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中庭に着くと萩原が口を開く。
「昨日二次会メンバーと別れてから、陣平ちゃんと2人でどっか行ったんでしょ。そこで何かあった?」
『昨日あの後どこ行くか話してたら、松田が俺と2人で意識してんの?って言われて、無意識に』
「無意識に?」
『松田の事好きなんだから、意識しない方が無理に決まってるって、気づいたらそう言ってました』
昨日の事思い出しただけでも、穴があったら入りたい気分だ。
「それでそのまま陣平ちゃんを置いて、帰っちゃったんだ」
『うっ。だってあんな道の真ん中でなんて。本当はもっとちゃんとした場所で、告白するつもりだったのにー』
「あいつすげぇ心配してた。みょうじちゃんが1人で帰って、電話も出ないしメールも送ったけど返事なし。俺なら連絡したら返事くるかもだから、頼むってお願いされて。俺も心配だったし連絡したんだけどねぇ」
『ごめんなさい。帰った後爆睡してました』
「俺はいつでも女の子の味方だけど、こればっかりは松田に同情するわ」
『返す言葉もございません』
「ちゃんと話す事。約束出来る?」
『うん』
「もう1回告白してそのまま、陣平ちゃんを押し倒しちゃえ」
『押し倒す!?そ、そんな事しない!』
萩原は何言ってんの。松田を押し倒す所を想像する。押し倒されて顔が赤くなる松田とか良いかもなんて。いやいや何考えてんのよ。
「顔赤くなっちゃって。ナニを想像したのかなー?」
萩原がニヤニヤしてこちらを見てくるから一発お見舞いしてやった。後ろから「痛い」と言う声を無視して先に教室に向かった。
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