In my room |
「御幸!!起きろ起きろ起きろーっ!!」 「……っせ…。朝から元気な、お前…。」 「早く起きろよ!今日!お前が!飯当番!」 「んー…、さわむら作ってー…。」 「ふ ざ け ん なっ!この前もその前も俺に押し付けやがって…!」 「…その分ゴミ出ししたし、皿洗いもしただろー…。」 「何だお前!俺のこと飯炊き小僧とか思ってんじゃねぇだろうな!?」 「沢村、俺、先輩。あとうっせぇ。3時間したら作ってやるよ。それまで冷蔵庫の中の豆腐でも食っとけ。」 「お!き!ろー!」 再度布団を被り直してまた夢の中へと旅立とうとする体を大きく揺さぶっても御幸は頑なだ。 朝飯なんて正直自分で作ってしまった方が御幸を起こすより楽な気がしたけどもう俺としてもなんかムキになってきた。 大体!「明日8時に起こして」っつったのは、お前だろーがっ! 「おーきーろー!!」 布団の上から御幸の体に乗っかって全身で揺すると御幸はゆるりとその焦げ茶の瞳を開けた。 「…お前、同居人っつーより嫁みてぇ。」 「あんたがこんなに手間かからなかったら俺だってこんなうるさくねーよ!」 「…ふーん。もっと手間かかったらもっと構ってくれんだ?」 「は?何?何だって?」 「…なんでもね。」 「あー!また寝る!」 体から布団を引っぺがすと御幸は少し寒そうに眉間を寄せた。 □■ 今からもう三ヶ月前くらいに遡る。 六ヶ月、住み慣れたおんぼろアパートの大家さんからの突然の勧告。 「………え?」 「だからね?ほら、うち今沢村くんしか住人いないでしょ?それで、もうこのアパート潰して駐車場にしようと思うの。」 「えっ!?え、え!?な、なんすか、ソレっ!?」 「ごめんなさいねぇ。沢村くんの次のアパート決まるまで、施工進めたりはしないから、決まったら連絡くれないかしら?」 「え?え?」 「でもそうねぇ。出来れば二ヶ月以内だと助かるわぁ。」 「ちょ!お待ちを!」 にこにこと。それでいて意外に押しの強い大家さんはずっと笑顔のまま、テンパりつつ抗議を続ける俺の訴えをさらりとかわした。 そっからはもう毎日住宅情報誌との睨み合いだ。 「うー…。」 学食で情報誌を眺めながら頭を抱える。 確かにあのアパートはぼろいし狭いしエアコンも無いし、大学からも少し遠い。 だけど家賃が破格の安さだった。 「あ゙ー…、」 ない。どれだけページをめくっても俺が家賃を払えそうなアパートがない。 なんて高いんだ東京。ふざけてんのか。 俺の地元ならこの値段で4LDKに住めるぞ。 春っちに一週間泊めてもらって、降谷に一週間。金丸に一週間に東条に一週間…。お、一ヶ月いけるな。 じゃあ一週間を全部十日にしたらどれだけもつか、と考え込んでいたら肩から手が伸びて情報誌が取り上げられた。 「あ?…あ、御幸先輩。」 「何、沢村引っ越すの?」 「はぁ…、まぁやんごとなき理由がありまして…。」 「はぁ?高貴な理由?よんどころなき、な。」 「?」 「あー…、ま、いいわ。何、理由って?」 御幸先輩は大学の先輩だった。 学年も違えば学部も違うが、一番最初の必須の情報処理の授業で先生のアシスタントとして一緒にいて、教えて貰ったことがある。 接点と言えばそれぐらいなんだが、それ以来ちょこちょこと構ってくれるようになった。 学食とか生協とかで出くわしたら毎回何かしら話し掛けてくれる。 …俺から話し掛けたことは、ない。 と言うのも御幸先輩、どうもやたらと有名人らしくて、話し終えて別れると怒涛のように同じ学科の女の子とかバイトが同じ女の子とか知らない女の子とか…、が、押し寄せて来るのだ。 やれ御幸先輩の知り合い!?とか御幸先輩と仲いいの!?とか。 まぁそんなわけで俺からは少々話し掛けづらい有名人。 しかし御幸先輩はそんなこと気にした風もなく俺の姿を見かけりゃ声をかけてくれる。 あんまり人とツルまない人間なんだと学科の子に聞いたが、どっこい存外気さくな人だ。 みんな遠回しに見てねぇで話し掛けてみりゃいいのに。 「―――で、新しい家探してんだ?」 「そーなんスよね…。でも、これがなかなか…。」 「お、これなんかいいじゃん。大学近いし、セパレート2階。」 「え?…えー……、俺こんな家賃払えませんよ…。」 「へー……、ちなみに予算は?」 「四万円ちょっと…っスかね。共益費込みで。」 「…難しいな。」 「っすよねー。」 溜息を深々と吐いて机に突っ伏した。 あぁ、バイト増やすか。 そんで春っち降谷金丸東条に一ヶ月ずつ泊めて貰ってお金を貯めてだな…。 「沢村。」 「はい?」 「これいーじゃん。2LDK。家賃九万。」 「……なんスか。俺の話聞いてなかったんスか?」 「や、だから四万ちょっとだろ?半分こして。」 「半分?」 「そう、俺とお前とで。」 「へ?」 「やー、俺も今住んでるトコ飽きたなーって思ってたんだわ。」 「は、ぇ!?」 ―――そんな訳で始まった俺と御幸の共同生活。 御幸が広い方の部屋使うって事で家賃を多めに支払ってくれて、それじゃ俺の気が済まないって事で俺のが家事当番多めに担当して。 一緒に暮らしてるうちに緊張感なんて簡単になくなって気付けば敬語が抜けていた。 正直俺は一人よりも人といた方が楽しいので、この共同生活は気に入ってる。…けど、ぶっちゃけ御幸ってどーなのかな。 あんまツルまないって聞くし俺と一緒に住むのウザくねーのかな。 「ほれ、牛乳コーヒー。」 「カフェオレと言え!もしくはコーヒー牛乳!」 「だってそれ殆ど牛乳じゃん。」 そう言いながら御幸が自分のコーヒーに口をつける前にドボンと牛乳を注ぐ。 「だから、起きぬけにブラック飲むなっつってんだ!なんか口に入れる!」 「お前意外に健康志向な。」 「やかましい。ほら!」 「ん。」 「ぁだっ、」 御幸の口元に昨日の夜からテーブルにだしっぱなしのクラッカーを持ってくと口を開けた御幸が俺の指ごと噛んだ。 謝りもしないで「ごっそさん」と言う御幸を睨みつけると、笑いながら唇を舐める。 くそ、この無駄なイケメンめ。 正直、随分モテる奴みたいだから女の子をしょっちゅう連れ込まれるんじゃねぇかって思ってたけど、そんな素振りがない。いやいや、そっちのがいいけど。 「そーいや、珍しく朝はぇえよな、御幸。何?」 「バイト。」 「あれ。夜だったじゃん。シフト変えたんか?」 「そー。」 「夜のが割いいっつってたじゃん。」 「まーなー。でも沢村昼バイトじゃん。」 「うん?」 「どーせ一緒に暮らしてんだし飯とか一緒に食いてぇじゃん。」 「………。」 もしかして実は俺が意外にも寂しがり屋だと言うことがバレてるんだろうか。恥ずかしい。 しかし何だ、なんか嬉しいな、そうやって俺のこと考えてくれるの。 「御幸!」 「あ?」 「あのさ、俺に気を遣わねぇで彼女とか、連れてきていいからな?ほら、メールしてくれやその日は俺も……、」 言葉を途中で止めて口を噤んだ。 何だ、御幸がエラい恐ろしい目をしている。 俺のこと考慮してくれるのが嬉しくて俺も御幸の事を考えての発言だったんだけどそんなに何が不満なんだ。 …あ、もしか、して。 「ごめん、な?」 「…え?」 「あー!や、うん!みなまで言うな!」 「は、何急に。」 「ごめんな!無神経な事言って!」 「いや、お前は無神経だけど、何なの。」 いやいや、うんうん。 怪訝そうな御幸を無視して一人頷いていると御幸も俺を無視して飯を食いはじめた。 いやー、分かっちまったぜ。 まさか御幸が女の子にフラれてるとはなー。俺らそういう話しねぇもんなー。 チラッと御幸を盗み見ると、丁度御幸も俺を見ていたようで目が合った。 何と言うか、出来のいい顔だよな、コイツ。 いやー…、まさか御幸をフる女がいるとはなー…。 アッパレだ。一緒に飲んでみてぇ。 御幸が作った目玉焼き(焦げ気味)をパンの上にのせてかぶりつくと御幸が「いいな、それ」と言って俺の真似をする。 御幸なんてホント、いつ彼女が出来てもおかしくねぇけど、彼女が出来たら実際どうなるのかな。 御幸、彼女ん家入り浸りでこっち帰って来なくなったりして。 そんで、俺は朝飯も、晩飯も一人で、御幸を朝起こすのは未来の彼女(巻き髪美人)。 「…………。」 なんだかそれは嫌だった。 さっきまで美味かったパンの歯ごたえが急に気になってあまり噛まずに飲み込む。 …何だろう。一人暮らししてたし、御幸と暮らしはじめてまだ数える程度だし。 なのに振り返れば、御幸が家にいねぇといつも恥ずかしいぐらい寂しい。 「なぁ!」 「なに。」 「御幸の好みってどんなん?」 「は?相変わらず脈絡ねーな、会話に。」 「な、どんなん?」 「…んー。」 手に持ってたカップをテーブルに置いて御幸が俺の目をジッと見る。 おぉ、なんだか緊張するな。何気にこーゆう話初めてだもんな。 「…無神経で、脈絡ねぇヤツ。」 「はあ?」 「んで、バカ。」 「趣味わりっ!」 「…………俺もそう思う。」 ふー…ん?と。なんか納得いかなくて首を捻ると御幸が小さく溜息を吐き出した。 「その上鈍いんだ。」 そう言うと俺のまだ口のつけてないカフェオレにハチミツを入れてくれた。 In my room *** 「確かに。」の蕗様より、サイト開設半年記念に頂いてしまいまひ、…ました!(噛んだ) うああああああああああ!!!うおおおおおおお。°(°´Д`°)°。!!! ひあああああ(号泣) もう!夢、夢ではないですか…ガタガタガタガタ人違いではないですかガタガタガタタ… 女神蕗様に、わ、私なんかの半年記念にリクエストを聴いて下さるという優しいお言葉を頂いて…恐れ多くもお言葉に甘えておねだりしてしまいました(´∀`*) 沢村かわああああ沢村…!! サブタイトルが「鈍いよ沢村くん!」だそうですが、もう!もう!本当沢村君ったら…! 本当御幸先輩ってば!もう御沢ったら//!! 興奮と息切れ動機が止まりません。ドキドキバクバク。 うあああん御幸先輩のスマートな御誘いの仕方が男前過ぎてもう御幸このやろう(愛)ってなりました。御幸先輩…! 蕗さんの書かれる御沢の可愛いこと!等身大の御沢!もう素敵過ぎて…! 言葉で表現出来ないのがもどかしいです。もっと文才が欲しい。ううう…! 拙い文章ばかりのサイトですが、半年迎えられて本当に良かったです。そしてずっと憧れだった方からこんなに素敵な頂き物を頂ける幸せ…。 もう本当に本当に蕗さん大好きです…!大好きです(二回) 皆様も是非!きらきら輝く御沢を存分に堪能してくださいませー! 本当に好きです。大好きです。(吐血 蕗様、これからもどうぞ不束者ですが(?)宜しくお願いします…! だい、だい、だいすきです(⊃∀`* )! [←] |