40days 御沢祭 | ナノ
24days 御沢祭
LOVE! LOVE!!LOVE!!!
11.02.20〜11.03.30までは御沢の日!40本御沢!
御沢も皆も大好きです!




だましだまされ



* 双子御沢 小学生



かずや、かずや、って。
まるで内緒話でもするかのように、栄純が声をかけてきたのは、夕食が終って部屋に戻って、二人で今日は何のゲームするか、と話してる最中だった。

格ゲー?と、持っているソフトをひっかきまわしていると、なんだかもじもじとしている栄純に気付く。
ん?と思って子をかけようとおもったら、突然名前を呼ばれた。

内緒話がしたいみてぇだけど、生憎、栄純の声はすげーでかい。


「なんだよ?」
「あの、あのさ!!」
「…だから、なに。」


そわそわ。
もじもじ。

いつも以上に落ち着きのない栄純が、狭い部屋の中で視線を揺らす。
そして突然、バタバタ走り出したと思ったら、自分の鞄を引っ掴んで戻ってきて(この辺は妙にイヌみてーだなぁとなんか思った。)その中をまたごそごそと忙しなく漁る。
…なにしてんだ、こいつ。


「じゃーーん!」
「…なにこれ?」


鞄の中から取り出したそれは、ピンク色の包装紙に包まれた、小さな手のひらサイズの箱だった。


「これ?これはな!聞いて驚くなよ!?…いや、やっぱ驚けよ!?」
「どっちだよ。」
「ふっふっふ!これはな!“ホワイトデーのお返し”なんだぜ!!」
「はあ?」
「俺は、モテる男だから、バレンタインに貰った分“お返し”しなきゃなんねーの!」


さっきまでしおらしかった姿はどこへやら。
急に得意げになった栄純が、見せびらかすようにその箱を振る。(いいのか振って。)
ガサガサ。ガサガサ。
中身が揺れて、妙に耳障りな音が鳴った。


「栄純、バレンタイン貰ってたんだ。」
「そーなんだよ!一也と一緒、じゃなくて、俺にだけ、って!で、母さんに言って、この前デパートで買ってもらった!」
「…それ、渡すの?」
「あたりまえだろ?お返しだし。」
「栄純さ、バレンタインのお返しの意味、わかってる?」
「…?お返しは、お返しだろ?」
「…。」
(おもしろくねー…。)


きょとんと首を傾げる栄は可愛かったけど、なんかムカついた。
なんでかわかんねーけど、むかつく。
なんかすっげーいらいらする。

多分、栄純がアホだからだ。


「…バレンタインのお返しは、さ。」
「お?」
「自分で買ったモン以外は、シツレーにあたるんだぜ。この前、テレビでゆってた。」
「…おれ、自分で買ったけど…。」
「でも、お金出したのは母さんだろ。」
「だ、だって…。」
「自分で稼いで、お返ししねーと、意味ねーんだよ。知らねーの?」
「し…しらねーわけ、ねーだろ!!」
「でもそれ、あげるんだろ?」


ふん、と鼻を鳴らして指させば、ぐぬぬ…と言葉に詰まった栄純が、唇をぶすっと尖らせて俯いた。


「…ちげーし。」
「ん?」
「これは!!俺が自分で食うために買ったんだから、な!誰かにやるためじゃなくて、自分で!!」


後ろ手に箱を隠した栄純が、大声で叫ぶ。
金魚みたいに、顔を、頬っぺたを真っ赤にして。


「ふうん。」


そっか、と言ったら、そうだよ、誤解すんなよな!と間髪いれずに返ってきた。



……たんじゅん、ばか。









次の日、お返しをしなかったってその女の子に怒られて、母さんにも怒られて、めそめそしてた栄純に、そっと俺の分のおやつを仕方ねぇから半分わけてやったら、単純な栄純は、すぐに嬉しそうに笑って菓子食ってた。


…俺からのホワイトデーのプレゼント。
なんて、な。











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