手紙書いたよ




柄にもなく書きあげた一通の手紙。幾度となく書き直してついさっき出来上がったところだ。机の上にはぐしゃぐしゃになった失敗作が積み重ねられている。頭を捻って捻って、そうして書き上げたそれ。俺の思いがぎゅうぎゅうに詰まっていて張り裂けそうだ。可愛らしいペンギンのレターセット。アイツの為に恥ずかしいのを我慢して購入したものだ。半分は俺の趣味なんだけどね。アイツの名前と俺の名前を書き、これで本当の完成品と呼べる。後は渡すだけだ。ふう、と緊張がほどけて気が緩む。たかが手紙を書くだけになに緊張なんてしてるんだか。だけど、されど手紙、なんだよな。


昨日の夜、睡眠時間を削って書き上げたアレは今、カバンの中で眠っている。いつ渡そう。どうやって渡そう。今日の俺、変じゃないかな。まるで女の子みたいだと内心苦笑しながらも意識はずっとカバンの中へ。授業なんて上の空。いつ始まっていつ終わったかなんて記憶にない。自分で書いた文章とペンギン柄のレターセットとが頭の中で交互にぐるぐると駆け回るだけだ。文章変じゃないかなー、考え込んでいたら持っていたシャーペンを思い切り手の甲に刺してしまった。痛い。すげー痛い。僅かにだけど涙が滲んできた。声が出なかったのが幸いだった。

放課後、俺は手紙を持って校内をうろうろ。なんども同じ道を通る。アイツを探し回っているところだった。不審に思われるかも、思われてるかもしれないが致し方ない。アイツのいるところなんて皆目見当がつかないんだから。
やっと見つけた、なんて思ったときにはもう、遅かった。


「え?」


特別教室、そこにアイツはいた。いただけならまだいい。俺の視界に飛び込んできたのは見たくもなかった、思いもよらない光景。アイツは男とキスをしていたのだ。それもよく見知った男と。アイツにふれる男に見覚えはあった。友人だからだ。アイツが俺に優しかったのもなにもかも俺のためじゃなかったんだと気付かされた。俺と仲良くしてたのは本命に近付くためであり、それだけだったのだ。


「なんだよ俺、すっげーバカみたいじゃん」


かすれた声は握りつぶされた手紙が立てる音によってかき消された。フラれたこと悲しさを吹き飛ばすがごとく、裏切られた悲しみが支配する。いや別にアイツらに裏切られたわけではないけれどそれに近しいものに感じてしまったのだ。手から離れた、必死になって書き上げた手紙がひらりとおちる。可愛らしいペンギンは潰れてしまっていた。拾い上げようとかがみ、伸ばした手にぽたり、滴が一つ、二つ。本日、俺は失恋を経験しました。




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テーマ「人外ファンタジー」
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