セイン様がおっぱいプリンなるものを人間界のどこからか入手してきて、面白いだろうと自慢気に鼻を鳴らしながら私に見せてきた。ああそう良かったね、と興味なさそうに呟けばえっ、とセイン様は言葉を詰まらせた。ちらりとセイン様の表情を伺えば信じられないとでかでかと書いてある。おっぱいプリン。それにどう反応しろというのだろう。きゃーと顔を赤らめればいいのだろうか。残念ながら恥ずかしくもなんともないんだなあ、これが。ちょん、と乳首を示すピンク色したシールをちょんちょんと突っついて見ればセイン様が声をあげた。なんでセイン様が顔を赤らめる必要が?ちらちらと自分の手に入れてきたおっぱいプリンと私のごくごく普通サイズの胸とを見比べて余計に顔を赤めるセイン様を訝しげに見つめているとそれに気がついたのだろうセイン様は訊いてもいないのに勝手に言い訳をし始めた。いや別に名前の胸と比べてるつもりはない、なんて。ああそうですか。つまりは比べてた訳ですね。でもそのおっぱいプリンよりは幾分か大きい自信、あるんだけどなあ。
「……名前、」
「ん?」
「……」
「ん?」
「おっぱい」
「おっぱい?おっぱいがどうかされたんですか?」
「触らせ、」
「却下」
「えっ?」
「はっ?」
にたにたとした厭らしい笑みを隠し切れていないセイン様は私の拒絶に頓狂な声をあげた。拒否されるなどとは思っていなかったのだろう。ショックを隠しきれずしょぼんと落ち込むセイン様にギュエールのおっぱいは如何ですかと持ちかければセイン様は勢い良く横へと頭をぶんぶんと振った。ギュエールは痩せてるくせに巨乳という憧れずにはいられない体型の持ち主だし、触るにはもってこいだと思うんだけどな。おまけに美人ときてる。まあ、触らせてくれないとは思うけども。
「私は、」
「……」
「私は名前のがいい」
「へっ?」
「だから、名前のがいいんだ」
私から視線を逸らしながら真っ赤になってぼそぼそと零すセイン様に面食らってこっちまで照れくさくなってきた。名前、私の名前がセイン様の口から飛び出して。ふにんとセイン様の長い指先が私の胸に柔らかく沈み込んだ。珍しく満たされたような表情を浮かべているセイン様に、まあいいかとつっこみたい気持ちを抑える。ぽふんと谷間に顔を埋めるセイン様。
「あの、」
「なんだ」
「そろそろ離れていただけませんかね」
「それはできない」
「何故です?」
「心地いいからだ」
「……さいですか」
なんだかセイン様が可愛らしく思えてきて温もりごとぎゅうっと抱きしめればむっふ、とセイン様は潰れた声をあげていた。
「名前」
「はい」
「……もう一度だけ、」
「ダメです」
こそこそとチャンスだとのぼってくるセイン様の腕を遠慮なくばっと払う。不満気な表情のセイン様にこれ以上は私の特別な人の特権です、と笑顔を向ければ思いついたようにセイン様は息を大きく吸い込んだ。
「ということは名前の特別になれば、触り放題なんだな?」
「……なーんかその言い方引っかかるんですけど」
「ならば私がなろう」
「何にですか?」
「だから名前の特別というやつに、決まってるだろう」
「……嫌です」
「理由を言え」
「そんな不純な動機じゃ、」
「私は、だな」
「……最後まで言わせてくれませんかね?」
「私は、名前のことが好きだ」
「……はい?」
「だから名前に触れたいし、名前の特別になりたいと思うんだと思う」
稀に見る余裕のないセイン様に心臓が擽られたような気がしたと思った時には好きだ名前、とセイン様に抱きしめられた後だった。
!!!!!
セインキャラ崩壊過ぎるwごめんよセイン。好きだよセイン。おっぱいプリン美味しいよね。