明日時間があるならパフェでも食べに行かない?そう名前ちゃんからメールが入ったのは昨日の夜、それもお風呂に入っている間。タオルでガシガシと髪の毛の水気を取る一方でぴかぴかと光って新着メールありと表示されていら携帯電話に誰からだろうと何の気なしにぱかっと開いた俺の目に飛び込んできたのは名前ちゃんからのデートのおさそいだったわけで、思わず携帯を床に落としたのは無理もないと思う。名前ちゃんと俺は恥ずかしながら、彼氏彼女の関係にあった。名前ちゃんは俺より二つ年上で主に俺の部活などの関係上なかなか会う機会を設けることができない。俺が空いている日には名前ちゃんの都合が合わないし、名前ちゃんの空いている日には俺の都合が合わない。スケジュールにことごとく名前ちゃんとの貴重な時間を邪魔されている俺はヒロトが言うには涙目、というらしい。俺たちは丁度昨日からテスト期間に突入したところで明日は土曜日、ヒロトと勉強会でもする?と話が持ち上がっていたところだ。もちろん速攻でヒロトに断りのメールを入れたのは目に見えているだろう。名前ちゃんと最後に会ったのは一ヶ月ほど前。毎日毎日会えない間に飽きられないかなとか丁度不安になっている時期で、そんな俺の精神状況を知っているヒロトは俺のことは気にしなくていいから楽しんできなよ、と快く承諾してくれた。鏡の前であれやこれやとクローゼットの中から服を引っ張り出して一人コーディネートという名のファッションショーに勤しむ。少しでもよく見せるために、と抑えきれない高揚感をすべてそこにぶつけた。ああだめだ。明日を思うと眠れそうもない。なんか俺、女の子みたいだ。

もうきてたんだと小走りで待ち合わせ場所へとやってくる名前ちゃんは相変わらず可愛くて、勇気を振り絞ってそれを正直に告げるも、笑って軽く流されてしまい少しへこんだのは言うまでもない。ドアをくぐり、よく利用する店でイチゴパフェ一つ、とにこにこと嬉しそうに注文する名前ちゃんに続いてチョコパフェ一つと俺も続ける。久しぶりの名前ちゃんとのデートにどきどきして緊張しておまけに声が裏返って私よりもリュウジのほうが何倍も可愛いじゃんと名前ちゃんの口角がにたりと妖しく弧を描いた。

おまたせしました、運ばれてきたパフェを一口含んだところであーんしてあげようかとからかってくる名前ちゃんに吹きだすかと思った。



「リュウジ、リュウジ」

「んー?」

「リュウジってほんと、美味しそうに食べるよね」

「そうかなあ」

「リュウジのそういうところ、好きだな」



穏やかな口調でさらりと言ってのける名前ちゃんに食べていたパフェが気管に入り咽るかと思った。バカねえ、呆れ顔でふうっと息を吐いた名前ちゃんは何事もなかったかのようにイチゴパフェを食べ進めはじめていた。おいしーっと頬を緩ませる名前ちゃんは不意ににこりと笑って、名前ちゃんを穴が開くほど見つめていた俺の半開きの口内にスプーンを勢いよく突っ込んだ。イチゴのジャムとヨーグルト、生クリーム、おまけにバニラの香りが広がる。あ、間接、……!



「照れてるリュウジも可愛いねー」

「俺は照れてなんか!」

「そうやってムキになるところもまじ可愛い!」

「名前ちゃん!」

「あ、ごめんごめん。そうむくれないでよ、可愛いだけだから」

「からかわないでよ、もう!」

「んー、でもリュウジが可愛いのは羞恥の事実だし?あ、あと私がリュウジのこと好きってことも、ね」

「!」

「……ほんと、リュウジって不意打ちに弱いよね」

「……だって、」

「でもそんなところも好きだよ」

「な、なにを……!」

「リュウジは私のこと、嫌い?」

「好きだよ!好きに決まってるだろ!」



がたんと立ち上がり大声を上げた直後はっと我に帰った俺を待ち受けていたのは好奇の目で、客から店員まで皆にやにやした笑みを浮かべていてそういえばファミレスだったなと気付く。ぶわわわわっと毛穴が開きかっと全身が熱を持って嫌な汗が噴き出した。は、恥ずかしすぎる!



「……穴があったら入りたい」



羞恥のあまりばっと両手で顔を覆い隠せば想像以上の熱量がじんわりと汗をかいた手のひらから伝わってきた。身体を縮めて自分のバカさ加減を憂いている間、耳はしっかりと傾けられており周囲の若いわねーとか熱いわねーとかひそひそ声やくすくす笑いをしっかりとキャッチしてしまっている。今すぐにでもこの場から立ち去ってしまいたい。すべてなかったことにしてしまいたい。可能なら店に入る前からやり直したい。



「恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい」



そう呪文のように繰り替えし呟いて伏せる俺の頭に名前ちゃんの指先が触れて優しくぽんぽんと撫でられた。体勢は変えずに顔だけをわずかに上げて名前ちゃんの様子を伺う。リュウジ、と俺の頭を一撫でする名前ちゃんは珍しく頬を染めてはにかんでいた。



「嬉しかったよ」

「へ?」

「リュウジが好き、って言ってくれて」

「名前ちゃん……!」

「好きだよ、リュウジ」



一瞬だけふにゃりと柔らかい笑みを見せた名前ちゃんだったけどすぐにいつもの余裕のある表情へと戻ってしまう。もったいない。好きだよ、畳み掛けるように少し声のトーンを落とし、囁く名前ちゃんはパフェの上に乗っていたイチゴを俺の口内へと押し込んだ。クリームのついた名前ちゃんの親指を舌先でちろりと舐めとれば名前ちゃんは満足そうに微笑んで、俺の舌が触れた自分の親指にそっと、愉しそうな表情を浮かべながらわざとらしく唇を寄せる。その行為に対し、案の定俺はどきんと反応を示したのはしかたのないことなんだ。




!!!!!
なあに、これ。うちの緑川くんはなんというかMっ気が強くなるというかなんというか。




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