Precious memories

08

今日は東都水族館に松田と行く。久しぶりの水族館にわくわくしていた。この日の為に購入した服の中から私はストライプ柄の切り替えワンピースを選んだ。せっかく出掛けるんだしどうせなら化粧もしよう。

待ち合わせ時間の10分前に到着すると松田がすでにいた。松田の格好はデニムのジャケットに白のTシャツに黒のズボンとシンプルな服装だった。ほんとイケメンって何着ても似合うから羨ましいなー。写真撮っちゃえと携帯を取り出し私はカメラを起動し写真を撮った。松田はこちらに気づいたみたいで

「おい、堂々と盗撮するとは大したもんだなぁ。現行犯逮捕すんぞ」

『あ、バレた?』

「俺を誰だと思ってんだよ、警察官なめんなよ。つーか撮ったやつ今すぐ消せ」

『えー。せっかくのイケメンなんだから減るもんじゃないし、いいじゃん。今日の松田、格好良いのが悪い』

「なっ、そーゆう問題じゃねぇんだよ」

松田に携帯を奪われて写真を消された。何てことしてくれたんだ。貴重な松田の私服姿が。

『あー。消された……』

私がしょぼくれていると急に松田に肩を抱き寄せられ携帯を構えたかと思うとカシャっという音がした。あれ?今写真撮った?

「ほらよ」

松田から携帯が返される。

「盗撮されんのは困るけど、ツーショットならいい」

なんだこのイケメン。最高かよ。

『ありがとう、松田』

私がにっこりと笑えば松田は少し照れくさそうにしていた。あっ可愛い。

『あっれー?陣平ちゃん照れてる?』

「照れてねぇ!それと萩みたいに、陣平ちゃん呼びはやめろ」

いや説得力ないよ。だって顔赤いし。

「もういいだろ。早く行こーぜ」

そう言って歩いていく松田。
あんまりからかうと機嫌を損ねそうなのでやめる。

『あっ、ちょっと待ってよ』

すると松田は何か思い出したかのように私の所まで戻ってくる。どうしたんだろ?

「今日のみょうじの格好すげぇ似合ってる」

『は!?』

急に褒められて。自分でも顔が赤くなるのが分かる。不意打ちは反則。ダメ、絶対。

「どーしたんだよなまえちゃん。もしかして、照れてんのか?」

さっきの仕返しとばかりに不敵な笑みを浮かべながらこちらを見てくる松田。

『別に照れてないし』

自分がイケメンだという事もっと自覚してほしい。今日私の心臓はもつのだろうか。もしかして今日が命日に……。笑えない。

「おい!ボーッとしてどうした?気分でも悪いのかよ」

松田が心配そうにこちらを覗きこんでいる。

『大丈夫。心配してくれてありがとう。ほら、早く行こう?』

「なら、いーけどよ」

さっそくチケットを係員の人に渡し中に入る。
私達はパンフレットを見ながら

『どこから見て周る?』

「ならこっから見て周ろうぜ」

色んな魚がいて見ていて楽しい。あっあの魚なんか松田にそっくりだ。くすくす笑っていると隣にいた松田がこいついきなりどうしたんだという目をして見てきたけど気にしない。今日は休日ということもあり人が多い。松田の足は長いから私と歩く歩幅も違う。どんどんと先にいくからこのままだとはぐれてしまうと思い咄嗟に松田の袖口を掴んでしまった。松田はびっくりした顔で振り返る。

「悪い、歩くの早かったか?」

『ちょっとだけ。ごめん、はぐれちゃうと思って袖口掴んじゃった』

「こーすれば、はぐれねぇだろ?」

そう言って松田が手を繋いできた。今日の松田は私をどんだけドキドキさせるんだよ。なんか恥ずかしい。手汗大丈夫かな。ちらっと松田の顔を見ると恥ずかしそうにしていた。余計意識してドキドキしちゃう。落ち着け私の心臓。

『ねぇ、イルカショーあるんだって。見に行きたいんだけどいい?』

「あ?イルカショー?別にいーけど。午後からなら先に飯食おうぜ。腹減った」

『そうだね。私もお腹減った!』

ご飯を食べた後イルカショーを見にきた。お姉さんの指示でジャンプしたり背中に乗せたりしているイルカは賢いし可愛いなー。私はショーが終わるまで夢中で見ていた。

「お前すげぇ真剣に見てたな」

『ちょっと、私じゃなくてちゃんとイルカショーも見てたんでしょうね!?』

人の顔なんてみずにちゃんとイルカを見ろ。イルカを。

「…………ちゃんと見てたに決まってんだろーが」

『なら、いいけど』

その間はなんだ。そうだ、せっかくだし職場の人や零とヒロにお土産でも買って行こうかな。

『お土産買いたいからお土産コーナー寄ってもいい?』

「おう」

どれにしようかな。職場の人達にはお菓子にするとして零とヒロにはどうしよう。あっこのイルカのキーホルダー可愛い。家の鍵につけたい。でもみんなのお土産を買うから予算的に厳しい。また来たときにでも買えばいいか。手に取ったイルカのキーホルダーをもとの場所に戻しみんなのお土産をレジに持っていった。お土産コーナーの入口で待っていた松田に声をかける

『ごめん、お待たせ』

「ちょっと買い忘れ思い出したから、そこで待っててくれよ」

『え?分かった』

私が待ってると数分もしないうちに松田が戻ってきた。

「悪い、じゃあ行くか」

お互い明日仕事がある為、まだ夕方ではあるが帰ることになった。まだもう少し松田と居たかったな。
あれ?私何でこんなこと思ってるんだ?そうだ今日いつもの松田と雰囲気が違うからだ。きっとそう。
駅まで行くと当たり前のように松田も私の乗る電車に乗っている。

『松田こっちじゃないでしょ?』

「家まで送らせろ」

『でも明日仕事でしょ?』

「変なとこで遠慮してんじゃねぇよ。俺がしたくてしてんだ」

『ありがとう』

「そーそー。最初から素直にそー言え」

『私はいつでも素直ですー』

「はいはい。言ってろ」

『そういう松田だって素直じゃないくせに』

「俺だっていつも素直だろーがよ」

『はいはい』

「てめぇ」

頭を勢いよく撫でられて髪がぐしゃぐしゃになる。

『ちょっと!髪ぐしゃぐしゃになったじゃない!』

怒って松田を見る。

「ぷっ、お前髪鳥の巣みたいになってんぞ」

腹痛ぇと言いながら可笑しそうに笑う。
そんな松田を見て笑った顔見れたからまあ良いかと思ったのは秘密。

『誰のせいよ』

そう言いながら私は髪を元に戻す。喋っているとあっという間に家の前に着いた。

『今日は楽しかった。送ってくれてありがとう』

まだもうちょっと一緒に居たいって思ってしまった。
今日の私やっぱり変かも。
それもこれも今日の松田がいつもより格好良く見えるからだ。

「帰るのちょい待て」

松田が紙袋を私に渡してきた。

『これは?』

「お前欲しそうにしてたろ」

『え?』

欲しそうにしてた?私が渡された袋を開けるとイルカのキーホルダーが出てきた。もしかしてお土産コーナーで買い忘れがあるって言ってたのはこのため?

『松田!ありがとう、大好き』

嬉しすぎて松田に勢いよく抱きついた。
キーホルダーを欲しそうに見てたのがバレてたのは恥ずかしいけど嬉しさのほうが上回っていた。

「おわっ、お前急に抱きついてんくんな。びっくりするだろ」

『ごめん、嬉しくてつい』

「まぁ、そんだけ喜ぶんなら買った甲斐あったな。おい、そろそろ離れろよ」

あ、私今松田に抱きついたままだった。松田から離れる。
松田を見ると複雑そうな顔をしていた。

「あのな、男に抱きついたり好きとか簡単に言ったりするのやめろよ。勘違いするだろ」

『なんで?松田と私は友達でしょ?』

「はぁ……。分かってねぇならもういい」

『?とりあえずキーホルダー本当にありがとう』

「あぁ、じゃあな」

帰る松田に思わず手が伸びそうになり、グッとこらえた。
ダメダメ、私今何しようとした?

「どうした?」

今松田の顔を見たら私はきっと言ってしまう。そしたら松田を困らせる事になるかもしれない。
だから私は何事も無いように振る舞う。

『何でもない。気をつけて帰ってね!それじゃあ』

一刻も早く立ち去らなければと思い出た言葉。あからさまにおかしいのが丸わかりだったかな。そう思いながら松田の顔を見ずに部屋に帰ろうとしてたのにいつの間にか腕を掴まれていた。

「急にどうしたんだよ」

『どうしたって、別になんでもないよ?』

「何でもねぇだ?明らかに様子が変だろ。俺なんか気に障る事言ったか?」

『違う』

「じゃあ、今日出かけて楽しくなかったとか?」

『そんな訳ない!』

楽しくなかった訳ないじゃん。
息抜きも出来たし、大好きなイルカも見れたし、なにより気の許せる友人と一緒に居て楽しくない訳ない。でも言えないよ。

「なんで黙りなんだよ。そんな顔する理由聞かせろって」

『そんな顔って?』

「……泣きそうな顔」

だってこんな感情初めてで自分でもどうしたらいいか分からない。
困らせたくなくて言えないのに今まさに松田を困らせている。
なんて言えばいいの。
もし正直に言えばどうなる?
きっと優しいから私に付き合ってくれるのかな。
それとも困らせちゃうかな。
頭の中がグチャグチャでもうどうしたら良いのか分からない。
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -