* キャプテン御幸×マネージャー沢村♀ 「だから、どうしてこういう状況になるんすか…。」 「んー。俺が考えに考え抜いて、計算に計算しつくして、なんか面倒になった結果?」 「つまり何も考えずに、ってことっすね。」 そうとも言う、とニヤニヤしながら俺の肩に顔を埋める御幸センパイに、ため息一つ。 ぎゅうっと腰に回された腕には、しっかりと力がこもっていて、俺の力では到底抜け出せそうにない。 さっき少しだけ試してみたけど、駄目だったからすぐに諦めた。 ふう。 また一つ、ため息。 壁に掛けられている時計は、既に昼一番の授業の開始から、5分も経過した時間を指していた。 これは完全にアウトだ。 俺も、もちろん、俺に抱きついてるこいつも。 「…キャプテンが授業サボってんじゃねーよ。」 「たまには癒しの時間が欲しくなったりするんだよ。」 「じゃあ早く帰って寝ろ。」 「やだ。」 「言ってることとやってることが違う!!」 「だって寮には、沢村がいねーし。」 「は、」 「沢村がいねぇと、何したって癒されねー。」 不満をありありと言葉に含んでそういう御幸の表情は、普段見せる飄々としたムカツク顔。 後ろから抱きしめられてるからよく見えねぇけど、何となく分かる。 「…倉持先輩にあとで言いつけてやる。」 「はっは、それは勘弁。」 「…じゃあ今日練習終わったらキャッチボールな。」 「えー…。」 「じゃなきゃ言いつけるから!」 「…まぁ、いいけど。あ、でもお前スカートじゃなくてせめてジャージ履いて来いよ?」 「…?なんで?」 「ムラムラして、俺が集中出来なくて怪我しそうだから。」 「…!!ばっかじゃねぇの…!?っつーか馬鹿だな、ばかだろ!」 「沢村限定で、ですけど。」 腰に回された腕に力がこもる。ふわりと御幸が笑う気配がする。 …なんだかなぁ。 胸元のリボンを弄る手を軽く指で弾いてやったら、ちぇって声が耳を擽った。 静かな教室に、どちらのものか分からないような息遣いと、遠くから聞こえてくるぼんやりとした教師の声だけが小さく響く。 「…週末。」 ぽそ。 俺が漏らした声に、御幸が、ん?と首を傾げた。 「…備品の買い出しあるから、荷物持ち手伝って。」 「お。デートのお誘い?」 「…やっぱただの馬鹿…。」 さっきと同じ言葉を呟いたら、だから沢村限定で、ともう一度聞こえた言葉に今度は俺もつられて、ふはっと笑みを零した。 そのすぐ後に喜んでお供します、と囁かれた言葉。 とりあえず週末は久々の、…デート、だ。 [TOP] |