40days 御沢祭 | ナノ
24days 御沢祭
LOVE! LOVE!!LOVE!!!
11.02.20〜11.03.30までは御沢の日!40本御沢!
御沢も皆も大好きです!




チョコレート戦争



* 双子御沢



バレンタインというものは、恐怖の行事だ、と思う。
そう、文字通り、言葉通り。恐怖の。

小さい頃は良かった。
何をするにも、“二人一緒”“二人で半分”。
与えられるもの全てが、“二人のもの”だった頃は、バレンタインだって、クリスマス、誕生日、正月と並ぶ一大行事だったはず。

それが、いつからか、二人で半分どころか、“一也の分”が俺の分の二倍も三倍にもなりだしたのは、一体いくつの時だっただろうか。

2月14日。
抱えきれないほどのチョコレートと共に帰宅した一也に、「これ、一也君に渡して欲しいの。」と差し出されたチョコレートを配達させられた恨みは忘れない。
「ごめん、苗字一緒だから間違えちゃった。栄純君じゃないほうなの。」とどっかの芸人も涙しそうなことを言われながら謝られた恨みも、忘れはしない。


バレンタインは、俺の敵だ。


「ふっふっふ……!」
「何…栄純、気持ち悪い。」
「ついに今年も、メーデーがやって来たか…。」
「それ、意味分かってつかってるか?」
「だが!!今年の俺は一味違う。残念だったな!一也!!」
「なぁ、うるさい。テレビ聴こえねぇ。」


バンッとテレビとは逆側の壁にかけられているカレンダーを平手で強く叩く。
それに流石に振りむいた一也が、それを見て首を傾げた。


「…カレンダー?」
「そう!2月!そして14日!!」
「…が、どうかした。」
「2月14日!土曜日!!そう!土曜日!!」
「だから、単語じゃなくて、言葉でしゃべってもらえます?」
「今年のバレンタインデーは、土曜日だ、一也!残念だが、お前は今年、チョコレートを貰うことは出来ない!!どうだ!まいったか!わははは!」


得意げになって、思わず腰に手を当てて踏ん反りかえる。
ははは!一也みてぇに高笑いまで飛び出ししまったぜ。

そんな俺を、なぜか妙に憐れむような目で見て来る一也。
…む?


「別に…どーでもいーし。バレンタインとか。キョーミねーもん。」
「んなぁ!?」
「大体、寧ろ休みの方が助かる。疲れるし。」
「………今お前は、全国の男子生徒と俺を、一瞬で敵に回した…。」


しれっと言ってのける一也の、なんて憎たらしいこと。

まるで、明日の天気の話でもしているかのように、華麗に聞き流されれば、俺の中で何かがキレた。
わなわなと、体が震える。


「お前…いつかぜってーに痛い目みるぞ…!!」
「んー。」
「や、闇討ちとかされても、助けてやんねーんだからな!!」
「あ、そう。」
「ほ、ほんとだからな!?」
「いーよ、別に…。…別に怖くねーし。」
「な、なななななな!」


バレンタインの男は、今日の草食系ブームもびっくりなくらいの怖さを持っていることを、一也は知らねぇのか。
敵と見なされれば最後、妙な団結力を見せるあの怖さを、知らねぇのか。


「…屈強な男の集団が怖くない、だ、って…!?」
「まぁ…。…っつーかさ。」
「む!?」
「俺にとって怖いのは寧ろ、“大勢”より“一人”のほうだから。」
「…何かの哲学ですか。」
「平和な頭してんな…。」


はぁ、と一也が一つため息をつく。
俺の頭には、疑問符が浮かぶ。

じと、っと見て来る瞳に気付いて、小さく首を傾げた。


「…お前と俺じゃ、重さがちげーんだよ。」
「…?体重測定…」
「の話じゃねーから。」
「…一也はたまに、すげぇ難しいこと言うよな。」
「…栄純はいつも、すげぇバカのことばっか言うよな。」
「なんだと!!」
「…ちげぇんだよ。重さが。」
「んう?」
「チョコレート1つの。」


…………チョコレート?


渋い顔で、苦笑を張り付ける一也の顔から、はあっとまた一つため息が漏れた。


「やっぱお前って、ほんとバカだな。」


なにおう。
…というか、人にバカバカ言うなよ。仮にも双子だぞ。片割れだぞ。悔しくないのか。
DNAが半分同じなんだぞ…!…ん?DNAは違うか。…よくわかんね。


「バカじゃねーよ!!」
「いーよ、栄純はそのまま。バカのままで。」
「だから!バカって言うな!!」


ぽんぽんと、子供をあやすように頭を叩かれた。
…こんなときに変に兄貴面しやがって…。くそう、むかつく。一也め。


「…本当のバレンタインの怖さは、そんな簡単なもんじゃねーんだよ。」


お分かり?と、再び子供扱いされるような動作に大声を上げて、その次の瞬間、兄弟喧嘩のゴングが鳴った。








「つーかさ。」
「…あ?」
「その日、補講日だから、学校あるけど。」
「は?」
「土曜日。」
「…!?」
「ざーんねんでした。」
「うあああああ俺のユートピアあああああ!」










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