40days 御沢祭 | ナノ
24days 御沢祭
LOVE! LOVE!!LOVE!!!
11.02.20〜11.03.30までは御沢の日!40本御沢!
御沢も皆も大好きです!




迷子の恋



腐っても、俺だって男だから。
御幸の方が背も高いし、力も強い。
それは確かにそうだけど、俺だって別に女じゃねぇんだから、本当はいくらだってその気になればあしらえる。
足だって遅くない。一度その手から離れてしまえば、御幸を振り切る自信だってある。なのに、御幸は俺を本気で捕えようとしない。だから、それを考えると、浮かぶ疑問は純粋に、“どうして”?


「逃がすわけ、ねェだろ?」


ビクンと震えてしまうほど、甘い声で呟かれた誘いの言葉。けれどその瞳に宿っているのは、どう見ても、言葉とは裏腹なとてつもなく攻撃的な色。
柔らかく回される腕も、唇を舐め上げる舌も、熱の伝わって来る体も。
全身で俺を捕える。
逃げないの、なんて聞きながら、分かってるくせに。
俺が逃げないことを、分かってるくせに。
いつだって少しだけ逃げ道を残してくれている。だけど俺はそれに気付かないフリをする。


だから、甘える。


まるで、アンタが無理やり俺を逃がさないようにしてるんだ、って。
アンタに叶うはずがないから、流されてるだけなんだ、って。
絶対にこれは、俺の意思や願望なんかこれっぽっちも介入してないんだ、って。

甘える。
逃げる。
目を背ける。

酷く、残酷な、こんな恐ろしい現実から。



手を取られて、寄せられた先にあったのは、温かい温度。
いつだって俺の言葉を無視して、その腕で俺の理性なんて掻き散らして、俺を、俺じゃない何かに簡単に変えてしまうくせに。

その手で、涙をぬぐって、背中を抱いて、俺を抱きしめる御幸の瞳は、酷く、優しい。


「お前が俺に、勝てるわけねェもんな。」


視界は歪むのに、涙は浮かばない。
けれど一つだけ、俺と御幸の間に落ちる、雨。
それが何なのか、逸らされた視線を追っても分からなかった。


(なぁ…どうして俺を、完全に繋いでおいてくれねーの。ずるいよ、アンタ…。)


知ってるよ。
アンタが本当は、俺を拘束してるわけじゃないってことくらい。

嘘つき。
本当はいつだって逃げ道を作ってくれているくせに、そんな、言葉。


体格は確かに違うけど、俺だって男は男。
こんな風に本気の力一つも入って無い腕に抑えつけられたって、本当は、なんてことねぇんだよ。



気付いてるんだろ。御幸。
俺が逃げねぇこと、逃げらんねぇこと、気付いてるんだろ。


だから。


(悪いのは、アンタの方だ。)


一度だけ名前を呼ばれて、誤魔化すように首を一度だけ左右に振った。




なぁ、ばかじゃねぇの。ばかだよ、御幸。
変なところで、俺に甘い。




そんなアンタが、やっぱり悪いよ。










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