士郎のこと別に好きじゃないよ?友達としては大好きだけどね、付け加えて言う。なにが言いたいんだよ、チャイムまであと五分足らず。
「さっきアツヤ機嫌悪かったからさ、なんでかなって話を士郎としてたらさ、どうもアツヤが私が士郎を好きだと勘違いしてるみたいだって言われてさ。訂正したいなあ、あ、間違えた。しなくちゃって思って」
「ふうん、なんの?」
「いやだから私の好きな人の話」
肘をつき、適当に聞き流そうとする俺の耳はありえない言葉をとらえた。
『私の好きな人は吹雪違いだよ。士郎じゃなくて、アツヤのほう』
あまりにも平静としているもんだから空耳かと思いもしたがもう一度告げられてあろうことか顎を机で強打してしまった。バカだねアツヤ、ゆいは腹を抱えて笑っていた。士郎は知ってんのか?え、相談乗ってもらってるけど?ガヤガヤと外野がうるさい。外野も外野で戸惑っている様子。忘れていたがここは教室である。かあああっと熱が顔に集中した。アツヤ耳まで赤くなってる!うるせえと小突けば暴力はんたーい!とゆいは頬を膨らました。キンコンとチャイムが鳴る。次の休み時間にまたくるね!手を降るゆい。ちなみに本気だからねー、また顎を強打した。
「バカだろアイツ、」
呟いて顔をうずめた。ふーん、俺のこと好きなんだ。でも別に俺はあんな女好きでもなんでもねーし?
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どくんどくん。跳ねる心臓に緩む頬に俺は気付かないふりをした。
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アツヤが好きすぎてやらかした。アツヤ可愛い。タイトルに意味はない。吹雪兄は確信犯です弟からかって楽しんでます。