潜入捜査中に
媚薬を飲んじゃった主人公続
あれから陣平の車に乗って私達の住んでるアパートに帰った。
「とりあえず、なんか飲むか」
『それなら私入れるよ』
「いーから、お前は座ってろ」
そう言って私を無理矢理ソファーに座らせた。
とりあえず私は陣平が肩にかけてくれたジャケットが皺にならないようにハンガーにかけておいた。
「ほら」
『ありがとう』
ココアの入ったマグカップを受け取る。
『おいしい』
「インスタントだけどな」
『陣平が入れてくれたから、おいしさ倍増なの』
「おーそりゃ良かったな」
優しく頭を撫でてくれる。それだけでまた泣きそうになる。
「俺は萩みたいに、女の気持ちとか察してやれねぇし、ちゃんと言ってくれなきゃ分かんねぇんだ。なまえが泣いてた理由俺にぶちまけてみろ」
『ちゃんと、話すよ。でも、嫌いにならないで、ね』
「あのなぁ、俺がお前の事嫌いになるなんざ、ありえねぇよ」
『……うん。あのね、今日潜入捜査があって、ターゲットは有名な大企業の社長だったの。情報を聞き出す為に、近づいて部屋に行って、それから……それ、から』
陣平は黙って私の話を聞いてくれている。その先を言うのが怖かった。私を嫌いになる訳ないって言ってくれたけど、私は怖いんだ。思い出すだけで吐き気がする。手に力が入りドレスが皺になるのも気にせず握りしめていると陣平の手が私の手を優しく撫でる。
「手、力入れんな。ゆっくりでいい」
『っ……そのあと、媚薬の入った、ワインを、知らずに飲んじゃって、私、社長にっ』
陣平の手がピクッと動いた。さっきあんなに泣いたはずなのに涙がまた溢れる。怖くて陣平の顔が見れない。
「……ムカつく」
『ごめん、なさいっ』
「ちげぇよ。お前にじゃない。なまえに触れた男と好きな女の近くにいて、守ってやれなかった俺に対して、だ」
陣平は本当に優しい。私の事本気で想ってくれているのが分かる。
「そいつにどこ、触られた?」
『首筋、舐められて、あと、胸触られた……』
「クソッ、今すぐそいつを殴ってやりてぇぜ。他は?」
『大丈夫、急所蹴って、背負い投げしてやったから』
「よく、頑張ったな。俺が消毒して上書きしてやるよ」
そう言って首筋を舐められる。
『だめっ、私、汚れて……』
「どこが汚れてんだよ、お前は綺麗だ」
『でもっ』
「お前は俺の事だけ考えて、俺だけを見てろ」
首筋にチクッとした痛みが走る。
「俺のもんって印」
『こんな見える場所に、ばかー!』
「おーおー、見せつけとけ」
『もう!……私も、つけていい?』
「おっ、なら見えるとこに頼むわ」
なんでそんな余裕なのよ。昔付き合ってた彼女にもそんな事言ってたのかな。ムカつくから思いっきり吸ってやったのに全然痕がつかない。
「下手くそ」
『むぅー』
「あからさまに拗ねんなよ」
『だって』
「昔の女になんか、んな事してねぇし、言ってもねぇよ」
『なんで、分かったの?』
「顔に出てるぜ」
恥ずかしい。これでも潜入捜査してる身だし顔に出ないようにするの得意なはず、なんだけどな。
『陣平、いつも余裕そうだし。だから』
「お前相手だと、余裕なんかねぇよ」
『そうは、見えないけど』
「なら、俺の方が演技は一枚上手だな。いやお前が鈍感なだけか」
『そんな事ないし』
「いや、そんな事ある。つーかいいのか?俺がお前のもんだって印つけなくて」
『上手く、つけれないんだもん』
「とりあえず、さっきみたいに吸ってみ?」
見える場所はさすがに抵抗があったから目立たない場所に吸ってみる。
「何回か同じ場所吸ってみろ」
『んっ、痛くない?』
「全然、痛くねぇよ。どうだ?」
陣平の首筋に赤い印がついていた。
『ちゃんと、ついたみたい』
「やれば、出来るじゃねぇか」
そのまま陣平と少しの間、見つめ合うと目を閉じる。キスを合図に押し倒された。