40days 御沢祭 | ナノ
24days 御沢祭
LOVE! LOVE!!LOVE!!!
11.02.20〜11.03.30までは御沢の日!40本御沢!
御沢も皆も大好きです!




愛マイミーマイン



* 同級生パロ
【リクエスト】



栄純と、喧嘩した。
…や、喧嘩自体はよくあることで、寧ろぶつかることの方が多いから、言い争わない事の方が珍しい…なんて、それは言い過ぎかもしれねぇけど、そんな感じだから、当事者たちだけじゃなく、周りもあんまり気にしない。

学生時代なんて、結構初期の段階から、またか…って放っておかれるばかりだったくらいだし。
喧嘩することが多い分、仲直りも結構早くて、気付けば普段通りになってたりするくらいで。感覚にすればそれは、家族に対するそれによく似てた。

だから、今回もいつも通りだと思ってた。…思ってたんだよ。
言い争いの原因だって、よく考えてみれば、あんまり思いだせない。それくらい、些細なこと。


だけど今回は、いつもと違うことが、一つ。


「三行半、って…。」


今時こんな古風な手紙を置いていくヤツなんて、早々居ない。
【家に帰ります。バーカ!】って…そこは、“探さないで下さい”だろと一応つっこんでから、走り書きみたいな文字の並ぶ紙をつまみ上げて、ため息をひとつ。

そういえば、昔もこんなことがあった気がする。
栄純の言葉に、俺がキレた時。確かあれば、高校生の時。
謝ってくれたのは、栄純の方からだった。

俺も栄純も、案外負けず劣らずの負けず嫌いな方だから、基本的に大喧嘩の時はどっちも譲らない。(まぁ大抵のことだったら俺が折れるんだけど。)なぜなら、どっちも自分が悪くないって思うから。だから、張り合う。
だからこうして、言い争いを裂けて逃げるってことは、自分が悪いって思ってるんだ、栄純は。
探さないで下さいって書かなかったってことはつまり、そういうことで。

つまり、探して下さい、ってことだろ。

短い文面を見ながら、小さくため息をついた。


あの時…昔喧嘩した時、もう喧嘩はこりごりだと思ったはずなのに、あれから時間がどれだけ流れても、結局は相変わらず同じような事を繰り返してる俺達。
大人にならないと反省すべきなのか、それとも俺と栄純の関係が変わらないことを喜ぶべきなのか、それはとても微妙なところだけど。


「さて、どーっすっかねぇ…。」


実家はそこまで遠くない。でも探しに行ったら栄純はそこに大人しく居るんだろうか。
電話をかけようか、と思って、やっぱりやめた。
自分の足で迎えに行ってやろうと、そう思ったから。


さっきまで喧嘩してた相手に思うには少し見当違いな感情だってことは分かってる。
倉持辺りには昔から、甘やかしすぎだと怒られる。だけど、仕方ねぇだろ。実際何よりも大事なんだから。
結局俺には、栄純が必要で、それだけは譲れなくて、どうにも参ったもんだけど。


「俺も大概、バカだよなぁ。」


栄純に偉そうに言えない。くすりと笑うと、握った紙をくしゃりと丸めた。
携帯と、財布と。必要最低限のものだけを引っ掴んで、コートを羽織りながら靴をひっかける。玄関のドアを開けたら、風が思いのほか冷たくて身に染みた。

カンカンカン、と足音を立てて廊下を歩いて、エレベーターのボタンを押す。
はぁ、と小さく息を吐けば、白くはならないものの、風が寒さを全身に伝える。
そういえば栄純のコートはあったっけ。持って出てたらいいけど。…なんてことを考えてる辺り、もう自分は喧嘩の名残すら残ってないんだろう。本当に、俺は栄純に甘い。

そんなことを考えていれば、すぐに小さな機械音と共に上がって来たエレベーターへ、一歩踏み出す。
しかし直前、そこに人が乗っていることに気付いた。


「…栄純。」


その姿を目にとめた瞬間、口をついて出た声に、目を見開いたのは俺だけではなく、エレベータの中で視線を落として立っていた栄純もだった。
なんで。そう如実に語る黒い瞳が揺れた。


「探しに行こうと思ってた。」


予想外にすんなり言葉が口を突く。


「三行半、は…。」
「俺が嫌だったから。栄純がいねぇと、駄目なの。」
「…でも一也、怒って…。」
「もう怒ってねぇよ。…ごめん、大人気なかった。」


謝罪の言葉に、出来る限りの真摯な気持ちを込めて言えば、ビクビクしていた栄純の肩から、明らかにほっとしたように力が抜けた。それに、薄ら微笑む。
ぽおん、と機械音が鳴る箱からその手を引っ張って、引き寄せる。少しだけ俺よりサイズの小さな体が、腕の中に納まった。
その体が発する、とても小さな、だけどしっかりとした、「ゴメン。」


「…なんで帰って来てくれたの。」
探しに行こうと思ってたのに。


「…家に帰る、って書いた、だろ。…。」


腕の中の栄純の体が、言葉に合わせてゆっくりゆっくり何度か震える。それに、うん、と相槌を重ねると、目の前で揺れる黒髪。


「書いてから、思った。…俺の家は、ここしかねぇし…。」


だから、帰って来た、と。

告げられる言葉に眩暈がした。


(参った、降参。)


ぎゅうっと閉じ込めた体をいとおしむように抱きしめて、すうっと深く息を吸う。
やっぱり、俺に必要なのは栄純。


(…んで、栄純に必要なのも、俺ってことで、いいんだよな?)



喧嘩はこりごりだ、と思う。
けれど、帰ろうか、って声をかけると、声も出さずに頷く栄純を見てると、何があっても俺たちはこのままで居られるんじゃないかと漠然とした未来を視たりもするんだぜ、…なぁそんな俺を笑う?


やっぱりこういうのって喜ぶべきじゃねぇの。
大人になれてない?…それならそれで、良いような気もする。

歩く二人の歩幅が同じなら。

















----------------
あーち様からのリクエストで、同級生パロ大学生「ヘタレな一也くんにちょっとだけ勇気を!」…ということで、大学生になってちょっと二人の関係に余裕が出てきたころの御沢…のはずだったんですが。
栄純殆ど出てきてn(ry
相変わらず、毎日細かいことで喧嘩になっては、二人でああだこうだやってればいいよこいつら!と、もう恋愛とか友情とかの前に家族っぽくなりつつある二人でした。
喧嘩の理由はそうですね、「卵焼きにはケチャップか塩コショウか」くらいの些細なことで、もう多分今まで何十回とやってきたはずのことでいつでも全力で喧嘩出来る二人なんじゃないかなぁとか。
でもやっぱり昔と違うのは、喧嘩した時の仲直りが、握手じゃなくてちゅーやハグになったこと、とか。
…もうちょっとこの二人にはイチャイチャさせてあげたい、な!と思いつつ。

あーち様、リクエスト本当にありがとうございました!
ヘタレな一也君にまた今一度勇気をあげる機会を設けられるように頑張りたいと思います…!







[TOP]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -