40days 御沢祭 | ナノ
24days 御沢祭
LOVE! LOVE!!LOVE!!!
11.02.20〜11.03.30までは御沢の日!40本御沢!
御沢も皆も大好きです!




俺様ヒーロー



言ったら、嫌な顔されるだろーなぁ、とは思ってたけど。

いや、嫌な顔とまでは行かなくても、良い顔はされねぇだろうなぁとは容易に想像がついた。
だから、何となく話題に上げるのは避けていて。
でも多分、誰かの口から耳に入るだろ、とか、結構気楽に考えてて。
だからまさか、ほんとにまさかだったんだよ。俺も不可抗力だったんだ。予想外だった。そう、予想外。

当日まで、御幸の耳に入ることなく、試合を見られた後に呼び出されて問い詰められるだなんて、まさかそんなこと。
予想だにしてなかったわけだ。マジで。


「どーいうこと?」
「ど、どういうことと言われましても…、…!」
「なぁんでお前が、…投手のお前がバスケの試合なんかに出てんのかな?」


言いなおされた。


「い、いって…!ちょ、痛いって…!」


ぐいっと右手を引っ張りあげられて、真顔のまま笑うっていうとてつもなく器用なことをやってのけている御幸に見下ろされて、笑い返そうと思ったら、はは…っと乾いたどこか虚しい笑みだけが口の端から漏れた。
ん?と言葉の先を促すように御幸が首を傾げるから、もう一度痛いと言えば、ゆっくりと手を離してくれた。

変わりに、トンッと顔の横に疲れた両手によって、壁との間に閉じ込められちまったけども。


「サッカーでもバトミントンでもテニスでも卓球でも、なんでもあったろ。なんでよりによって、バスケ?」
「く、くじ引きで…。」
「お前ね、…ちょっと自覚が足りねぇんじゃねーの?つき指でもしたらどうすんの?なぁ、馬鹿なの?」
「ば、ばかって言うんじゃねぇ…!」
「いや、だって馬鹿だろ。」
「うう…!」
「しかも俺に言わなかったっつーことは“イケナイコト”だってきちんと分かってて隠してたってことだよなァ?」
「う…っ、」


その通り過ぎて、どうすれば。


まさか、くじ引きの時に寝てたから競技決め終わってることにすら気付かなくてもうメンバー申請出した後に気付いた、なんてこと言ったら、絶対ぐちぐち言われる、と思って黙ってたのに。
なんかいつの間にか、最も最悪なパターンに陥ってる気がするんですが。…気がするっつーか、陥ってます。
なんでいっつもこうなるんだろう。


「授業でも、試合とかしてたけどなんともなかったし…。」
「授業と球技大会は別だろ。…いや授業も問題だけど。こういう日は必ずバカなやつが出てくるんだから。」


まぁ確かに授業だとバスケ部も一緒にやるし(当日はバスケ部員は基本的に審判だ。)理性的といえば理性的なのかもしんねーけど。


「…まぁ…。」
「ったく…お前、極力試合出んなよ。出てもボールに触んな。飛んで来たボールは避けろ。」
「ドッヂボールか!」
「レフトフライだって取れねぇんだから、それくらい簡単だろ?」
「あ、あれはわざとじゃねぇし…って、ボール避けたりしたらクラスメイトに殺され…」
「ん?なに?今この場で、俺にヤリ殺されたいって?」
「全力で避けます。」


殺すの意味が全く別物です。御幸先輩。

しかも、目がマジ中のマジ。これが漫画だったら、壁にミシッて手がめり込んでるんじゃねぇかなって思うくらいにマジ。すげぇ、普通に背中に恐怖をこれでもかってくらい感じた。


「…大人しくして、る。」


人間ってのは絶対的な力の差の下では、とてつもなく無力な人間なのです。


「分かればいーよ。」
「…アンタは?」
「ん?」
「アンタは、何に出んの?」


満足したのか、壁から手を離した御幸を見上げながらそう聞くと、一回瞬きをした御幸が、にやりと口角を上げた。


「俺?」


俺は――…。






















―――


わあああ、と上がる歓声と、足が地面を蹴りあげる音。
そんな足音と共に響くボールの音と、ホイッスル。

晴天に恵まれたグラウンドは、いつも野球部が使うのとは違う緑色が広がっていて、そんな広いコートを二色の異なる色が縦横無尽に舞う様子を、俺はぼんやりと少し離れたところから見ていた。

サッカーだから、負けたら見に来いよ、と御幸に言われたのが少し前。
なんか悔しかったから、絶対優勝してやる!って言ったんだけど、座って他学年のサッカーの試合を見てる俺は、服装すら既に制服。…まぁ、言わずもがな、二回戦敗退ってわけですよ。ええ。
しかも、ほとんどが俺のせいだったりしたから、なんか居た堪れない…納得いかない…けど、今回ばかりは御幸の言ってる事の方が正しいことは分かるから、文句を言う気にはなれなかった。
クラスメイトには申し訳なかったけど、早く帰れるって喜んでたヤツがほとんどだったし、許して貰おう。

仕方なく、暇が出来たから、御幸の負け面でも拝んでやろうと思って、コートに来たのがついさっき。
聞けば、既に1回戦は終わっていて、もう2回戦なんだとか。
しかも妙に、女子生徒の数も多い。居場所に困って、コートからはあんまり見えないところを陣取って居座ってから、俺はただ、ぽかんとするだけだった。

俺の記憶違いで無ければ、確か御幸先輩様は、野球部の生徒だったはず。
しかもさっき、普通に俺に怒りの一声を浴びせた、生粋の捕手だったはず。

(…だがしかし…、アレは誰だ…。)

22人が行ったり来たりするコートを、白黒のボールと共に追いかけつつ、小さな影の中から一人の姿を瞳が忠実に映し出す。
いつもグラウンドで見る時は、防具に隠されている全身が、今は違和感を覚えるほどの軽装で、太陽の光が明るい髪色に反射して光った。
どこのどいつだよ、とつっこみたくなるほど楽しそうな顔で慣れたようにボールを扱う様子は、どうみても野球部になんか見えない。
きっとあのチャラチャラした茶髪のせいだ。絶対そう。


(大体、一丁前にMFかよ…!その上、ドリブルもパスもトラップもフェイントも出来るって、どういう了見!?)


ぼけっと見てると、御幸ィって声がして、また御幸にボールが渡る。
殆どルール知らねぇし、細かいところはわかんねぇけど、このチームがむちゃくちゃ強くて…しかもむかつくほどに御幸が上手いってことは分かった。
応援が多いなぁとは思ったけど、これなら確かに納得もいく。

ボールが御幸から前線に飛び出してたFWの奴にわたり、そこからまたシュートが決まる。ナイスアシスト、って声と歓声が同時に起きて、周りの熱が上がっていくのを感じた。

御幸君って、と近くにいた女子の声が耳を掠める。


「野球以外でも運動神経いいんだね。」
「ね!普段、軽い人ってイメージしかなかったのに。」

(イメージっつーか、実際軽いんですけどね。)


ふう、とため息をひとつ。
このままだと、決勝とかまで行きそうだよなぁ…。

コートの上でホイッスルが鳴った後、クラスメイトとじゃれてる御幸を見る。それが妙に楽しそうで、なんだか無性にボールが投げたくなった。まだかかるだろうし、もう一応満たし、練習先に行ってようか。


「沢村。」
「…。」
「さーわむら!」
「うえ!?」
「え、じゃねーよ。何ぼけっとしてんの?」
「え!?え!御幸!?なんで!!」
「なんでって…お前が居たのが見えたから。」


(ちょっと待て、コートから見たら人なんかうじゃうじゃしててわかんねーだろ!)


さっき、遠くで走り回ってた格好のままの御幸がへらりと笑う。
その目が、俺の頭から下まで、一度何かを確かめるみたいに眺めるのを見て、首を傾げた。


「…何?」
「怪我してねぇかと思って。」
「応援で?しねぇだろ。」
「ちっげーよ、バカ。バスケだろ、バスケ。」


…あ。忘れてた。あまりにも御幸のサッカーが衝撃過ぎて。


「別に、なんも。」
「もう終わった?」
「おー。」
「よくねーよ。二回戦負けだぞ。不名誉だ。」
「俺にとってはいーの。これで集中出来るわ。」


さっきまでの軽やかなプレーの間集中出来て無かったとでも仰るのですか。
なんて嫌みな男なんだ。御幸一也。


「お前、この後なんもねぇだろ?」
「まぁ…。」
「じゃあ、ここに居ろよ。」
「は!?なんで!?」
「なんでって…俺の勇士を見せるため?」


さも当たり前のように言ってのける御幸は、本気で驚いたみたいに目を見開いた顔をする。
驚くのは寧ろ俺の方だと思うんですが。


「お前がいねぇと、意味ねぇじゃん。」
「……あ…?」
「沢村が見に来てからの俺。1ゴール、2アシスト。」


立てられた右手の3本の指が、太陽を指す。
にっと笑う顔は、さっきまでコートを走っていたムカツク笑顔と同じなのに、心臓がドキンと小さく跳ねた。
…どきん?


「…サムイから、お前のためにゴール決めてやるぜ、とか言うなよ。」
「あれ?そういう言葉がお好み?」
「これっぽっちもいりません。」
「なーんだ。…ま、動くなよ?そこで大人しくお座りしてろ。」
「俺は犬か!!」
「んー?似たようなもんじゃん?」


じゃーな、って爽やかに言ってのける御幸のなんて憎たらしいこと。

殴りかからなかった俺の、なんて理性的なこと。

いっそ犬らしく噛みついてやろうかとも考えたけど、…なんかそんなでも御幸は喜びそうだとか考えたら寒気がしたからやめとくことにした。


「…ヒマなんですけど。」
「瞬きするのも惜しいくらい熱中させてやるし。」
「毎度思うけど、アンタって恥ずかしいくらい自信家だよな。」
「自身に見合うだけの実力を兼ね備えてるので。」
「…うっわぁ…。」


もういろいろ通り越して、小さなため息だけを漏らす俺を見る御幸が笑うのと同時に、御幸―っと遠くから誰かが呼ぶ声。
それに手を上げて応えた御幸が、ぽんぽんと俺の頭を叩いて、じゃあ良い子にしてろよ、と更にかける追い打ちを、はっとして振り切れば、手をひらひらと返されて笑われた。


「勝利の女神になってくれたら、ごほーびやるから。」
「あんたって本当、どっからそんな恥ずかしい言葉を!ぽんぽんと!!」
「愛だよ、愛。」
「もうさっさと行っちまえ!!そんで帰って来んな!!」
「えー…冷てぇの。」
「……勝つまで帰って来んな。」


ふん、と鼻をならせば、少しだけ目を丸くした御幸がニヤリと笑う。
当たり前だろ、自信家な瞳がどこまでも勝気な言葉を残していく。
やっぱりその背中は、太陽が反射して、いつもとは違う、でもいつもと同じ、御幸だった。


(…ちょっとカッコイーかも、とか。)


まさか、そんな。なぁ?
ジョーダンきついぜ、俺。



どこも怪我なんかしてねぇけど、他のところがいろいろと問題だ、と、誰にも聴こえない心の声で呟いた。









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まいら様からのリクエストで、球技大会、でした!
サッカーなバスケか…という話だったので、とりあえず御幸にはサッカーをさせてみたら、もう!なんかもう!こいつ!!(愛)
まいら様の多忙期終了お祝いも兼ねまして!
少しでも楽しんでいただけたら光栄です。
リクエストありがとうございました!!
大好きです(´∀`*)!









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