ねえねえ、つんつんと腕をつつかれてどうしたの?とつついてきた相手、お隣さんの緑川くんに視線を移せば、辞書貸してくれない?と唇が示した。ただいま英語の授業中。英語に辞書は欠かせないものである。忘れちゃって、緑川くんは困ったように笑う。どうぞ、すっと辞書を差し出せばありがとう、すぐ返すねと緑川くんは笑った。


ふと緑川くんに視線を移せば辞書を片手に百面相をしていた。どうしたの?な、な、なんでもないよ!緑川くんはなにかを隠すように笑う。ほんとなんでもないんだ、そう言われると逆に気になってしまうものである。辞書を奪えば、せんせい!緑川くんが大きく挙手をした。体調が優れないので保健室行ってきます!辞書を私の机に置き、すごい速さで飛び出した緑川くんは体調が悪いようには見えなかった。


私の辞書になにしてたんだと確かめるようにぱかりと辞書を開く。好きの文字にピンク色のラインマーカー。私が引くわけない。友人が引くわけもない。じゃあ……?


「せんせ!お腹が痛いので保健室行ってきます」


教室を飛び出した。私が追いかけてくるとは思ってもみなかったのだろう。100メートルほど前をいく緑川くんはこっちを振り向いて、逃げた。
陸上部の脚力を生かし、必死に追いかけるもはやすぎる。緑川君とぐんぐんと距離がひらいていく。
うわああああああ!授業中にも関わらず、緑川くんは声をあげて逃げる。行き止まりまで緑川くんをおいつめたところでこれじゃあまるで私が緑川くんをいじめてるみたいじゃないかとふと思った。
しまった、と私と壁を交互に見つめて呟いた緑川くんはもう逃げられないと悟ったのだろう、そう呟いて観念し、しゃがみこんでしまった。


「なんで追いかけてくるんだよ」
「追いかけたかったから」
「ああ、そうだよ!俺は桜井が好きだよ!」
「なんで怒ってるの?」
「……見ちゃうとかなしだろ」


あーもう消して返すつもりだったのに!ガシガシと頭をかく緑川くん。なんだかすごく可愛らしいくて胸がきゅーんとする。


「でも嬉しかったよ」
「お世辞はいいよ」
「ううん、なんだか緑川くんのこと好きになりそう」


え?顔をあげる緑川くんにリピートしてあげると緑川くんは赤くなった。





!!!!!
いやちょっとなあ。お粗末さまでした。
なんか気に入らん。



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テーマ「人外ファンタジー」
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