「もし死んじゃってもさ、霊になって風介に会いにいってあげるからね」




幽霊なんて非科学的なもの私は信じない。いつぞやか彼はそう言った。だから私は決意したのだ。いつか私が死ぬときがきたらそのときは彼の前に化けて出てやろうって決めた。死ぬなんてまだ先のことだと思っていたから私も風介も笑って済ましてしまった。




それは案外早くやってきた。不慮の事故ってやつ。なにが起きたかはわからない。気がついたときには私は霊体となって宙をさ迷っていた。




ああ、私は死んだのだ。それに気がついたのは私の身体がものに触れられないことと泣きはらしは母の目によって。どうして、母は泣いていた。泣き叫んでいた。白い何かに覆い被さる母に触れようとして、気がついた。あれは私の亡骸だ。不思議と私は冷静だった。




ぴょんと空を蹴ればふわりと浮き上がる。あの人の家はどっちだろう。見知った建物を探しながらやっと辿り着いたあの人の家のあの人の部屋は不自然に暗かった。




すり抜けられる便利な身体。電気も付けず彼はベッドに腰掛けて、うなだれていた。風介風介風介、何度も何度も彼の名前を呼ぶも彼はなんの反応も示さない。爆発したような頭に触れようとしたけど私には触れられないと伸ばしかけた腕を引っ込める。




霊になって風介の元にやってきたはいい。だけど肝心の風介の瞳に私は映らない。会いにくると言ったくせに、かすれた風介の訴えた声に心臓が鋭利な刃物でえぐり出されるかのごとく広がる鈍い胸の痛み。




会いにきても私は風介に会えない。風介は私を認識できない。死んでしまったことを怨んだところで私が生き返るわけではない。だけどまだ死にたくはなかった。誰が私が死ぬと予想しただろう。私だってしていない。この先の時間を私という存在が刻むことはもう二度とないなんてそんなの、辛すぎる。




零れない涙が頬を伝う。風介を抱き締めるも、やはり風介を感じられなかった。すり抜けてしまう自分の透けた身体が余計に涙を誘った。




いたたまれなくなって私は風介の家を飛び出した。苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい。どうしてどうしてどうして私が…………、




「もし死んじゃってもさ、霊になって風介に会いにいってあげるからね」




その約束が叶うことはない。あるはずのない心臓が握りつぶされるかと思った。





!!!!!
絶賛スランプ中。BGMをタイトルにしようと思ったが明らかに浮きすぎてしまうからやめ。ちなみにペテン師だぁ?何とでも言えだったり(笑)そこからどうしてこれができたのかは不明。



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