* 御沢共に大学生くらい 部屋の中に、コタツを導入した。 え?まぁ、ほら。寒いし。電気代の節約にもなるし? 今までどうしようかと迷いつつも、何となく後回しにしてて、気付けば結局先に冬が終わってしまうって感じでグダグダになってたんだけど、「もう是非!是非入れるべきだと思う!お勧め!!」なんて目をキラキラさせながら言ってきた雪国生まれのバカに触発されて、ついに勢いで購入してしまった。 一人暮らし用の、正方形の小さいヤツ。 最近は何でも安価で買える時代なんだなぁ、とかぼんやり思いながら。 まぁ、それ自体は別にいいんだが。 が。 「…どうしてお前がコタツ占領してんの、沢村…?」 「んー。やっぱコタツだよな!冬といえば!!」 「へぇ、俺を無視するわけ。」 「ふっふっふー。」 「今すげぇイラッとしたんだけど、コタツと一緒に全身の服はぎ取ってやってもいい?」 「すいやせん御幸先輩。冗談です。」 そう言いつつも、更に炬燵布団を肩まで被って、完全にコタツヤドカリになった沢村が、俺をちらりと下から見上げて来た。 その唇は、不満そうにぐにっと尖っている。 「…いーじゃん。減るもんじゃねーし。」 「俺の入る部分は確実に減ってるんですが。」 「んー?」 「わぁ。すっげーイラ。やっぱ剥いでやろうか。」 「ぎゃー!やめやめ!俺のユートピア!!」 足でコタツを軽く蹴ってやったら、沢村がバカみてぇに(バカだけど)慌てて体をそれに合わせてゴロンと動かす。 それがなんか面白くなって構ってみると、コタツが動く度にあわあわいいながら動く様子は、なんていうか。 …なんか変な趣味に目覚めそう。 「今はいいけど、後で俺も入れろよ。」 「えー…。」 「やっぱ服ごと剥いで…、」 「喜んで空けさせて頂きます!!」 キリッと敬礼する沢村にため息をひとつ零しつつ、夕食を作るために背を向ける。 あ、と思って振り返ると、まだゴロゴロしてる沢村を見て(つーか犬なら犬らしく外で遊んで見せろよ)言う。 「…なんならそのまま、そこに住む?」 軽く問いかけた言葉に、ぱちくりと目を開閉させた沢村は、すぐにがばっと布団の中に隠れてしまった。 なんだ、残念。 プロポーズはどうやら失敗らしい。 仕方なく一つ息を吐いて肩を竦めてから部屋を出ようとすると、もぞっと背後で何かが動く音がして、圧迫されたようなくぐもった声で、「…うん、」と聴こえたのは、多分。 「え、」 今なんて?と、反射的に駆け寄って問い直した俺に、沢村がコタツをひっくり返すまで、あと少し。 部屋にコタツを導入した。 寒さ対策、節約。 あとはまぁつまり、…必要投資、ってやつだ。 [TOP] |