潜入捜査中に
媚薬を飲んじゃった主人公

※Precious memories連載主で松田さんと付き合って同棲してる。
モブと少しエロありなので注意です。


私は今潜入捜査中でターゲットの社長に近づく為に、パーティー会場にいた。胸元と背中がざっくり開いた紺色のロングドレスを着ている。髪もアップしてるし胸元と背中もスースーするし落ち着かない。さっきから話かけてくる男の人達はボディタッチも激しいしニヤニヤしながら私の胸元に視線を向けていて気持ち悪い。
早く帰って陣平に癒やされたい。ってダメダメ、これは仕事なんだから我慢よ。私だって嫌だけど、ターゲットの社長は男性だから、女の私が近づく方が怪しまれない。
何かあれば一緒に潜入している、風見に連絡を入れろと零に口酸っぱく言われたから、いざとなったら風見さんに助けを求めればいい。
そう思っているとパーティーの主催者でもあるターゲットを見つけた。私は近づくと彼に声をかけた。

『こんにちは。初めまして、私社長の書いた小説の大ファンなんです』

「こんな美人な方に私の書いた、小説を読んで頂けるなんて、嬉しい限りです。この後良かったら私の部屋でお話でもしませんか?」

肩を抱き寄せられる。

『っ』

「おや?もしかして緊張していますか?」

違います。あなたに触られて拒絶反応が出ただけです。心の中でそう呟きながらも顔に出ないように演技をする。

『えぇ、だって。大ファンの社長が目の前にいるので、緊張もしちゃいます』

「そう固くならないで。さぁ行きましょうか」

部屋に到着し中に入る。相変わらず肩は抱き寄せられたままだ。重要な情報を上手く聞き出してさっさと終わらせよう。

「ワインはいかがですか?ちょうど年代物があるんですよ」

『わー、ワイン私好きなんです』

「それは良かった。準備しますので、少しお待ちください」

大好きなワインが飲めるのはラッキーかも。
しばらくすると社長がワインの入ったグラスを持ってくる。

「お待たせしました。それでは乾杯」

『乾杯』

ワインを口に入れるとマイルドですごく飲みやすかった。

「このワインすごく飲みやすくて美味しいでしょう?」

『はい、このワインならいくらでも飲めます』

「気に入って頂けたようで、なによりです。まだまだありますから、遠慮せず飲んでください」

社長はすっかり良い気分になったのか公安が知りたい情報をベラベラと喋ってくれた。
これであとは適当に理由をつけて帰ろう。
そう思っているとだんだんと自分の身体が熱く、息が苦しくなっていた。ワインの飲み過ぎかな?

「どうされました?気分でも悪いんですか?」

私は身体に触られ思わず声が出てしまった。

『あっ』

身体が疼いてくる。もしかして……。

「おや、思ったよりも効きが早いですね。お察しの通り媚薬をあなたのワインに入れました」

『ど、うして』

「あなたの乱れる顔が見たかったからですよ」

私の耳元でそう囁く。

『や、やめてっ』

「可愛い反応をされますね。そういう反応はかえって逆効果ですよ」

私に触れてくる手が気持ち悪いのに身体が反応してしまう。首筋を舐められドレスの上から胸を触られる。

『んっ、は』

「感度も抜群でスタイルも良い。最高だ」

力が上手く入らないが、このまま好きでもない男に抱かれるなんてごめんだ。私は思いっきり足に力を入れ男の急所を蹴り上げる。

「うっ、な、なにをするんです」

『気持ち悪い手で触らないでっ』

最後に背負い投げをお見舞いしてやったら相手が伸びて気を失った。急いで風見さんに電話をかける。

『はい、風見です』

「ターゲットから情報を聞き出せました」

『お疲れ様です』

「その、ターゲットが伸びて気を失っているので、後の事お願いしても良いですか?」

『了解しました。あとはお任せください』

「すみません」

『いえ、大丈夫です。部下の仕事ですから』

電話を切るとこの場から一刻も早く出たかった私は早足でホテルを出た。風見さんには感謝しないと。陣平、ごめんね。私こんな汚い身体で陣平の所に帰れないよ。

『ふ、うっ』

涙が溢れてくる。こんな時間にドレスを着た女が泣いて歩いてるとか完全に不審者だ。今日陣平には仕事が長引いて帰れそうにないって連絡を入れてどこかホテルでも泊まろうかな。触られた場所が気持ち悪くて早く洗い流したかった。ドレスのままだから着替えも買わないと。少し落ち着いた私は服を買いに向かおうとした時だった。

「なまえ?」

『……陣平』

このタイミングで陣平に会うなんて最悪だ。今陣平の顔みたら泣いちゃう。

「どうしたんだよ、その格好。あー、潜入捜査か?」

陣平が自分のジャケットを私にかけてくれた。

『……うん』

「おい、何があった」

『っ……なん、でもない』

泣いてる事バレたくないから顔上げられない。

「なんでもねぇなら、顔上げて俺の顔見てそう言え」

『嫌』

「泣いてる理由は?」

『泣いて、ない』

「なら、今すぐ顔上げてみろ」

『無理』

陣平に嫌われたくない。急に陣平の両手が私の顔を挟むと顔を持ち上げられる。

「ほーら、やっぱ泣いてんじゃねぇか」

『うーーっ』

「泣いてばかりじゃ、なんも分かんねぇだろーが」

『じんぺっ、きらいに、ならないでっ。わたし、わかれたく、ない』

「は?おい、なにがどうなったら、別れるなんて話になるんだよ」

『だって、わたし』

「ちょっと、松田くん!急にいなくならないでよ。目を離すとすぐどっか行くんだから……あれ?なまえさん?」

声をした方を見れば美和子ちゃんがいた。観覧車事件の後連絡先を交換しときどき一緒にお出かけしたり食事に行ったりと美和子ちゃんとは仲良くなっていた。

「まさか、松田くんが泣かせたんじゃないでしょうね?」

「ちげぇよ。俺じゃねぇ」

『ちがうの、みわこちゃん。わたしが、わるいの。わたしが、かってにないて、じんぺいを、こまらせてるだけ、だから』

「悪い佐藤。泣いてるこいつほっとけねぇから、先帰るわ」

「貸しだからね?」

「おう、悪い助かる」

「ほんとなまえさんの事になると、素直になるんだから」

「うるせぇよ」

でも仕事中の陣平に迷惑をかける訳にはいかない。それに美和子ちゃんにも迷惑がかかる。

『で、でも。じんぺい、しごとちゅう、なんでしょ?』

「佐藤1人でも大丈夫だろ」

「なまえさん、気にしないでください。泣いてるなまえさんをほっといて、仕事に戻るようなら引っ叩いてやろうと思ってましたから」

「怖い女だな」

「あら?何か言ったかしら。私に貸しがあるの忘れたの?」

「へいへい、感謝してんぜ。なまえ行くぞ」

陣平が私の手を掴んで引っ張る。

『まって。みわこちゃん、ごめんね』

「いえ、落ち着いたらまたご飯にでも、行きましょうね」

美和子ちゃん美人だし仕事出来るし優しいし最高じゃん。

「近くに車止めてるから、そこまで歩けるか?」

『だいじょうぶ、ありがとう』

私は陣平の手をギュっと力を入れて握りしめた。何も言わなかったけど強く握り返してくれた。こんな私が陣平の隣にいていいのかな。でも嫌われたくないし別れたくない。どうしようもなく陣平の事が好きなんだ。



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