ぱか、靴箱を開くと勢いよく飛び出してくる手紙やらプレゼントやら。一体この小さな靴箱にどうやって詰め込まれているのか、ちょっと気になった。あと、こんなんいつどうやって入れてるんだ?とも。だってよ、朝早く、って言っても最近セキュリティが厳しくなってきたしよ。つーことは誰かに知られることなんてお構いなしで入れてんのか?わざわざ入れてくれる女の子たちには悪いけど気が知れねえ。ぜんっぜん知らねえやつからばっか。聞いたこともねえやつからばっか。ヒロトのやつならどうだかわかんねえけど俺や風介からいい返事が聞けるとも限らねえんだしよ。つか、聞けねえだろ、普通に考えて。そういやヒロトに、女の子たちはかもしれないにかけてるんだよと知ったような口ぶりで語られたっけ。ほんとなにアイツ。なにがしたいのかわかんねえやつだし、いちいちうぜえし、勘に触るやつだ。あとヒロトのやつよりか幾分かはましだけど風介も。それは私のセリフだ、言いそう。絶対言うな、風介だったら。それでもなんだかんだ言いつつ一緒にいるのは腐れ縁ってやつなのかもしれねえ。さっさと切れちまえば楽なのにそんなうまい話、あるわけねえし。彼女でも作ったら少しはおさまるんじゃない?……勝手にアドバイスしてきたヒロトには悪いがそうそう簡単にできるもんなら苦労してねえよ。



「あーもうどうすっかな」

「なにが?」

「名字?」

「おっはよう、南雲くん」

「あ、お、おす」

「相変わらず人気者だね、南雲くん」



よっこらしょと反動で足元に散らばった手紙類をしゃがみ手伝うよと拾う名字になんでもいい、返事しねえととおっさんみてえと口をついて出てきた言葉に名字は嫌な顔一つせず険しい顔が和らいだみたいでよかったよと逆に笑い返されて面食らう。俺そんなにひでえツラしてたのか?と顔にそっと触れれば嘘だよと吹きだす名字がいた。……なんか楽しそうだからまあ、いっかな。



「ねえ、南雲くんって彼女とかいるの?」

「い、いねえよ!」

「へえ、なんかもったいないな」

「もったいない?」

「だって南雲くん、勉強はうん、イマイチだけど運動できるし、かっこいいし」

「……!」

「なーに顔真っ赤にして照れてるのよ」

「て、て、照れてねーよ!」

「ほんっと立候補したいくらいだわ」



……今なんて?さらりと言い放った名字の言葉にせっかく集めた手紙を床にぶちまけてしまった。ああもうせっかく集めたのに!文句を並べる名字。いや今はそんなことどうでもいい。それより名字、さっきなんつった?



「りりりり立候補?」

「ちょっと南雲くんの声耳に響く」

「う、うるせえ!」

「いやうるさいのは南雲くんだから」



しっかりしてよとため息をつきながらぶちまけた俺宛の手紙を手際よく集める名字を横目に俺の脳内はショート寸前だった。話の流れからして俺の彼女ってこと以外は考えらんねえし。……俺もそこまでバカじゃねーよ。でも名字のことだから冗談だという可能性もありえる。なんで俺だけこんなに乱されなきゃなんねえんだよ、ちくしょう。



「ど、どうせいつもの冗談だろ!その手にゃ乗んねえぞ!」

「南雲くんはどっちがいい?」

「はあ?」

「本気と冗談どっちがいい?」



名字が俺に向き直る。名字のことは嫌いじゃない。ていうかその逆だ。いつからかはよく覚えてねえけど、ずっと名字といたいと思うようになった。だから冗談になんかしてほしくないし、本気で言ってくれてんならそれはそれでありがたいんだけど。つーか本気で言ってくれてねえと報われねーし。



「まあ、こんなこと冗談で言ったりしないし前向きに考えといて」



さっと俺の横をひらひらと手を振りながら通り過ぎた名字の背に向かって声を張った。



「そのなんだ、これからよろしくな、名字!」



くるりと振り向いてはにかんだ名字ににやけてるよと指摘されて自分の頬が緩んでいたことに気がついた。そりゃ緩みもするだろう。そういう名字だって緩々じゃねーか。





!!!!!
きっとみんなモテモテのはず




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