>>>>>




俺の彼女は今、俺以外の男に夢中である。要するに虜である。……まあどっちでも同じことか。自分以外の異性に熱い視線を送るという意味で不快なのは変わらないんだし。彼女の思いは伝わらないことは明らかだし、彼女も彼女で割り切っていることは知っている。それでも彼女はあの忌々しい男に夢中なのである。



「あー、やっぱりいいなー」
「あっそ」
「ヤバい、きゅんきゅんする」



ぽややんと腑抜けた顔を浮かべるゆいの頭部を舌打ち混じりにぺしんと叩くとゆいはいいところなんだから邪魔しないでよ、と不機嫌そうな声をあげる。テレビ画面を食い入るように見つめるゆいは、そう、要するに某歌って踊れる男性アイドルのファンなのだ。俺の知る限り、彼女がこれほどまで誰かのファンになることはなかった。好きだと言うことは多々あったが、ポスターを部屋に貼ってみたりテレビを録画し何度となく見返していたりするまではいってなかったはずだ。それが今はどうだ。辺り一面とまではいかないにしろ白い壁にはポスターが貼られている。それをうっとりと彼女が見つめるのである。恋人がいる人は是非とも自分の恋人が自分を放置し、アイドルを優先している場面を。なんとも不愉快極まりないことだろうか。いや、別に誰のファンになろうがそれは個人の自由だし、誰にも阻む権利はないだろう。だがしかし。ここからが肝心なのである。独占欲が強い、ワガママ、そう言われてしまえばおしまいなのだが、黙ってきいていてほしい。確かに俺は独占欲がは強いほうではあると思う。自分のことは棚に上げて、彼女の中に自分以外の誰かが入り込むこと、そのことにもやもやとした気持ちが湧き上がってくる、これは否定しようのない事実なのだ。だがそれが許せたのは彼女の中にちゃんと俺という存在を認識できていたからである。しかしどうだろう。彼女の中には今や俺など見る影もなくなってしまっているのではないだろうか。彼女は俺だけのものではないし、自分の独占欲がまかり通らないことなど重々承知だ。アイドルを見つめる彼女。彼女を見つめるカメラ目線のアイドル。そして一向に構われない俺。……ちょっと悲しいじゃないですか、と。


久しぶりにとれた二人の時間。なにが嬉しくて俺は某アイドルの録画をかれこれ二時間以上見続けているのだろう。一週間前に誘ったデートはコンサートがあるからと断られ、その前も録画し忘れたからと途中で帰られ。……あれ、俺すげー不憫じゃね?俺よりアイドル優先ですか、そうですよね!まあ、彼女も彼女で所詮はアイドル、雲の上の人だと割り切っているだろうし?…………だろう、し。……あれえ、ちょっと不安になってきたぞ。



「なあソイツのことそんなに好きなの?」
「うん!もちろん」
「そっか、……なあ、」




「俺とソイツ、どっちが好き?」
「え、」
「なあなあ」
「……そもそも比べる必要があるの?」
「あるからきいてるに決まってるだろ」










「そんなの、」
「そんなの、佐久間に決まってるじゃん!」

……なら、いいや。






!!!!!
なんぞこれ。




「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -